砂川 涼子(ソプラノ)の歌の問題点について

人気ソプラノ歌手の、砂川 涼子氏の歌唱に関して、
「どこがダメなのか?」
という意見を耳にしましたので、本日はそれを具体的に解説したいと思います。

2002年
ヴェルディ 椿姫 二重唱 Parigi o cara

まず売り出し中だった時の中島康晴との重唱
最初に中島が歌った後に砂川が歌うので、その違いが良くわかると思うが、
まず、中島に比べて圧倒的に響きのポジションが低い。
特に”i”と”e”母音は違いが顕著だ。
この場面のヴィオレッタは虫の息である。
はっきり言って言葉をはっきり喋るようなことはせず、響きだけで母音を繋げるべきである。

その証拠に、出だしの歌詞「Parigi, o cara noi lasceremo」の
”シェ”の発音で他の歌手と口のフォームを比べてみよう

 

砂川

 

レナータ・スコット

 

マリエッラ・デヴィーア

 

フィリアノーティとデヴィーアの演奏

 

因みに、名歌手と比べるな!
という声が聞こえてきそうなので先に言っておくと、
グルベローヴァは、横に開いて上の前歯を見せて歌うので非常に浅い声になっているのです。
一流の歌手でもフォームを誤れば響きは崩れてしまうのです。

 

グルベローヴァ

 

 

グルベローヴァの演奏

それでもグルベローヴァはまだ声の脱力感とい面では見事です。
たった一つの発音を切り取っただけですが、砂川の表情を見るだけで
他の歌手より明らかに無駄な力が、頬筋や顎に掛かっているのがわかるでしょう。
その結果、声が真っすぐ飛ばなくなってしまっているのです。

 

 

2007年
トゥーランドット リューのアリア

口開け方がかなり変わったので、響きも随分とかわりました。
この辺りが一番良かった時期ではないかと思います。

アリアの最後の音を出しているところ

低音を出しているところ

高音で明らかに下顎に不自然な力がかかっているように見える。
こういう部分でレガートができない原因が見えてくる

 

 

2007年でもう一つ
プッチーニ ラ ボエーム マルチェッロとミミの二重唱

砂川の一番の当たり役と言われるミミです。
堀内康雄が日本人のヴェルディバリトンとして人気実力共に充実していた時代なので、
その響きの違いは明らかです。
時々良い響きもあるのですが、高音は特に”e”母音で横に散ってしまったり、
低音に至っては全部籠ってしまっているので何とも勿体ない印象を受けます。
響きに統一性がないと言葉の力は半減してしまうので、
堀内に比べて全く歌詞が聞き取れない原因ともなっています。

 

 

2014年
コルンゴルト 死の都 マリエッタとパウールの二重唱

音質が悪く子供の声が入っているとは言え、
ちょっとこの演奏は酷すぎます。

「glück das mir verblieb」の歌い出しから発音が酷過ぎる。
アマチュア合唱団でもコレよりマシな発音をするところはいくらでもあります。
最初の”glü”が既に間違っている。
文字にするのは難しいのですが、”リュ”ではなく”リュィ”に近い音ですね。

”da”が鼻に入っている。

verbliebという単語にも関わらず”ver”にアクセントがきている。
基本的に”i”母音の当たり方が全部変です。

この言い方は正確ではないですが、もっと”i”は前で発音しないと全部飲み込んでしまったような声になってしまう。
特にドイツ語の”i”母音は一番輝きのある明るい響きにならないといけないのですが、それが全部暗い。
基本的に発音が全部奥過ぎます。
ドイツ物を歌うと、これだけ欠点が露呈してしまう訳ですね。

この明らかに勉強してないことが丸わかりの演奏ででお金取ると言うのは、
びわこホールの聴衆は馬鹿にされてる。と思って怒らないといけないと思います。

 

 

参考までに
エミリー マギーとロバート ディーン スミス

二人とも米国人なので勿論ドイツ語圏の歌手ではありません。
それでもちゃんとキレイな発音はできる。
マギーは全盛期を過ぎているので声が揺れてしまっていますが、
”i”母音の当たる場所は良いですし、ディーン スミスの発音している位置はとっても良いですね。

 

 

思ったより動画が少ないので、今回はこんな感じで終わりにしたいと思いますが、
砂川 涼子をなぜ歌が上手くないと私が書くか、少しはお分かり頂ければ幸いです。

 

最後に、私が生で砂川を聴いた感想を書きますが、
あれは2016年の新国のマスネ ウェルテルのゾフィー役だっと思います。
これらの映像の演奏より、あれ位軽い役で、更にフランス語の方が悪い部分が目立たなかった印象です。
それでも、レガートで歌えない。というのは西洋クラシック音楽を歌う上では、
時代や国を問わず(リングのミーメ役みたいなのを除いて)致命的な欠点となってしまいます。
結局、そこを突き詰めれば、
レガートできない=息が流れていない=下顎に力が入っている=正しい発音ができない=響きが硬くなって母音によってバラつきがでる=加齢と共に声が揺れる。
このスパイラルに堕ちていくのみです。

なお。私にはアンチも贔屓もありません。
今まで評論を書いてきた歌手の中に友人知人もいますが、
無条件に称賛したりは決してしていないのは、
諸々の演奏会の記事をご覧頂ければわかると思います。

今後とも、何が良いくて何が良くないのか、出来る限り明確にお伝えできるような記事を書いていければと思っています。

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