日コンの二次予選を聴いて思ったこと

NHKラジオの聞き逃し配信で、日コンの二次予選を聴いて思ったことを書いてみます。

今年は、既にプロとして既にかなり知名度のある歌手が多数出場していて、
流石に在学中の学生とでレベルに差が出るのは仕方ないなというのが最初の感想です。

なので、批評と言うよりは、個人的に気になった方についてのみ言及していこうと思います。

 

七澤 結さん(ソプラノ)

既に二期会関係の演奏会を含め、多くの舞台で歌っていますし、
本選まで残るかと思ったら、通らんかったのね。というのが個人的に意外でした。

日本人のソプラノで、若いうちから高い完成度の演奏ができるのは、
どうしても軽くて高音やコロラトゥーラが得意なソプラノになってしまうというがあり、
七澤さんも大変技巧的な部分や高音は素晴らしい。
となると、やっぱり差が出てくるのは中低音で、今回もコンクールで連隊の娘のアリアを歌っていましたが、カバレッタの完成度と比べると、カヴァティーナはおまけに聴こえてしまう。

本当に残酷な話ですが、高音やコロラトゥーラは歳を重ねたり、出産で大きな影響を受けるので、そこしか強みがないと、若手がどんどん出てき、使い捨てのようにされてしまう。
そうならないためにも、彼女には技巧ではない部分で聴衆を納得させられる、誰でも出せる音域でも勝負できる発声技術を会得してほしいですね。

 

谷口 まりやさん

ドイツ・オーストリア地域で歌ってる歌手というイメージがあったので、
今更日コンに出てるとは思いませんでした。

個人的な好みはさておき、本選に残ったのは順当な気がします。
やっぱり、国内のソプラノと差が出るのは中低音だとはっきりわかんだね。

 

砂田愛梨さん

この方もすでに多くの演奏会に出ていて、来年の新国のウェルテルでは、ソフィー役を歌う予定もあるような実力者なので、今更このコンクールに出るんか?と驚いた。

声に癖がなく、軽い声ながら前で発音がしっかりさばけていて、技巧頼みの演奏にならず、
ドラマが真っすぐに伝えらる、演奏を聴いてて何がやりたいのかが分かるというのは本当に気持ちが良い。

声とか技術は勿論大事なんですけど、どういう表現がしたいのか、どんな風に役や曲を解釈してるのかが見えない演奏というのは、声以前に、何が楽しくて歌ってるんかな?と思ってしまう。
その点、彼女は自分の音楽を持っていて、それを伝える技術をしっかり磨いている。
そういった面で一番魅力を感じた演奏は砂田さんでした。

 

 

市川 敏雅さん

バスソロは6:47~

全然YOUTUBE上に音源がないのが残念。
ちょっと鼻に入った感じの声ではあるのですが、バリトンながら高音が圧力ではなく、アクートに抜けていける稀有な歌手だと思いました。
コンクールで歌ったファルスタッフも、高音はとても輝かしい響きでした。

残念ながら本選には残れませんでしたが、持ち声に頼った低音歌手が多い中で、
低音~高音まで同じ音質でしっかり繋がった声が出せる市川さんは、今後立派なヴェルディバリトンになれる可能性を感じたので、これからの活動に注目したいと思いました。

 

 

気になった歌手はこんな感じです。
全体を通しては、最近の若い男性陣は声が低くなったのか?
「日本人のバリトンはイタリアに行ったらテノールと言われる。」なんて私が学生の頃は言われていて、今はバリトンに戻ってますけど、学生時代にテノールに転向した、又吉秀樹氏なんかはその典型例だったんですよね。
ですが、今回のコンクールを聴いた限り、欧米人にも劣らない太さの低声の方もいらっしゃいましたし、日本人男性の声が低くなってる?ような気がしました。
それと併せてテノール陣は今年特に少なかった印象。

今の若手テノール事情が知りたいので、本来であれば音大生の演奏会とかも足運びたいんだよなぁ。

 

コンクールのレベルが上がるのは良いことではあるのですが、
そもそもコンクールって、本質的に若手が更に研鑽を積むための賞金や、舞台経験を積むための演奏会出演、留学支援なんかが目的であるべきなので、すでにプロとして十分に活動してる人が出場するということには正直違和感がある。
このコンクールの存在意義は、NHKという公共電波によって知名度を上げられることだけになってはいないだろうか?

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