Aleksandrs Antoņenko RECITAL

Aleksandrs Antoņenko(アレクサンドロス アントネンコ)は1975年、ラトヴィア生まれのテノール歌手。

現在活躍しているドラマティックテノールの中で、年齢的には若い方でありながらも既にトップクラスの人気と実力を誇るのがアントネンコ。
重く強い声でありながら、決して暗いくぐもった響きにはならず、
しっかり前に明るい芯のある声で、多くの重い声のテノールにあり勝ちな高音が苦手という訳でもありませんので、当然ファンが多いのも頷けるところですね。

そのアントネンコのリサイタルが先日(9/22)にストリーミング放送されたのですから、
当然このサイトでも取り上げない訳にはいきません。

 

 

 

ALEKSANDRS ANTONENKO RECITAL – Together concert cycle, Riga Castle Latvia

 

Emīls Dārziņš (1875 – 1910): Spanish romance (Lyrics A.Pushkin/ translated in Latvian by V.Plūdonis) 0:32
Jānis Mediņš (1890 – 1966): There is one night (Lyrics J.Jaunsudrabiņš) 3:39
Jānis Mediņš (1890 – 1966): I would go that way (Lyrics K.Jēkabsons) 5:27
Jānis Kalniņš (1904 – 2000): The book with a cross (Lyrics P.Rozītis) 6:54
Alfrēds Kalniņš (1879 – 1951): Behind the hills (Lyrics A.Niedra) 11:52
Arvīds Žilinskis (1905 – 1993): Antiņš’s aria from opera The golden horse 17:33
Francesco Cilèa (1866 – 1950): Lamento di Federico ‘E’la solita storia del pastore’ from opera L’Arlesiana 20:57
Giuseppe Verdi (1813 – 1901): Otello’s aria ‘Dio! Mi potevi scagliar’ from opera Otello Act 3 25:13
Giacomo Puccini (1858 – 1924): De Grieux aria ‘Tra voi, belle’ from opera Manon Lescaut Act 1 29:10
Franz Lehár (1870 – 1948): Prince’s aria ‘You are my heart’s delight’ from operetta The land of smiles 30:49
BIS – Emīls Dārziņš (1875 – 1910): Close your eyes and smile (Lyrics J. Poruks) 34:37

 

エミルス・ダルヅィンシュ
ヤーニス・メディンシュ
アルフレーツ・カルニンシュ
アルヴィーツ・ジリンスキス

といった、多くの方には馴染みのないラトヴィアの作曲家の作品が前半に並んでいるのですが、曲を知らなくても決して退屈しない演奏を聴かせてくれています。

もっと若い時は、声は立派ながらも棒歌いで、つまらない歌を歌う歌手と私個人は認識していたので、好んでアントネンコの演奏を聴くことはありませんでした。
例えば2008年のオテッロの演奏が以下

 

 

Dio mi potevi

今聴いてみると、無理して奥で響きを作っているような感じで、
今回公開されたリサイタルの自然で伸びやかな響きとは別物。
むしろ若い頃の方が重い声でくぐもっていますね。

私のアントネンコのイメージはこんな感じだったので、
若くしてドラマティックテノールとして成功したホセ・クーラみたいな感じで、一瞬騒がれるも、本来全盛期としてバリバリ歌えるはずの40代後半~50代前半にはボロボロになって耳のあるオペラファンからは見向きもされなくなるのではないかと心配していました。

それがどうでしょう。
ドラマティックテノールと言うには明るくリリックな響きを手に入れ、
チレーアのアルルの女のアリア「フェデーリコの嘆き」のような比較的軽い声のテノールが歌うような曲も、一般的なこの曲の歌唱からすると強く硬さのある演奏ではあるものの、彼の声からすれば随分と軽く明るい響きを意識した演奏で、続くオテッロの演奏が、2008年の時とは比較にならない程自然に聴こえます。

課題があるとすれば、
高音が前で響いて明るいのは良いのですが、
今度はややアペルト気味になってしまっていて、ディナーミクがコントロールできないポジションになってしまっていること。
恐らく、これはちょっと声を押してしまっていることが原因だと思うのですが、
もっと弱い息でも十分声は鳴るとは思うのですが、例えばレハールのほほ笑みの国のアリア「君こそ心の全て」では彼の課題がよくわかるのではないかと思います。

歌曲だとそんなことはないのに、オペラアリアだとピアノの柔らかい表現をしようとした時、奥に引いてしまうと言えば良いのか、響きのポイントを変えて音量を調節してしまう。
それと比較したら一番最後に歌ったアンコールは実に良いです。
この声のままフォルテの表現ができるともう一皮むけるのではないかと思います。

何にしても、アントネンコが現在トップクラスの実力を持ったテノールであるということはこのリサイタルからも伝わりますので、お時間のある方は是非ご覧になってみてください。

珍しい曲が沢山聴けるのも良いですね。

 

 

CD

 

 

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