Salzburger Festspiele 2020 26-08-2020 Elina Garanca – Wesendonck Lieder

今年のザルツブルク音楽祭で、現在最も有名なメゾソプラノ歌手の一人である、Elina Garancaが歌ったヴェーゼンドンクの詩による歌曲がアップされました。

 

 

 

Elina Garanca – Wesendonck Lieder

 

ヴェーゼンドンクリーダーの歌詞についてはコチラを参照ください。

 

ガランチャが優れた歌手であるという前提でこの演奏を見ていきますと、
個人的には、ドイツ語を歌うにしては響きが奥過ぎるのが気になるところで、
それは特に母音の歌い方に原因があるように思います。

まず発音がはっきりしない。
これは、ドイツ語だから子音の立て方が・・・とかは勿論あるのですが、
それ以前に母音が殆ど曖昧な響きであることがまず挙げられます。

原因としては、メゾソプラノなのに五線の真ん中のCより下の方になると響きが落ちる。
今まで散々カルメンや、ドン・カルロのエボリ、サムソンとダリラのダリラといった声に合わない役を歌ってきたがためでしょうか、中低音を不自然に太く歌うことはできても、自然に響かせることができていない。

3曲目のIm Treibhaus(温室にて  7:20~)
なんかを聴くと顕著ですが、低い音域と、比較的高い音域をピアノで歌う時では、
後者の方が明らかに素晴らしい音質で、中低音は声も揺れていて全体的にレガートで歌えていないので、声だけ切り取れば美しい部分はあるのですが、歌としての魅力は全然ありません。

 

 

伝説的なワーグナーソプラノ、フラグスタートのこの曲の歌唱を聴くと、
ガランチャの歌唱の問題点が明確に見えてきます。

 

 

 

Kirsten Flagstad Im Treibhaus

注目して頂きたいのは、声や響きではなく、母音です。
ガランチャの一番の問題点は、音符の中で母音を維持している時間がフラグスタートに比べて明らかに短いこと。
つまり音と音が繋がらずレガートにならないし、言葉のリズム感も出ないので、同じ音で歌うような部分は特に細切れ状態になってしまいます。
これが子音以上に母音が大事と書いた理由です。

 

 

 

今から19年前の2001年の演奏を聴けば、中音域の響きが若い時より現在の方が落ちていることがわかります。

 

 

響きのポジションについては、
4曲目のSchmerzen(痛み 13:55~)を聴くと下行音型、
特に”a”母音で響きが落ち易いことがわかります。

2001年の時の演奏と比較すれば顕著で、
若い時は多少硬さこそあるものの、響きのポイントは前で安定しており、
不自然に揺れることもありません。

声の揺れについては、
5曲目 Träume (夢 16:30~)を聴くとよくわかるのですが、
息の長い、ゆったりしたフレーズジングで歌わなければならない曲なので、
伸ばす音で揺れてしまっては台無しです。

 

 

 

Anna Kissjudit

ハンガリーやベルリンで歌っているアルトのKissjudit
アルトです。
オケ伴奏とピアノ伴奏の違いはありますが、
響きのポイントがKissjuditの方が全然前で、
ガランチャは高い音になると”i”母音が崩れるのですが、Kissjuditは全く崩れず、
ノビのある真っすぐな声で、伸ばしている音ではその差が特に明白です。
この二人、あるいは若いときの演奏を比較すれば、現在のガランチャの歌唱フォームがいかに崩れてしまったかが理解できると思います。

 

持っている声や技術は確かに素晴らしいのですが、
不自然に崩れてしまった一流歌手の声を聴き分けられる耳を持ってこそ、聴衆は歌手の過ちを指摘できるというものです。

いくら良い声を持っていても、レパートリーを誤ったら正しいところに引き戻してあげるために聴衆が厳しい態度をとることは、その歌手にとって確実に良いことだと私は信じています。

 

 

 

CD

 

 

2件のコメント

  • めぐみ より:

    確かに、声が聴こえたり、消えたりして、
    耳がおかしくなったかなって思っちゃいました

    母音の響きの統一ができていないと、
    こういうふうに聴こえるのですね

    • Yuya より:

      めぐみさん

      そうなんです。
      勿論録音状況やオケ伴奏ということもあると思うのですが、ガランチャは確実に響きが統一できていません。
      若い時はよかったんですけどねぇ。

      ちょっと記事では伝え難い部分もあるので、動画でも改めて解説してみようと思っていますのでお楽しみに!

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