【プチ評論】INTERNATIONAL OPERA AWARDS 2022 演奏会

YOUTUBEチャンネルOpera Visionにて、INTERNATIONAL OPERA AWARDS 2022の映像が公開されているのですが、
正直ここに出演している歌手の演奏にはあまり感銘を受けることはありませんでした。

ただ、知名度の高い歌手ばかりが選ばれている訳ではないというのは良い部分かもしれません。

なお受賞者はコチラを参照ください。

やはり女性歌手はSabine Devieilheが選出されていましたね。
やっぱりこの人はトップ歌手の中でも頭一つ抜けてる印象を受けます。

 

 

 

 

 

 

 

13:46 Madama Butterfly. ‘Un bel dì vedremo’. Giacomo Puccini
Barno Ismatullaeva, soprano

この方はウズベキスタン出身で、特に欧米で研鑽を積んだ訳でもなく母国の劇場などで歌った後、2018年以降にドイツ・オーストリア地域の劇場で歌うようになり、現在はハノーヴァーの劇場に所属しているようです。

レパートリーはイタリア、フランス、ロシア物の重めなリリコ役を歌っていて、ここでも蝶々さんを歌っていますね。

 

歌唱については、流石に声は立派なのですが如何せん作ったような声なのが気になるところで、
”e”や”i”母音はかなり浅くなり易い傾向もあるので、まだまだ歌唱には改善点が多いように聴こえます。

 

 

52:19 Lucia di Lammermoor. Gaetano Donizetti
Sabina Puértolas, soprano
Xabier Anduaga, tenor

AnduagaはOperaliaでも入賞していた注目の若手歌手なのですが、
数年前とは声が変わってきているように感じました。
以下が3年くらい前の演奏。

 

 

ロッシーニ歌っている前の演奏は、鼻に掛かった声ではありますが、軽くて明るく
輝かしい芯のある高音には魅力がありました。

一方今年の演奏では鼻には入らなくなったのですが、響きの輝かしさも同時に失われてしまっているように感じます。
録音状況の違いもあるのかもしれませんが、響きのポイントが、前は硬口蓋のあたりにあったのが、今では芯がちってしまっている感じと言えば良いのでしょうか。
安定した演奏ではあるのですが、細い声を無理に太くしようと奥めに入れて良さが消えてしまっているおんか、その辺りはわかりませんが、彼の魅力はあまり感じられない演奏で残念でした。

 

Sabina Puértolasはスペインのソプラノ歌手で、イタリアで研鑽を積んだ歌手。
この方は、ある程度高い音域では良いポジションに入るのですが、ピアノの表現で鼻に入ったり、響きが奥なのに浅い声になったりと、中低音では良くない部分が目立っています。
ルチアという役は、狂乱が有名なのですが案外音域は低いので、高音だけ良ければ上手く歌えるという役でありませんので、余計に中音域は重要になってきます。

 

 

1:32:16 I puritani. Vincenzo Bellini
Jessica Pratt, soprano
Francesco Demuro, tenor

この二人の演奏は、この演奏会で一番良いと思いました。

Jessica Prattは素晴らしいソプラノだと思うのですが、
2015年の演奏と比較すると、やっぱり声が重くなって籠り気味になった印象を受けます。
それでも、ピアノの表現の柔軟さや、フレージングの巧さは流石に歳を重ねて向上している感じで、
演奏として惹き込まれます。
この辺りが、良い声だから良い演奏になるとも限らない声楽の難しくて面白いところかもしれません。

 

 

 

 

 

 

Francesco Demuroは個人的に鼻声テノールであまり好きではなかったのですが、
ここでの演奏は巧いなと感服しました。
所々で泣きを入れたり、高音で喉に引っかかったりと決して完璧な演奏ではないかもしれませんが、言葉のアクセントとフレージングがしっかりと合致していて、それを力で押さずに軽いポジションで柔軟にディナーミクを付けて歌う彼の演奏は、ベッリーニの様式感を見事に体現しているように感じました。

 

以下は2018年の演奏なのですが、はっきり言ってこのボエームの演奏は全然魅力を感じなかった。
プッチーニになると、ただ美しくフレーズを歌うだけでは物足りなくて、その中のドラマとオケに対抗できる声はやっぱり必要なので、デムーロはベッリーニを歌ってこそ良さが分かる歌手なのかもしれないと、この演奏会を聴いて思いました。

 

 

 

1:57:10 Le nozze di Figaro. ‘E Susanna non vien…Dove sono…’. Wolfgang Amadeus Mozart
Nardus Williams, soprano

 

この方はちょっとモーツァルトを歌うには癖があり過ぎます。
まず声が揺れている時点でこのアリアを歌うと粗にしかならない。
そして発音も奥なので言葉も飛ばない。
低い音域は籠る
残念ながら良い部分を見つけられませんでした。
ただ、彼女が選ばれた部門はRISING STARなので、今の年齢はわからなかったのですが、
若手ということで、今後の成長に期待したいと思います。

 

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