Kartal Karagedik(カタール カラゲディック)はトルコのバリトン歌手。
2015年からハンブルク州立歌劇場のメンバーとして歌っており、歌っている役柄も幅広い。
モーツァルトのコジ・ファン・トゥッテのグリエルモ、フィガロの結婚の伯爵
ロッシーニのチェネレントラでダンディーニ、ドニゼッティの愛の妙薬ではベルコーレ
こういったブッファの作品をこなす一方
ヴェルディのドン・カルロのロドリーゴを中心に、
プッチーニのマノン・レスコーのレスコー、ラ・ボエームのマルチェッロ、更にチャイコフスキーのエフゲニー・オネーギンのタイトルロール、他にカルメンのエスカミーリョも当然のように歌っており、現在この歌劇場のバリトンの主柱と言って遜色ない活躍をしています。
調べてみると、2014年に来日していたようなのですが、その頃はあまり良くなかったのか、全くと言って良い程注目されている様子がありませんでした。
この演奏は2010年のようです。
う~ん、これなら2014年に来日した時にそれなりに評判になっても良さそうなんですけど、日本に来た時は調子が今ひとつだったのか、歌った曲が良くなかったのか・・・。
何にしても、この演奏で聴かれるカラゲディックの声は、素直で伸びやか。
ドン・カルロを歌うには声にも表現にも成熟感が欲しいところではありますが、
決して勢いに任せて高音を出す訳でもなく、多少アペルト気味ではあっても音楽に停滞感はありません。
素直に良い声のバリトンだな~という印象を私は持ちました。
この演奏の詳しい年代は不明ですが、推測では2018年2月のハンブルクでのものではないかと思います。
最初に紹介したロドリーゴのアリアとは随分声も響きも違う。
ロシア語とイタリア語という地点で響きには違いが出るでしょうが、ここまで違うともう別人のようですね。
個人的にはこの演奏と、ロドリーゴの演奏の中間のポジションの響きが欲しいな。と思ってしまうのですが、
この演奏は深さはありますが、全体的に奥で、ピアノの表現も声を飲んだような感じになって、響きが前に来てないのが気になります。
この演奏は2017年11月であることは確実なので、
やはり、オネーギンはロシア語だから奥まったような響きになっていたことがわかりました。
この演奏はフランス語ですが、明るい音色の高音と、響きのポイントが奥に引っ込まないピアノの表現、これもまた前の2つの映像とは別人のような声なので、一体本当の声はどれなんだ?
と思ってしまう訳ですが、何を歌っても清潔感のある歌い方をするので、大きなインパクトはないかもしれませんが、堅実な演奏をする姿勢は一つの劇場で信頼されて長年様々な役で使われる根拠としては十分かもしれません。
それにしても、このオペラはあまり有名ではありませんが、私はてっきりイタリア語のオペラだと思っていたら、パリのオペラ座で上演することが目的だったようでオリジナルはフランス語の台本なのだそうです。
ちょっと話はそれますが、このアルバ公というオペラ、
歌手のボイコットだかで上演が頓挫してドニゼッティが作曲を途中で放棄してそのままになっていたのを、ドニゼッティの死後に弟子が補完したイタリア語版が1882年に初演され、
更にオリジナルのフランス語版はと言うと、ジョルジョ バッティステッリという1953年生まれの作曲家によって補完され2012年に初演されたばかりなのだとか。
その演奏が以下のCDということです。
作曲家が未完に終わった作品を弟子が補完するということはよくありますが、
有名所ではモーツァルトのレクイエムとか、プッチーニのトゥーランドットなんかそうですよね。
ですが、現代の作曲家が筆を加えて完成させるという例は中々ないのではないでしょうか?
個人的には、ルチアーノ ベリオが筆を加えたトゥーランドットのフィナーレは一度生で聴いたことありますが、あれはあれで嫌いではなかったです。
低音はまだ鳴り方が不十分で、中音域や、ピアノの表現をする時に鼻に入る傾向がありますが、高音は楽に抜けていくのは見事ですね。
もう少し前に集まる感じが欲しい一方で、硬い響きにならないのは彼の良い所でもあるので、
やっぱり技術以上に年を重ねてもっと成熟していけば、おのずと自然に深さが出てくるのではないかと思いますので、このまま何かを大きく変えることなく歌っていって欲しいですね。
最高音の”G”はちょっとチリメンヴィブラート気味ではありますが、良いポジションで歌えていると思いますので、この響きで全ての音が統一されると良いんですけどね。
まだYOUTUBE上に音源が少なく、どんな歌手なのかを細かく分析することは難しいですが、
注目に値する才能の持ち主であることは確かですね。
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