ネット上に溢れる発声講座を検証してみる

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今回は普段とは全く違う観点から記事を書いてみようと思います。

演奏家や演奏会の質についてではなく、
ネット上に溢れている発声講座的な動画についてです。

 

昔は「アクートの出し方」とか、「高音の発声」、みたいな単発動画が時々ある程度だったのですが、
最近は現役の声楽家が講義のようなものを配信しているのを見かけるようになりました。

 

しかし、そのような動画が有用かどうかは結局、当人の実演が全てであって、
どんな理論を語ったとしても、実際の演奏や声が視聴者を納得させるに値する質になければ信用はされません。
そこで、私が今まで見かけてたネット上の発声講座を検証してみることにしました。

 

 

 

◆田川理穂氏(メゾソプラノ)

ネット声楽レッスンシリーズ

実演は基本なしで、講義のようなことが多い動画
こういう動画で注意が必要なのは、相手の伝える意図とこちらの受け取り方で必ず差異が出てくること。

かなりの動画本数があるので、↓は当人の声が聴けるので、この発声を聴いて信用できるかを判断基準にしてみた。

Silvestro先生からの高音のポイント🎵ネット声楽レッスン教室シリーズ ワンポイント発声練習法:声楽家が決して明かさなかった合唱の秘法

 

動画の中で田川氏は「合ってるかどうかではなく、本院が一番だし易い方法が正しい」というようなことを仰っていますが、
その意見については概ね同意するにしても、ご自身の歌っている顔を田川氏は見たことがあるのだろうか?
ご自身は、必ず信頼できる第三者の意見を求めるよう提言しているのだが・・・

 

低音を歌っている時

 

 

 

中音域を歌った時

 

大して高音は出していないのですが、
上行音型や跳躍する時にやたら眉間にシワが入ります。
コレが正しいとは個人的には思えないのですね。
他にも、跳躍する前の音を大切に歌うよう指南していますが、
発声の音形や、なぜその母音や子音なのか?という肝心な部分を解説できていません。
この動画で田川氏が仰っていることは間違っていないとは思いますが、確実に不足している情報がある。
というのが私の見た感想です。

 

 

 

◆塩塚隆則氏(テノール)

【発声講座】

日本のKing  of  high  Cを自称する典型的な高音命のテノール
内容もそれに違わず高音の発声に特化した内容になっている。
前述の田川氏のとは逆に、実演を多く取り入れた解説ですが、
高音を出す。ということ以外は話題の中心になることが少ないです。
また、私の意見とは対照的に、ドイツ唱法とベルカントを区別しているのも特徴でしょうか。

【発声講座】そば鳴りを直す「外鳴らし」とは? ※プロ向け

こちらが実演

 

 

ヴェルディ トロヴァトーレ Di quella pira

これを籠っていると言わずして何と言うのでしょうか?
他の動画では、言語によって適切な発声は異なるというようなことも仰っていますが、
そもそも塩塚氏がベルカントと言っている歌い方で、イタリア語が美しく聴こえているのか?
高音が楽に出る=ベルカント
という理屈が彼の中ではできあがっているようにしか見えません。
彼が大切だと仰っている”u”母音についても、それぞれの母音で全く響きのバランスが取れておらず、
参考になるとは言い難いと言わざるを得ません。
ただ、言っていることが全て違っているかと言えば、勿論そんなことはないと思いますし、
実際高音は出ている訳ですから、人によっては参考になることもあるでしょう。

 

 

 

◆永田孝志氏(バリトン)

永田孝志の発声謎解きチャンネル

自傷発声研究家ということらしいのだが、
この人の場合、一番謎なのは、その声を何に使うか!という目的がよくわからないこと。
歴代の名歌手の発声を解説したりしていますが、ご自身がそれを真似できている訳でもなく、
歌の上手い下手もどうでもよくなっていて、研究の成果?をひたすら発信しているという、個人的には謎のチャンネルです。
まだ、塩塚氏はテノールの高音にスポットを当てているだけ視聴者の対象が絞られていますが、
永田氏は誰が見ることを想定してこの動画シリーズを続けているのか不思議ですが、これで何年も続けていらっしゃるところだけは尊敬します。

 

 

 

 

 

◆国分博文氏(バリトン)

K・メソッド

K・メソッドなる怪しげな独自理論を「ベルカント」
として発信している人

一応YOUTUBEにも多少のチャンネルはあるが、
この歌唱法を習得したい!という人は現れたのだろうか?

