Sara Jakubiak(サラ ヤクビアク)はドイツのソプラノ歌手。
Online Merkerというドイツの文化系Webサイトでは下記のように絶賛されています。
原文
「Frau Jakubiak verfügt über einen herrlich expansionsfähigen, glanzvoll jugendlich dramatischen Sopran, eine luxuriöse, wandelbare, mit unendlichen Farben gesegnete Stimme, wie sie nur alle zwanzig Jahre einmal auftaucht」
「ヤクビアクはとても広がりのある声を持った華やかな若手ドラマティックソプラノ。20年に1人しか現れないような、豊かで変幻自在で多彩な音色を備えた歌声である。」
2018年~の活躍が目覚ましく、キリル ペトレンコやティーレマンといった指揮者の下で、魔弾の射手のアガーテ、マイスタージンガーのエーファといった役で成功を収め、
その後もコルンゴルトの死の都のマリー、ローエングリンのエルザといったドイツオペラのリリコとドラマティコの間にあるような役柄で存在感を示しており、
現在を代表する正統派ドイツ系リリコに違いない!
と説明を読んだら思うことでしょう。
コルンゴルトのオペラは死の都以外マイナーで、私も歌曲はともかく、オペラは全然知りませんでした。
このヘリアーネの奇跡は死の都よりも映画音楽的で馴染みやすさは感じますが、全体を通して聴いたらどうなんでしょうね。。。
それはともかく、ヤクビアクの歌唱ですが、
う~ん、この演奏では「20年に一人の逸材」とはちょっと思えないですね。
まず高音を弱音でだす時の透明感や響きの豊かさは素晴らしいのですが、
クレッシェンドすると押してしまうと言うのか、悪い意味で広がってしまう。
響きの密度が散って、声揺れてしまうし、低音その悪い部分が顕著になってしまう。
持っている声は魅力的なのですが、米国系のソプラノのような癖があるのは個人的には耳につきますね。
テノール Aleš Briscein
ドイツ系のヘルデンテノールはフォークト化が進んでいるのでしょうか。
ヘルデンとは言えない軽さと明るさの歌手が、普通にパウールのような本来強い声で高音も出るような歌手が歌う役を歌うようになりました。
このAleš Brisceinという人はチェコ人だそうですが、チェコの歌手は一般的にドイツ系の歌手として扱われることが多いですからね。
ヤクビアクは発音がやっぱり奥ですね。
なので、後の頭の音が決まらずに、殆どの音が後から膨らませるような、
声質自体は真っすぐなのに、歌い方が真っすぐではないことに違和感を覚えてしまいます。
ヤクビアクと同じような役柄を得意としていて、現在世界でもトップクラスのソプラノとしては、Camilla Nylundなんかが似たタイプの声かと思いますが、
比較してみると、まだまだニュルンドとはかなりの差があるように感じます。
Camilla Nylund
ニュルンドとアクビアクの違いは何かを考えると、
やっぱりニュルンドの声や発音には癖がなく真っすぐに飛ぶ印象を持つと思います。
真っすぐに飛ぶ声と言うと、前に響きを集めたりとか、高いポジションを狙って声を出したりとかを想像するかもしれませんが、実際はその逆とさへ言って良いのではないかと思います。
前に響かせようとか、飛ばそうとすればする程喉には負荷が掛かってしまい、結果として硬さが出たり、あるいは逆に詰まった声になってしまったりする。
あるいは、息の量を必要以上に出し過ぎてブレスが極端に短くなったり、響きが散ったりする。
私の感覚としては、アクビアクは息の量が多すぎる方だと思うのですが、
歌い出しの音の息の量のまま維持できれば良いのですが、そこから諒を増やして息を吐き過ぎる、これが押した声になって不自然に後から声を膨らませるような状況になっていると推測できるのです。
ニュルンドはそれが出来ていて、
歌い出した音の息の量から太くせずに歌い続けているため、
声量としては大きく聴こえなくても、癖がなくて自然に伸びる美しさがあります。
彼女もサロメなんか歌った時には、声量が足りない。とか書かれているのを見た記憶がありますが、恐らく前の方の席で聴くと、この類の歌手は小さい声に聴こえてオケにかき消されているように思えるのでしょう。
しかし、後ろの方へはしっかり低音でも飛びます。
こちらは2013年以前の、死の都や、ヘリアーネの奇跡の演奏と比べてかなり古いものですが、
声の変化はあまり感じません。
この人本当にドイツ人なんだよな?
と思わず調べ直してしまう位、英語作品の方が合っている。
やっぱりヤクビアクの発音のポイントが、ドイツ語より英語の方が効果的に聴こえるのではないかと思ってしまうのです。
横に平べったいとはちょっと違うのですが、”i”のように、本来顔の前で明るく鳴る母音まで、喉の奥で被せたような鳴り方で、微妙に揺れてしまっている。
そんな訳で私にはどーしても、そこまで評価されている理由がわかりません。
まだ音源があまりYOUTUBE上に少ないので、本当は素晴らしい演奏の時もあるのかもしれません。
それでも、来年のベルリンドイツオペラで、タンホイザーのエリーザベトとヴェーヌス両方を歌うような素質を持った歌手とは、残っている音源からは到底思えない訳ですね。
そして気がかりなのは、正確な年齢は不明ながらも、2011年~2019年までで殆ど声が変わっていないこと。
ロシア物の歌曲だと思うのですが、曲名がわかりません。
これが2011年頃です。
ここから成長が見られれば期待もできるのですが、ずっと同じ品質を維持し続けている感じがなんとも言えません。
今後更に重い役を歌うようになっていったら、悪くなることはあっても上手くなることはないのではないかと思うと、この予期せぬ活動休止期間中がフォームを見直すきっかけになればと願うばかりです。
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