グレゴリー クンデ級の完成度を誇る驚くべき若手テノールSantiago Ballerini

 

Santiago Ballerini(サンティアゴ バッレリーニ)はアルゼンチンのテノール歌手。

 

優秀なロッシーニテノールが度々登場する現代で、バッレリーニは次世代を担うに相応しいリリコレッジェーロテノールの逸材と言えるのではないかと思います。

バッレリーニの素晴らいところは、軽い声でありながら全くファルセット的な要素のない声にあるのではないかと思います。

現在超絶技巧や超高音を得意としている歌手で全盛期を迎えている歌手と言えば、Javier CamarenaやMichael Spyresといった歌手がいますが、彼等は勿論技術は素晴らしいですが、それ以上に持っている楽器の特異性の方が際立っていて、高音を出すことにそもそも苦労しない感があります。

それに比べてバッレリーニは、軽い声質でありながらも音の重心はしっかりあり、全ての音がしっかりしたポジションにハマった響きで鳴っているのです。
ある意味では若い頃のGregory Kunde に近い声と言えるかもしれません。

 

 

 

グノー ロミオとジュリエット Ah, jour de deuil

こちらが2014年の演奏。
この年にアルゼンチンで将来有望なオペラ歌手として奨学金を得て活躍を始めたようなので、20代前半~半ばの演奏と考えて良いでしょう。
それにしても何て純粋で美しい高音なのでしょうか。
中音域は多少無駄なヴィブラートがあったりして、良くも悪くも若さが出ているのですが、
高音は熱量と冷静さが両立した20代のテノールが出すような声ではありません。
冗談抜きに歴史に名を残す伝説的テノール、ビュルリンクみたいな高音ではないかと・・・。

 

 

Jussi Björling

 

 

 

 

 

ドニゼッティ ドン・パスクワーレ Povero Ernesto

ドン・パスクワーレはドタバタ喜劇ですが、エルネスト役はなんとも立ち位置が微妙な役なため、このアリア自体がそれほどリサイタル等で歌われることはないのですが、実際はテッシトゥーラが高い上に声の力が求められるため、レッジェーロテノールが歌うレパートリーの中では相当劇的な表現が求められる難しい曲です。

バッレリーニの歌唱は端正でありながら熱の籠ったもので、高音の安定感も申し分ありません。
フローレスやミロノフのようなロッシーニテノールはライヴでも最後をハイDesに上げていますが、
殆どのテノールはアルフレード・クラウスですらライヴでも最後は上げてないので、バッレリーニがいかに高音に強いかがわかりますね。

 

 

 

ロッシーニ アルジェのイタリア女 Languir per una Bella

こちらは2018年の演奏。
クンデのような非常に高いレベルの歌唱ですね。

 

 

 

Gregory Kunde

今では最高のオテッロ歌いとして君臨しているクンデですが、
オペラファンにとってはロッシーニテノールのイメージが強い方も多いことでしょう。
そう考えるとバッレリーニも5年後、10年後には今とは歌っているレパートリーがかなり変わっているのではないかと思いますし、それこそ将来的にはドラマティックテノールの役でも歌えてしまうかもしれません。

声の力強さとアジリタの技巧がこれほどバランス良く同居した歌唱ができる歌手はそれこそSP時代まで遡ってもそうそういないと思います。

 

 

 

 

モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ un aura amorosa

意外と口を開けないで歌うのは驚きましたが、声の好き嫌いや、モーツァルトの歌唱として合ってるかどうかを別にすれば文句の付けようがない歌唱だと思います。
立派な声でありながら全く重くならず、ピアノの表現でもファルセットに抜いたような歌い方をせず、理想的とさえ言って良いかも・・・。

特に素晴らしいのは2:13~の再現部の戻る所で、
普通ならピアノに落として歌うと鼻声っぽくなったり響きが落ちたりするものなんですけど、
バッレリーニは出だしと同じ歌詞の「un aura amorosa」をピアノで歌っても、
”u”母音と”a”母音の質が変わらない。

これは無茶苦茶凄いことで、パヴァロッティすらできてません

 

 

Luciano Pavarotti(1:50~)

「un aura」の”ra”で少し響きの幅を広げてしまうのがわかるでしょうか?
”u”母音は綺麗に通っているのですが、”a”母音で少しだけピントがブレてしまう。

 

 

では現代最も高音に強いテノールの一人スパイレスはどうでしょうか?

 

 

Michael Spyres (2:47~)

こちらは「amorosa」の”mo”や”sa”が完全に鼻声になっていますね。
でも、これはスパイレスの技術の問題と言うより、美しいピアニッシモで歌おうとしたら仕方ない部分もあると思います。
もうこれ以上は取り上げませんが、あらゆるレパートリーを高いレベルで歌いこなしたゲッダですらこの部分はそこまで上手く歌えていません。

こうして古今の一流歌手と比較しても技術的に全く引けを取らないのがバッレリーニなのです。
正確な年齢はわかりませんが、まだ30歳前後と思われるので、更なる伸びしろは十分あることを考えると、この先いったいどんな歌手になるのかとても楽しみですね。
今のままイタリアとフランス物のロッシーニ~ドニゼッティ、ヴェルディの軽い役をしばらくはやって欲しいものです。

とりあえず、2021年までの発表されている予定を見る限り、セビリャのアルマヴィーヴァ伯爵、リゴレットのマントヴァ公爵、ルチアのエドガルド、真珠採りのナディール、そして連隊の娘のトニオといった役を歌うようなので、レパートリーに関してはまだ大幅に変わることはなさそう!

 

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