At-Home Gala
(Metropolitan Opera, 2020)
今年4月の催しのようですが、恥ずかしながらこんなのやってたのは初めて知りました。
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世界各国から、超有名歌手が勢ぞろいで各自がそれぞれの場所で演奏を披露し、演奏が終わったら次の歌手を紹介していく。という流れで進行していきます。
舞台とは違って、自分の好きなように演奏できる状況を利用して、普段とは違うアドリブがあったりして中々面白いです。
ノリノリのアラーニャが微笑ましい。
そして、もういい歳になったとは言え、前に声が飛んでいるアラーニャと、
強い声を出せば出すほど詰まるカウフマンの差には正直驚きました。
色々ありましたが、出演している他のテノールと比較してもアラーニャの持ってる声は衰えてなお一流だなと再認識させられます。
女声陣では、恐らく知名度はここで出演する歌手の中では低い方ですが、
やっぱりエリン・モーリーは良いですね。
歌は勿論、ピアノも無茶苦茶上手い上にお茶目なので、こういう演奏会では最強です。
彼女のような歌手は、ホームライヴ配信だけでもやっていけるのではないかと思えてしまいます。
一方残念なのはガランチャ。
ロッシーニを歌っていた時のキラキラした声はどこへいってしまったのか?
ドスが効いたカルメンの声を作ってはいるが、元の声にそこまでの太さがないので、カルメンという役の強い個性は出ずに、カルメンになろうと背伸びする娘のよう。
それにしても、こういう有名歌手のライヴを聴いていて非常に気になるのは日本の伴奏ピアニストと、こういう一流歌手の伴奏をしているピアニストや指揮者のペダルの使い方。
この映像で伴奏を弾いている人の殆どが、軽くしかペダルを踏まないのに比べて、日本の伴奏者の多くはもっとペダルを踏む人が多く、
特にヴェルディのアリアの伴奏の違いは顕著な気がします。
日本人伴奏者がヴェルディのアリアの伴奏弾くとこんな感じ
鍵盤を押し込むような感じで、その上ペダルも深いのでイタリアオペラの伴奏に必要なカラっとした音にならず、殆ど濁ってるんですよね。
一流歌手が揃った演奏会なので、当然歌手に耳が行き勝ちですが、
こういった著名な歌手の伴奏をしているようなピアニストも、当然素晴らしい伴奏ピアニストが揃っている訳なので、是非伴奏にも注目して頂きたいと思います。
歌に戻りまして、
個人的に一番ショックを受けたのはダムラウ。
喋ってる声からして変に詰まってて、歌ってもやっぱり野太い。
その上声が揺れている訳で、もう酷いとしか言いようがありません。
ステロイドを使って無理にヴィオレッタを歌い続けた結果がコレとは哀し過ぎる。
このコンサートで全体的にレベルが高かった声種がバスというのがまた意外で、パーペ、アブドラザコフ、グロイスベックと安定して上手かったですね。
中でもアブドラは、ラフマニノフの歌曲を歌いましたが、
ロシア系の歌手が激しいラフマの歌曲を歌ったら、間違えなく力で押したような声になるのですが、アブドラは暗めの音色ながらも、イタリア人歌手のような開放感のある響きで歌えていて、流石はバスの皇帝の異名を持つだけのことはあります。
舞台とは違って、各歌手の歌い方がよく観察できるので、そういう意味でも一度見る価値のある演奏会だと思いますので、今回は紹介することにしました。
いつも楽しく拝見しています。世界の有名歌手と並んで、伴奏の例とはいえ、私の好きな甲斐さんの映像をアップしてくださりありがとうございました。甲斐さんの歌唱に対するYuyaさんのご意見を伺えれば幸いです。
のりしんさん
メッセージありがとうございます。
甲斐さんは、日本人のバリトンとしては数少ないしっかりした響きで歌える方だと思います。
ただレパートリーとしては、ヴェルディよりモーツァルトを歌った時の方が自然な声で好きですね。
ヴェルディやヴェリズモ作品を歌うと、必要以上に圧力を掛けて歌っているように聴こえますし、
同じ演奏会で歌っている「ドン・カルロス」のアリアを聴くとよくわかるのですが、
高音を出す時に、どうしても下からしゃくり上げるようなに出す癖があります。
そういう意味でも、ヴェルディよりもっと力を抜いて歌えるレパートリーを個人的には歌って頂きたいです。
Yuyaさん、
コメント有り難うございます。
私などは、Yuyaさんの仰る”高音のずり上げ”が好きです。軽々と高音を出すバリトンなぞ、バリトンやないと思ってしまいます。
話は変わりますが、今朝NHKのBSプレミアムで放送された、二期会ゴールデンコンサートの初日を観ましたが、予想してたとは言え、響きが上に上がっていない人ばかりでほとんどパスしました
のりしんさん
バリトンの高音のずり上げについては、高音が楽に出るヌッチもよくやりますから、
高音が得意かどうかとはあまり関係ないような気がします。
曲によっては効果的なんですけど、「ロドリーゴの死」みたいな曲は、やっぱりスパっと入ってくれた方が個人的には好きです。
二期会ゴールデンコンサート
8/3のキャストを見た限り、一番上手いのは恐らくバリトンの加耒 徹さんでしょうね。
のりしんのように、ちゃんとした声が聴き分けられる方には、
このようなコンサートを聴くと、第一声を聴いただけで大抵の歌手が「あちゃ~」となってしまうのではないかと・・・。
すみません、ステロイド使用について詳しく教えていただけますか?どういう時にどう使用してどうなる、とか、使用の功罪とか。
ゴンタさん
メッセージありがとうございます。
回答させて頂きます。
①どういう時どう使用するか?
一般的には治療の時に吸入などで使うのですが、
例えば大切な本番前に風邪をひいてしまって声が出ない。
というような時に、一時的に無理の効く喉にするために筋肉注射が使われます。
②どうなる
抗炎症作用
傷み止め
声が鳴りやすくなるような感覚もあるようです。
③使用の功罪
功については②にあたると思いますので、
副作用についてということで言えば、免疫力の低下や、高血圧、眼圧の上昇といったことが色々な記事に書かれていますが、
声楽で言えば声が低くなる。というのがあります。
ステロイドを常用した歌手は、大抵の場合声が太くなって不自然に重くなります。
筋肉が硬直していったり、ホルモンバランスが崩れたり要因は色々あるようですが、
本来その人が持っている自然な声を失ってしまう。というのが私の考えるステロイドの最大の問題点です。
以上のような感じで回答になっておりますでしょうか。
私は実際にステロイドを常用した経験はありませんので、実体験に基づくものではありませんが。、
私自身が声帯の炎症の治療時に使用した吸入用のステロイドで、声帯運動障害(左右の声帯振動比が狂ってちゃんと声が出せない状態)になった経験がありましたので、ステロイドが体質に合わない人には、本当に声を失う危険性がある。ということは間違えないです。