 

 

工藤健詞氏(テノール)

 くどう式発声(ブログ)

 くどう式発声(YOUTUBE)

 

パヴァロッティが来日した時抱き着いたことで一部の人達の間で有名になった人で、
一時期芸大の現役学生が、大学とは別に習う先生(裏門下)としても随分生徒を集めていた時期があったと聞くのがここ

このメソッドを広めている中の人達の実演はと言うと

 

プッチーニ トスカ 二重唱

工藤健詞(テノール)
小林久美恵(ソプラノ)

 

 

 

 

【番外編】

ソプラノ歌手【田中彩子】の高音トレーニング

田中彩子が良いか悪いかは別問題として、
彼女が「動物の声」を例に出して物まねを推奨しているが、
犬の遠吠えにしろ、赤ん坊の泣き声にしろ、正しい発声を説明する時に例として出されることが多いのは事実だが、
赤ん坊は言葉を喋れるようになってくると、正しいポジションでは中々声を出せなくなってくる。
つまり、言葉という形で様々な音を出せるようになった代償として失ったものが、無理なく響く声を長時間発し続ける。という行為なのであり、
それ故に、クラシックの正しい発声は自然な発声が理想とされるのである。
ちなみに、田中彩子が言っている「犬の甘えた声」のようなことはドイツ人もやっている

 

 

こちらも田中彩子のやり方に似てはいるが、
点で当てているやり方の田中と、線で繋げるこちらでは意図が実は全然違う。
同じことをやるなら、こちらの方が試す価値はあるだろう。

 

 

こうして見ていると、
不思議なことに発声=高音の出し方
ともとれる解説があまりに多すぎる。
高音も低音も全て繋がっているという意識が、田川氏はまだあったが
他の方の書き方や言い方ではそういうことがほぼないことを考えると、
この中では一番田川氏の講座が知識としては役に立つのではないだろうか?というのが私の見解である。

 

 

なお欧米では、パッサージョや高音についての考え方が全く違うように見える

 

上と下をしっかり細い一本の息で繋げる訓練。
初めからフォルテで出したり、強いアクートを求めず、
柔軟なミックスボイスを作るという考え方の方がよっぽど利に叶っている。
「息を回す。」とか、「首の後ろの筋を伸ばす。」とか、そういったことも必要な場面はあるだろうが、
数をこなして必要な筋肉を鍛えていく必要性を考えれば、細い道を通して時間を掛けて広げていくという考え方になるのはまっとうな意見である。

ネット上にはこのような講義のようなもの以外にも、一流歌手が公開したボイトレ映像や、
私も時々取り上げるマスタークラスの風景なんかも含めて、
色々と発声について学べるものがあるのだが、
重要なのは良い声が出てるから良い発声。とか
高い音が出てるから正しい発声。などというものでもなく、
何のためにその訓練、メソッドがあるのかが明確であり、それを取り入れた結果、自分の歌が上手くなれるのかどうか。
が一番重要なポイントである。
高音が出るようになっても、中音域がスカスカになったり、何を言っているか言葉が聞き取れなければ意味がない。
動画を作る側もいい加減「高音」という呪縛から解き放たれて、良い歌の本質を追求した動画を作って頂きたいと願うばかりである。

 

4件のコメント

  • サイトを閲覧中に私の個人名を上げた貴方様の論評を見つけました。頼みもしない(頼まれましない)論評・・・・、しかも敬称も付けない名指しの揶揄的論評はご遠慮ください。

