Julien Henric 出身が分からないのですが、リヨン音楽院を出たということなので、フランスの方でしたら、読み方はジュリアン アンリクになるのでしょうか?
この方は、デビューしてからあっという間に、リセウ劇場で歌うまでにスター街道を驀進しているテノール歌手で、レパートリーもモーツァルトのイタリア語、ドイツ語作品、まだ脇役ながらもRシュトラウスの作品、椿姫のアルフレードのような若手リリコが歌う役を歌っており、コンサート歌手としても「詩人の恋」や「冬の旅」などを既に歌っているとのこと。
モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ Un’ aura amorosa
モーツァルトを歌うには太めな声ではありますが、
ブレスコトロールが見事で、フレージングやディナーミクの完成度が非常に高い。
若くしてこれだけしっかりした発声技術を身に着けている歌手は滅多にいませんので、
Benjamin Bernheim級の逸材かもしれません。
レハール ほほえみの国 Dein ist mein ganzes Herz
因みに、この演奏が2019年の10月の演奏で、明らかにモーツァルトを歌っている冒頭に紹介した演奏の方が上手い。
そして
この演奏が、2021年11月
冒頭の演奏も2021年でしたが、2年でこれ程成長するとは、やはり声楽の技術というのは日々の鍛錬で少しずつ上手くなる部分よりも、何か一つコツを掴むと別物のように見違える(聴き違える)声になる部分があって、プロフィールを見ると、著名な歌手のマスタークラスをかなり受けているので、その影響があるのかもしれません。
エンリクが指導を受けた歌手は
Anaïk Morel
Daniel Lichti
Roberto Scandiuzzi
Ruggero Raimondi
なんとテノール歌手には全然習っていないみたいです!!
どうりて中低音の響きが充実していると思ったら、素晴らしいバス、バリトン歌手に習っていたからなのでしょうね。
Daniel Lichtiは恥ずかしながら知りませんでしたが、丁寧な歌唱をする歌手で、
スカンディウッツィもライモンディも声に頼った歌唱をしない、優れた発声技術と節回しの巧さで、本当に魅力的な歌唱ができる歌手ですから、
アンリクの持っている声は、かなりドラマティックなテノールをやれるだけの、所謂メロッキ派と呼ばれるマルティヌッチやチェッケリ、ジパーリといった歌手のようにもなれる可能性があると思うのですが、マスタークラスを受けている歌手のタイプから考えるに、
彼はあまりアクートで熱狂させるような歌唱を目指していないように思えます。
彼の楽器の研ぎ澄まされた高音を聴いてみたい気もしますが、
目指している方向性は、ニコライ・ゲッダのような、何でも器用に歌える歌手なのかもしれません。
何にしても、高音をフォルテで出す時には、まだ押した感じがあって、所謂おっと喉の開いた声になって欲しいところではありますが、
若くして中低音の音質が充実していますので、このまま上まで繋がっていくと、歳を重ねればリリコ・スピント~ドラマティックな役まで歌えるようになると思いますので、
声は勿論ですが、どのようなレパートリーを中心に歌っていくのかも今後要注目なテノール歌手です。
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