オペラ雑誌「オペルンヴェルト」が「オブ・ザ・イヤー2021/2022」を発表し
フランクフルトが総なめにしているというニュースがでていました。
そこで最優秀歌手に選出されたのが、Vera Lotte Boecker(ヴェラ ロッテ ベッカー)
という歌手でした。
2年以上前の映像しかYOUTUBEにはなかったので、今はもしかしたらこれ以上に上手くなっているのかもしれませんし、確かに表現力に富んだ、声に頼らない歌の上手い歌手だとは思いますが、如何せんこの動画しかないので、ちょっと判断が難しい部分がありました。
気になるところとしては、時々鼻に掛かることと、響きのポイントがやや低い。
これはオペレッタではない作品を歌うともう少し違う歌い方をする可能性もありますし、そういう意味でこの動画だけで彼女の実力はわからないと思って判断を保留しました。
さて、そこで同じフランクフルトオペラに所属するソプラノで私が注目したのが、
タイトルにしたFlorina Ilie(フロリーナ イリー)です。
透き通った高音を出すソプラノは沢山いますが、
イリーは中低音もくすむことなく透明感が失われない。
ヘンデル Lascia ch’io pianga
自在に装飾音を操りながらも、それをひけらかすのではなく、
常に滑らかなレガートと言葉が蔑ろにされることなく、響きのポイント、母音の音質も崩れない。
この演奏は、2021年のフランクフルトでの演奏ということで、今年のものではありませんが、
こういう歌唱ほど、大半の日本人ソプラノ歌手は参考にして欲しいなと個人的には思ってしまいます。
良い歌を歌うのに、声量とか音圧とかは二の次で良いじゃないか!
と思えてこないでしょうか?
勿論、ドラマティックな表現は熱狂を誘発しますし、それがオペラの醍醐味でもあることは否定しませんが、それは歌が上手いことととは同義ではないです。
以下は、2017年、まだウィーンの音楽大学所属時代の演奏のようです。
モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ 」 Non mi dir
17歳でオペラデビューをしたとプロフィールにあったのですが、
そのキャリアも納得の歌唱!
恐らく25歳前後の年齢の時だと思いますが、これだけ完璧に歌われるとむしろ、もうちょっと崩れてほしい(笑)
器楽では顔色一つ変えずに超絶技巧を淡々とこなす奏者を「機械的」と揶揄することがありますが、この人もちょっと完璧過ぎて、逆に感情の起伏が見えないという意味で、面白い演奏ではないかもしれません。
ここにどうドラマを込めていけるかが、今後の彼女の課題になるのかもしれませんが、
ちょっと技術的には重箱の隅をつつくこともできない位完成度が高いので、私も書くことがありません/(^o^)\
最後に、今年のリゴレットの映像も断片がありました。
流石に表彰されるだけあって、全体のキャストのレベルも高いですが、
それでもイリーの響きの質は他の歌手と比較して頭1つ、2つ抜けていますね。
これは現在最高のリリコ・レッジェーロソプラノの一人と言ってしまっても良いレベルで上手いと私は思うのですが、皆様はどう感じられましたでしょうか?
よろしければイリーについての感想なんかを書き込んで頂ければ幸いです。
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