実家に戻って、滑り込みでニューイヤーを視聴してきました。
実は、昨年末に父親が他界しまして、実家の整理のため最近は頻繁に実家に戻っているので、事情が事情なだけにゆっくり視聴するという訳にはいかなかったのですが、それでもニュイーイヤーをようやく聴くことができたので、感想を楽しみにしてくれている方がいらっしゃることからも、改めて感想を書くことにしました。
今回は聴きながらメモを取っていた訳ではないので、今までより簡素なものになることを、まずご了承ください。
それでは以下から感想になりますが、
各歌手のファンの方にとっては、不快な表現が含まれている可能性があることをご了承の上お読みください。
「椿姫」 から乾杯の歌
●テノール:錦織健
デビュー40周年ということと、NHKの番組にも関わっていることから、
ある意味特別枠での出演なのではないかと思いました。
きれいな鼻声で、最近は本人テノールもこういう声少なくなったなぁ。としみじみ聴かせて頂きました。
●ソプラノ:高野百合絵
声は嫌いじゃないんですよ。
日本人ソプラノに多いキンキンした感じがなく、メゾっぽい色気のある声質はどちらかと言えば好みなのですが、如何せんフレージング全くできてない。
子音で支えが抜けたようにフワフワした旋律線になってしまっているため、
ヴェルディ初期~中期のように、オケが簡素な伴奏になっている曲ほど演奏に推進力を与えるにはフレージングが大事になるが、そこが腰砕けになっているので演奏が締まらない。
逆を言えば、ちょっと発音とフレージングを変われば、一気に演奏の質が上がる可能性はあると思う。
●バリトン:池内響
「ドン・ジョヴァンニ」 から酒の歌
良い声なのはわかる。
この曲は声の良さと、リズム感が命!
という方もいらっしゃると思いますし、そういった楽しみ方を否定するつもりはありませんが、私はどうしても喉声に聴こえて聴いててきつい。
喉声になっていると、このアリアの最後の歌詞
「D’una decina Devi aumentar!」の”du”で伸ばす音がとても硬くなる。
上記の動画ではちょうど1:00の部分。
この声の質については、以下URLに貼ったライモンディの演奏と比較して頂けるとよくわかると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=3WPeNik5nQU
●メゾソプラノ 山際きみ佳
「フィガロの結婚」 から「恋とはどんなものかしら」
過去に聴いた時は、特に悪い印象を持っていなかったのですが、
今回聴いてちょっとよろしくないなという印象が強く残ってしまった。
下あごに力が入ったような、とても不自然に作った感じの声の上に、
この曲は、モーツァルトの作品としては転調が多い曲。
少年の感情がコロコロ変わるのを表すように転調するのですが、どっかで音程おかしかった気がしたのと、感情と呼吸は連動するものなのだが、転調に対して呼吸のスピード感が変わることがなく、ただ淡々と無味乾燥な演奏をされてしまうと、歌わされてる感がこっちに伝わってきて、聴いてるこっちがハラハラしてしまう。
●ソプラノ:小川栞奈
「魔笛」 から「復讐の心は地獄のように胸に燃え」
前回の記事では、過去の動画の彼女の演奏を引っ張ってかなり危険な歌唱であると書きましたが、今年のニューイヤーでは、過去のYOUTUBEに残ってる演奏と比較するとかなり良くなっていると思いました。
まず、過去の音源と比較して発音がかなりしっかりできていることと、鼻に入る頻度が減った。
最近の歌手は、あまりドイツ語の語尾の”R”は巻き舌しない人が多いのですが、
小川氏は無難に巻き舌をしていた。
推測にはなりますが、「メァ」と発音するより「メール」(巻き舌)とした方が口が横に開かず、深い響きを維持し易いというのがあるので、コレは個人的に良い選択だと思った。
●バリトン:大西宇宙
「セビリアの理髪師」 から「私は町のなんでも屋」
もう上手いことはある程度予測できており、フィガロのアリアは何度も聴いていることから、あまりちゃんと聴いていなかったので割愛
●メゾソプラノ:加藤のぞみ
「カルメン」 からハバネラ
動画は5年以上前のものですが、演奏としてはあまりニュイーイヤーとかわらないか、
演奏や録音の環境もあるのかもしれませんが、動画の演奏の方がカルメンとしては好みかな?と言うのも、フォームや声の響きが低音~高音まで安定していて、歌手としてのレベルの高さはわかったのですが、カルメンという役はそこにプラスαが求められる。
なんかテンプレートの演奏という気がして、声は良いのだけど、この曲歌うならもっと聴衆が「お!?」と思う何かが欲しい。
これくらい安定した声でむしろケルビーノ歌って欲しかったかも。
「メリー・ウィドウ」 から「唇は黙して」
●ソプラノ:伊藤晴
とにかく中低音のレガートができてないので、何がやりたいのかよくわからないまま終わった印象。
高音の響きには魅力があるものの、この演目では彼女の良さは出なかったのが残念。
●バリトン:黒田祐貴
発声が錦織氏に似てる・・・無茶靴屋鼻声で驚いた。
ただ、曲の雰囲気作りは上手くて、オペレッタならまぁこういうのもありなのか?
