初ボイトレの学生さん

本日、はじめて10代の若い方のボイトレをさせて頂く機会がありました。

しかも、私の記事を見て勉強されて現役で芸大に合格されたとのことで、そういう話を聞くと、これまでずっと記事を書いてきて良かったと思えます。

そもそも、このような活動をはじめたきっかけが、自分が学生時代に知りたかったことを、今の若い方に伝えたい。
大事な若い時間を、声楽教師の気まぐれで台無しにして欲しくない。
という想いからだったことを思い出させて頂くことができて感謝です。

 

それと同時に、今はYOUTUBEというツールや、探せば幾らでも発声関連の記事やら動画が出てくるので、インプットは楽だけど、どの情報に価値があって、どの情報が害なのかを見分けることが本当に難しい。

とは言え、どの発声教本が良いなんて話をしていた自分達の学生の頃を想うと、情報に振り回されるという状況は同じなのかもしれません。
実際、正しいことが書いてあったとしても、自分がその通りに身体を動かせているのかをチェックすることが一番難しいのだから、下手に知識を入れることが返って歌うことを難しくしてしまうこともあって、自分はただの発声オタクで学生時代を終えてしまったという苦い思い出があります。

普段無意識にできている運動や自然な発音を、どうやって意識的に歌に生かしていくのか、そうできるように生徒に気付かせることが出来るのか?
ここが指導者にとって一番重要なことなのではないかと思います。

自分の知識を生徒に与える教育者と、生徒の素材を最大限に生かせる方向へ導いていく指導者ではどちらが良いのかも難しいところですが、ボイトレという部分だけを取った場合、
声を出すという行為が、障害を抱えていない限り大抵の人が自然に、且つ自発的にできるようになることからも、1~10まで先生が教えるというのはあり得ないので、教師に求められる能力は、歌う技術以上に生徒の声を聴いて良い方向へ導ける提案を出せる能力なのだろうというのが私の考えです。

 

それは置いておいて、本日ボイトレを受けられた方から、ジャイオッティ(Bonaldo Giaiotti)の歌唱は良いのかどうか質問を受けましたので、この方の歌唱について書いてみたいと思います。

 

ボナルド・ジャイオッティ(1932 –  2018)はイタリアのバス歌手

 

ロッシーニ セビリャの理髪師 La calunnia

この人はまず一音一音不自然なほどに押して歌っているように聴こえてしまいます。
なので、響きは前にあるにも関わらず発音が明瞭には聴こえてこない。
この曲だからそういう演奏をしているのか?
と思って、ヴェルディの演奏を聴いてもやっぱり、レガートが皆無に等しい。

 

 

ヴェルディ ナブッコ Sperate o figli

この人の演奏を聴いて思うのは、彼の辞書にディナーミクという言葉はあるのだろうか?
ということ。
どこぞの合唱団のように、”P”はピアノではなくパワーのPなのではないかと思えるほど、平面的な声でフレージングも何もあったものではありません。

こういうただ良い声だけを垂れ流す演奏を、歌の勉強を始めて2年足らずの方が良くないと聴き分けられる耳を持っているというのは、本当に色々な歌手を聴いて勉強されたのでしょう。

でも、ジャイオッティ、高音は素晴らしいんですよね。
ナブッコの3:50~4:06までの部分は余分な力みがなく、硬口蓋に響きが乗っていて凄く良いと思います。

しかし、良いのは束の間で4:06の後で音程が下がっていくのに合わせて響きのポイントも下がっていって、低音では喉声になってしまう。
この人、バスではなくハイバリトンになって、通常の半分程度の音圧で歌っていれば本当に良い歌手になっていたかもしれない。と思えてしまうのは私だけでしょうか。。。

 

 

こういうバリバリ鳴るタイプの声の歌手だったら、私はリッダーブッシュ(Karl Ridderbusch)の発声技術こそ至高だと思っていたりします。

柔らかく歌っても、ド低音でも響きのポイントがブレずに、母音がはっきりしていてレガートが完璧なので、ドイツ語を歌っていても発音が明瞭なのに子音に硬さを感じない。
本当にこの人の技術は素晴らしいんですが、録音が結構残っているにも関わらずあまり注目されることもなく、そこが腑に落ちないんですよね~個人的には。

もっと演奏映像が残っていれば良かったのに・・・。

 

 

最近記事を書く時間がなく、結構頂いているリクエストも溜まってきてしまったので、
また古い歌手も取り上げつつ記事を書くペースを上げていければと思いますので、よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

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