    記載の内容(他の方に関する内容)もいい加減です。貴方様が記載した私の声種も違っています。

    私の主意も違います。私はアクートの歌唱法とベルカントの歌唱は違うと唱えています。

    貴方様の表現は多くの私の生徒さん方にとっても非常に失礼千万です。

    • Yuya より:

      K‐メソッド様

      ご意見頂きありがとうございます。

      敬称についてですが、
      確かに敬称を付けなかったことは失礼だったかもしれませんが、
      ネット上に公開している以上は批判されることは想定しておくべきではないでしょうか?
      本当に正しいことを教えていらっしゃるのであれば、生徒さんに自信をもって指導されれば良いと思います。

      >記載の内容(他の方に関する内容)もいい加減です。貴方様が記載した私の声種も違っています。

      →どこがどういい加減なのか具体的にご指摘願います。
       私はこれまで、デル・モナコの弟子であるアウグスティーニ氏にも習ったことがありますが、
       K‐メソッド様の主張される
       <パッサッジョ域でジラーレしてもファルセットにしかならない>や
       <喉を「開ける・広げる」はベルカント唱法です。アクート唱法はその逆>などという主張は今まで聞いたことがありません。
       少なくともカルーソーは著書『カルーソー発声の秘密』の中で「喉を広く開け、低音~高音まで滑らかに声を移行させること」を主張しております。
       そもそも、
       <パッサッジョ域では開けてはいけません。開けていてはアクートにはなりません。閉じた状態の声帯の間を呼気を通過させて鳴らす。会話や胸声歌唱による声帯の振動とは全く異なったプロセスから成り立つ歌唱法です。>
       と主張されていることについて、声帯は閉じていないとそもそも音は鳴りませんので、声帯を閉じることが会話や胸声歌唱と異なる。とはどのような意味なのかご説明頂ければ幸いです。
       私の知識不足による誤った誹謗中傷であれば、この記事の内容は速やかに修正させて頂きます。

      K‐メソッド様も正しいと思ったことを広めていらっしゃると思いますが、
      私も勉強した中で正しいと思ったことを書いていますし、私の記事を支持して下さる方もおりますので。

  • 畠山紳一郎 より:

    永田先生の発声解説で 私自身の長年の課題が解決しました。彼の研究や解説は実践的かつ論理的に受け入れやすいとおもいます。
    世の中の大半のボイストレーナーがここまで踏み込んだ説明をしてくれてなかったことに驚きを隠せません。残念ながら高名なボイトレの方、芸大の名誉教授などに45年に亘って指導を受けてきましたが、彼らがなぜこんな事を教えてくれなかったのか?きっと長嶋茂雄さんなどと同じで自分のスキルを体系だって人に伝授するのが上手でなやったのでしょうね。
    永田先生のビデオを聴きながら毎日車を運転してますが、以来、高音、低音ともに三度ほど音域が伸びました!しっかり声帯を使う、緊張の均衡、胸声によるキューゾの実践など本当に役立ちます。

    • Yuya より:

      畠山紳一郎さん

      メッセージ頂きありがとうございます。
      永田先生の主張で私も同意する部分は、「喉が上がってはいけない」ということ。
      これはドイツで習った方も、イタリアで習った方も共通して言っていることなので間違えないと確信しています。

      私も芸大で長らく教えていた方に習っていて声をダメにしましたので、「彼等が何も教えてくれない。」
      ことは身を持って体験しております。
      結局彼等はサラリーマンなので、組織の上の方の考え方と違うことを生徒に教えることができないのでしょう。
      そういう意味で、高名な先生の仰ることに反対すると仕事がなくなる。
      といった状況から離れ、自由に自身の意見を発信する活動をされている永田先生はご立派だと思います。
      一方で、どんな方でも主張されていることが100%正しい。ということはあり得ません。

      無論私の記事に書いていることも同様ですが、発声や歌唱について溢れている情報は、一人の意見ではなく、
      有名な歌手のマスタークラスや発声練習の風景などの動画がYOUTUBEにもありますので、
      それらの情報も取り入れた結果として、情報の正否を判断されることをお勧めいたします。

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