ハンブルク州立歌劇場 2023-24シーズンのキャストについて

ご無沙汰しております。

1月下旬から慌ただしく全然情報収集をする時間を確保できず、記事の更新ができませんでした。

行く予定だった演奏会にも全然行けなかったのが心残りです。

 

このところ大きな劇場が23-24シーズンの演目を発表していますので、
暫くはそこに絡めた記事が増えると思います。

今回は、ハンブルク州立歌劇場(Staatsoper Hamburg)についてです。

詳細はコチラを参照ください。

 

 

個人的にCASTを一通り見て目についたのは中国人歌手の多さ

ちょっと前までは、とにかく有名コンクールには韓国人が出てる印象で、メトを始め世界中の歌劇場にも、特にテノールは韓国人歌手の名前を見かけたものですが、今は中国人歌手との比率が同等程度にまでなってきている気がします。

 

 

 

 

 

例えば、ボエームのロドルフォを歌う予定のLong Long

変な癖もなく、高音も安定しているので、演奏や声に特別惹かれるモノはないものの、
レベルの高い演奏をしていることは間違えありません。

 

 

 

トゥーランドットのティムール役 Liang Li

声は立派なんですが、ちょっと作った感じでレガートが甘く、
解放された声ではありません。

 

 

トスカのアンジェロッティ役・ボエームのショナール役、
ヘンゼルとグレーテルのペーター役 Chao Deng

まだ声が若いですが、Liang Liとは逆に明るく開放感のある響きなので、
歳を重ねて声が成熟すれば化ける可能性はあるかもしれません。
多くの演目に出演が予定されているのを見ても、ハンブルクが押してる歌手なのでしょう。

 

 

トロヴァトーレのレオノーラ役 Guanqun Yu

録音状況があまり良くないこともあるのかもしれませんが、ドラマティックな役を歌う割には軽い声に聴こえます。
ですが、中低音になっても響きのポイントが落ちることなく、フォルテでも100%の圧力で声を張らずに、余裕を持たせてコントロールの効いた繊細な表現ができるのは素晴らしいと思います。
声だけ聴けば劇的な役を歌うには物足りなさを感じそうですが、曲全体の作り込みやフレージングは好感が持てるので、もう少し良い音質で最近の演奏があれば良かったんですけどね。

 

 

 

韓国の歌手は

 

こうもりのアルフレード役 Seungwoo Simon Yang、愛の妙薬のネモリーノ役

この人は個人的に素晴らしいリート演奏をする歌手だと思っていて、
圧力で声を押し出すのではなく、吹くように言葉を飛ばす彼の演奏はとても好感が持てます。
この人をアルフレードやネモリーノで起用したのは良い人選だと思います。

 

 

 

後宮からの誘拐のブロンデ役 Narea Son、ドン・パスクワーレのノリーナ役

 

 

 

トスカのカヴァラドッシ役 Young Woo Kim

 

 

Seungwoo Simon Yangが他二人の韓国人歌手は明らかに違う発声をしているのがわかると思うのですが、Young Woo KimもNarea Sonもポイントが落ちてるんですよね。
原因としては、まず口の動き。
Seungwoo Simon Yangは口腔や咽頭の空間に変化が生じないように、最小限の唇の動きで発音しているのですが、他の二人は無駄に口を開け過ぎているのでその分落ちる。
勿論歌っている曲がアリアか歌曲かというのも関係してくるとは思うのですが、それにしてもNarea Sonなんかは、上半身だけで歌っている感じで、低音と高音で音質が統一できていないし、このレベルの歌手をノリーナのような主役で起用するのは正直どうなんだろうと思ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

一方、有名歌手の器用では、全く理解不能なのが、

グリゴーロ(Vittorio Grigolo)を道化師のカニオ役とカヴァレリアのトゥリッドゥ役で起用していたり、

 

 

 

 

ポレンザーニ(Matthew Polenzani)をフィデリオのフロレスタン役で起用しているところ

 

全く声に合わない役を知名度だけで引っ張ってくると言うのは一体何を考えているのだろう。
特にポレンザーニなんて、ドイツ物を殆ど歌っていないはずなので、ベートーヴェンのオペラにこんな歌手起用する位なら自国の歌手を使えよ!と言いたくなります。

 

それで、ドイツの歌手を主役に探すといないんでしょ。これが・・・

一応

Eva-Maria Westbroek

のような大御所の名前はあるものの、それ以外若手のドイツ人歌手は見当たらず、辛うじて蝶々さんのスズキ役を歌う予定のIda Aldrian がオーストリアの歌手というくらい。

 

 

 

 

 

今後記事にしようと思っていますが、来シーズンのメトは近年では希なほど新作オペラを上演したり、若手の歌手を起用しようとしている姿勢が見られるだけに、ハンブルクのキャスティングは正直目指す方向性がわからない。

 

中国韓国のアジア人以外では、東欧系の歌手も多い印象ですが、中でも
トゥーランドット役を歌う予定のEwa Płonkaはやっぱり若手の中でも別格だな~と思います。

太さはないものの、硬質で突き抜けるような高音と、適格なアジリタの技術。
低音まで響きのポジションを落とさず胸の響きを使える発声的なバランス感覚の良さ。
どこを切っても大変レベルの高い歌唱をしていて、現在世界的に見てもトップクラスのトゥーランドット歌いなのではないかと思います。

とりあえず、グリゴーロにカラフ歌わせて謎かけシーンでもやれば、グリゴーロにドラマティックな役を歌わせることが如何に間違っているかが誰の耳にも明らかになると思うんですが・・・。

 

 

 

 

 

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