とは思えた。
●テノール:笛田博昭
「道化師」 から「衣装をつけろ」
日本人のテノールがこの曲を歌いだすと、そろそろキャリアの終盤かな?
と思ってしまうのは偏見だろうか。
この曲は爆発的なフォルテに持っていくまではピアノで歌わないと演奏効果が全然引き立たないのだが、まぁ大半のテノールはセンプレフォルテで歌う。
デル・モナコを目指してデナイ・モナコにならないことを願う。
●ソプラノ:森麻季
「タイス」 からタイスの死 」
どんな演奏になるか大体想像がついたので、飛ばしました。
森氏の発声でタイースはない。この役は結構ドラマティックな役で、軽いソプラノがそもそも歌う曲ではない。
「愛の妙薬」 からネモリーノとドゥルカマーラの二重唱
●テノール:工藤和真
レチタティーヴォで歌い過ぎ、
重唱に入ってからは、上行音型でクレッシェンド、下行音型でディミヌエンドという、とても親切に設計されたフレージングが一切守られず、
制限速度が30Kmの道路だろうが、60kmの道路だろうが常時60km走行する車みたいな演奏。
ベルカント物ってこういうのだっけ?と新たなベルカントオペラの境地を見た。
●バス:平野和
先日の記事で書いたのと全く同じ感想でした。
声は良いけど硬い。
特に気になったのは、「che」みたいな発音で、イタリア語はドイツ語みたく「k」を立ててはいけないところ、子音が立ち過ぎているように聴こえてそれが余計に硬さを印象づけたように思った。
ソロの演奏をじっくり聴いてみたかった。
●メゾソプラノ山下裕賀
「チェレネントラ」 から「不安と涙のうちに生まれ」
今回のコンサートで一番完成度の高い演奏だと思ったのが山下氏でした。
まず、アジリタ(転がるように演奏する技術)の質がとても高い。
YOUTUBEにあって高評価がも多い Frederica von Stadeより全然アジリタの質は良いと思う。
声楽を学ぶと、「耳の後ろ辺りで息を回す」のような指導をされることがあるのですが、
彼女はアジリタが喉に引っかからず、響きが浅くならない良いポイントで処理できているのが素晴らしい。
一方で気になるのは、”i”母音や”e”母音で浅くなることがあることで、急に響きの質がかわるので、他が上手くハマっている分、ブレると目立つという感じなので、総じて低音~高音まで安定していて、ロッシーニの様式感を踏襲した良い演奏をされていたと思いました。
特別企画 「オペラ座の怪人」から
●ソプラノ:森野美咲
バリトン:大西宇宙
森野氏、低音と高音で質が違い過ぎて・・・と思う一方で、
ミュージカルだからこういう歌い方なのか?とも思うし、詳しい分野ではないだけに演奏の良し悪しの判断は保留
個人的には、彼女にこそメリー・ウィドウやって欲しかった。
「トゥーランドット」から
●テノール 宮里直樹
数年前と比べて高音がちょっとキツそうに聴こえた。
フレーズの終わりに支えを緩めた時に、激しい呼気音が聞こえることがあり、
圧力に頼った声の出し方になっている気がして気になりました。
私は彼の演奏を何度か聴いて、こういったスピントな役より、それこそネモリーノのような、リリックな喜劇でこそ良さが出ると考えているので、どうか声を損なわないレパートリー選びをして頂きたい。
●ソプラノ:中村恵理
中低音でのピアノでの響きの豊かさは他のソプラノとは比較にならないレベルで良かったのですが、如何せん声が揺れる。
それだけ口が開くのは才能だと思うが、いくらなんでも開けすぎでは?
と彼女の歌唱を見ていると思ってします。
リューでは、ピーンとオケに溶けていくような真っすぐで硬質な高音のピアノができないと満足感は薄れてしまう。
●ソプラノ:田崎尚美
どうしてこうなった?
年々下手になっていく気がするのは私だけだろうか。
舌が引っ込んでまともに発音できなくなっていて、最後の”こうもり”で出演者全員が歌った中で、
田崎氏の口が全く回ってなくて、これはマジでやばいだろ!と思った。
5年前の彼女に戻ってくれ。
流し聴きだったので、一言しか書けないかな?
と思ったら、案外演奏覚えてるもので、それなりのボリュームになったかな?と思いますので、リクエストには応えられたかなと思います。
最後に一言、
トゥーランドット、あらすじを朗読していたウエンツ 瑛士氏の声が一番良かった。
彼の話すポジション、無茶苦茶良かったんですよね。
あそこで歌えたら理想的なんだけどなぁ。
とは言え、今年のニューイヤーは例年よりキャストも攻めていたし、悪くなかったのではないでしょうか?
今後も若手を中心にキャスティングして欲しい。というのが私の意見です。
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