コロンビア生まれの秀逸なバリトンJuan Fernando Gutiérrez

Juan Fernando Gutiérrez(フアン・フェルナンド グティエレス)は1980年、コロンビア生まれのバリトン歌手

彼はDanaila Hristovaに師事して声楽を学び、
2002年にウィーンに移住。ウィーン音楽演劇大学でMargarita Lilowa、Robert Holl、Ralf Doeringの指導の下で学びました。
2010年から2012年まで、ミュンヘンのゲルトナープラッツ州立劇場のメンバーで「魔笛」のパパゲーノ、「こうもり」のDr. ファルケ、「アルジェリのイタリア女」のタッデーオなどを歌い、レパートリーの基礎を築きました。

その後は、Wiener Mozart Orchesterというところを拠点に、
オペラだけでなくコンサート活動も平行して行っているようです。

 

モーツァルト 魔笛 Papagena! Papagena! Papagena!

この演奏は2013年のものということで、32か33歳ですね。
若いのに楽器が出来上がっている感じのする声と言えば良いのでしょうか?
ある程度年齢を重ねないと、どうしても低声歌手は線が細く感じたり、あるいは逆に粗削りな印象を持つことがよくあるのですが、グティエレスは響きと発音のポイントが前にありながらも、喉が上がことなく、深みのある声を出せている。

モーツァルトの主なバリトン役は、ドン・ジョヴァンニを除いて、比較的どんな声質の歌手がやっても違和感なくできるのですけど、過剰な表現に頼らなくても、声だけで説得力のある演奏ができるパパゲーノを聞くと、やっぱりあまり軽いバリトンが歌うのは違うのかな?とも思えてしまったりします。

 

 

ロッシーニ セビリャの理髪師 Largo al Factotum

いつの演奏かはわからないのですが、高音でも圧力に頼ることなく、軽々出しているのが素晴らしい。

バスでもいけそうな重厚な声でありながらも、高音にも強く、それでいて声に頼らず、綿密な表現をすることができるという意味では、英国の名バリトン、トマス・アレンのようだなと思いました。

アレンをご存じない方へ、参考のため30代半ばのアレンの演奏も貼っておきます。
フィガロのアリア(5:50~)は英語で歌っていますが、多少音圧過多ではあるものの、演奏としては大変すばらしいです。
映像見てるとわかるんですけど、全く下あごに余計な力が入ってなくて、舌がどんだけ早口でも硬直しないです。

 

 

グティエレスの歌唱は、声楽的なフォームを崩すことなく、デフォルメされた極端な表現をしなくても、声に頼った演奏に聴こえないところが素晴らしいですね。
このアリアは、ロッシーニ作品でありながら、ヴェリズモ作品のように過剰な表現がされることが多々あるので、そういう面から見ても、理想的な演奏かなと・・・。

 

 

ラテン民謡 El Vito

 

スペイン語の作品は全く知識がないので、
コチラのサイトから歌詞を転載させて頂きます。

 

<歌詞>
Una vieja vale un real
y una muchacha dos cuartos,
y yo,como soy tan pobre
me voy a lo más barato.

Con el vito,vito,vito,
con el vito,vito,va.
No me jaga ‘usté’ cosquillas,
que me pongo ‘colorá’.

 

<対訳>
年増女は1レアルの値打ちで
若い娘はその四分の二
おれは貧乏だから
安い方を選ぶとしよう

ダンスで ダンスで ダンスで
ダンスで ダンスで さあ
からかうのはやめて
でないとあたし赤面しちゃう

 

 

こういう演奏を聴くと、
伴奏のリズムの出し方や、歌唱のディナーミクなんかは頭でなく、身体が自然に反応しないとこうもピッタリ合わないなと思います。

ある程度グローバルスタンダードな演奏が確立している有名な作品の演奏であれば、いくらでも知識で補完できる部分はあるでしょうが、その土地や民族に根差した音楽というのは中々そうはいきません。

ポーランド人でないピアニストが、ショパンの演奏で一番苦労するのはマズルカだという話を耳にすることがありますが、
そこに言語がからんでくる歌となると、更にハードルは高くなることは想像に難くありません。

まだグティエレスの音源が彼自身で投稿している少数しかなく、音質もあまり良くはないので、手放しで彼の演奏を称賛するには情報が少ないかもしれませんが、今後活動範囲が広がって、有名になる可能性はあるかと思いますので、今後の活動に注目したいと思います。

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