Opéra Orchestre National Montpellier 『WERTHER』

この日にウェルテルをアップするとは、OperaVisionは狙っていたのでしょうか?

それはともかく、かなり豪華にキャストを揃えたモンペリエ国立オペラ座のマスネ作曲、ウェルテルがアップされたので、聴いていきましょう。

 

 

Opéra Orchestre National Montpellier

 

<キャスト>

Werther: Mario Chang
Charlotte: Marie-Nicole Lemieux
Albert: Jérôme Boutillier
Le Bailli: Julien Véronèse
Sophie: Pauline Texier

 

 

マリオ・チャンはグアテマラ出身のテノールで、
ドミンゴが主催しているコンクール。2014年のOperaliaでの優勝者です。

 

 

 

この頃から7年経っているのですが、良くも悪くも歌唱に変化がありません。
響きのポジションは決して悪くないとは思うのですが、如何せん圧力で声を出すので、高音が押すか引くかの声しか出ない。
よってフレージングに柔軟性がなく、ウェルテル役がドン・ホセのように聴こえる。
2015年に新国でウェルテルを歌ったコルチャックの演奏と比較すれば、チャンの声がいかに不自然かがわかると言うものだ。

 

 

Dmitry KORCHAK

確かにウェルテルはバリトンが歌う版があったり、初演をヘルデンテノールが歌ったという記録があったりするし、マスネがワグネリアンでもあったのですが、
だからといって、重い声で、高音にまったく瑞々しさがない声で歌って良い訳ではありません。
チャンのような歌唱をする役なら、自死などせずにシャルロッテと心中してるでしょうね。

 

 

マリ=ニコル・ルミューは良い歌手だと思うのですが、シャルロッテ役が合っているかどうかは別問題。

彼女の場合は、太い声でありながら、決して重くならず、表情豊かに古楽や歌曲を歌ってこそ良さが出るので、ドラマティックな表現で絶叫してしまうと良さが消えてしまう。

 

 

ルミューはこういう曲を歌えば魅力的なのですが、
シャルロッテ役を歌うにはテッシトゥーラが合わないのか、母音の音質も乱れ気味で、特に”e”母音はかなり横に開いてしまっている部分が聴かれました。
そもそも、この人の高音はやや勢い任せなところがあって、上で紹介したアーンの歌曲ですら、高音は硬くなってしまっているのですから、シャルロッテでは尚更です。

そんな訳で、音域が高めなウェルテルとのやり取りやアリアより、アルベールとの対話部分の方が歌唱としてはよかったりするのですが、そういう部分は音域が低く目立たないので、ルニューが優れた歌手であるということがあまり分るところがない気がします。

 

 

ゾフィーを歌ったPauline Texierはどうでしょうか?

役を考えれば軽い声で首から上だけの響きで軽快に歌う、日本人ソプラノにも多くみられるような歌唱でも違和感がないので、声と役のハマり具合としては主役二人より良いのかもしれません。

 

 

 

高音の響きは美しいのですが鼻に入っている。
中音域は・・・、低音は胸に落として鳴らす。
こういう歌唱をすると、ゾヴィーみたいな役以外では技巧や高音でしか歌を聴かせられなくなるので、私個人としてはちょっと苦手なタイプの歌手です。

 

 

とまぁこんな感じで、全体的に悪くはないにしても、ウェルテルの演奏としては煮え切らない中で存在感を見せたのが、アルベールを歌ったブーティリエ。
やっぱこの人は最近の若手バリトンの中でもトップクラスであることは間違えないですね。
声に衰えが見え始めた、ルドヴィク・テジエーの地位を引き継ぐのも時間の問題かもしれません。

 

 

Jérôme Boutillier

響きの明るさ。
柔らかさの中に太い芯の通った声。
フレージングの巧みさ。
音色の豊かさ。
高音の安定感。
発音の明瞭さ。

どこをとっても文句の付けどころがない素晴らしい歌手ですね。
過去記事でもこの人は取り上げましたが、コンサート歌手としても、ヴェルディバリトンとしても一流を目指せる逸材に成長しているなぁと感服しました。

という訳で、今回のウェルテルは、シャルロッテがアルベールを選ぶのは当然!と頷ける結果となりました。

 

こんな記事を書いているうちに気付けばクリスマスが終わってしまった/(^o^)\

 

 

この話題とは全然関係ないですが、遂に有名歌手を動画にしたのでもし興味あったらご覧になって頂ければ幸いです。

コメントする