秀逸過ぎる演奏会 シメオーニ&アローニカのデュオ リサイタル

現在を代表する若手ドラマティックメゾ、Veronica Simeoni (ヴェロニカ シメオーニ)と、実力はテノールのRoberto Aronica(ロベルト アローニカ)によるデュオリサイタルの映像です。

 

この土日は台風接近で外出できない方もいらっしゃるかと思いますが、
ぜひそんな時間を、この素晴らしい演奏会をご覧になって少しでも有意義に過ごして頂ければと思います。

 

 

Veronica Simeoni mezzosoprano | Roberto Aronica tenore | Nicoletta Mezzini pianoforte

 

CAMILLE SAINT-SAENS
da Samson et Dalila
“En ce lieux malgré moi”

JULES MASSENET
da Werther
“Oui, … c’est moi”

GIACOMO PUCCINI
da Manon Lescaut
“Intermezzo”

FRANCESCO CILEA
da Adriana Lecouvreur
“Acerba voluttà”,
“Principessa! Finalmente!”,
“L’anima ho stanca”

GIUSEPPE VERDI
da Aida
“Già i sacerdoti adunansi…”

 

2人の演奏もさることながら、プログラムがいいです。
本来この類の演奏会は、アリアを個々に歌って、所々に有名な重唱を入れる感じだと思うのですが、この演奏会では、メゾソプラノとテノールで、アリアを絡めて前後の重唱から展開する、オペラの1場面をしっかり作り上げていることで、単品でアリアを聴くのとは聴衆に全くといって良いほど違う印象を与える効果があることは特筆すべき点でしょう。

アリア単独で歌われるより、前後のドラマの流れが明快で、
この類の演奏会に有り勝ちな、とりあえずカルメンのフィナーレだけやる。
みたいなのだと、どうしてもそこへ至る緊張感がないままに最後の場面になるので、よほどの演奏でない限り聴く方は感情が付いていかない。
勿論歌う方もドラマに入り込むのは難しい。

更にアリアや重唱が上手く歌えるかどうだけが演奏の良し悪しの全てではないことを示しているのが個人的には良いなと思います。

ウェルテルなんて、有名なテノールアリア「Pourquoi me réveiller(春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか)」だけ聴いたらそこまで良い出来とは言えず、寧ろアローニカの演奏は雑に聴こえるのですが、一場面を通して聴くと、どういう流れの中にこのアリアが存在してるのかがよく分かって、そんな冷静に繊細に歌えてなくても、それが必然的に聴こえてくる。
本当はもう少し先の、シャルロッテに最後通告をされてウェルテルが死を決意するところまで歌って欲しところではありますが、アリアだけ単体で歌われるのとは印象が全然違う。

 

一方のアドリアーナはその逆で、
メゾソプラノのアリア、「Acerba voluttà( 苦い喜び 甘い責め苦を)」だけ吠え散らかして終了。
というのではなく、次に物語が続くように音楽を作らないといけないので、
アリアだけで一人気持ちよくなって、後はどーでもいい。みたいなことをしてしまったら台無し。

その辺り、シメオーニは本当に凄い。
アリアだけ聴いたら淡泊過ぎる位の演奏で、これだけの声があるならもっと声を聴かせる演奏が幾らでも出来そうなのにそうはしない。

そして極めつけは勿論アイーダ
アムネリス役は様々な役との重唱に絡んでくる主役の1人でありながら、
アリアに相当する部分がない役でもある。
広い声域と強い声を要求されながらも、独りよがりな演奏をすると舞台を台無しにするのがこの役である。

それだけにシメオーニの素晴らしさが際立つのは当然のことで、
ヴェルディの音楽はこう歌って欲しいなというのを理想的に実現していると言えるのでは?と思えるほど、自由に歌っているようでテンポ感が良く、間延びすることなくグイグイ引き込まれていく。

それには勿論優秀な伴走車も欠かせない。

ピアノのNicoletta Mezzini(ニコレッタ メッツィーニ)はボローニャを拠点にしている伴奏ピアニストのようなのですが、全体的に軽いタッチでありながら、決めるべき和音での押し込みは男性ピアニスト顔負けの力強さがあって、低音の出し方が本当に上手い。
それでいて、変に歌に遠慮して音を抑えているのではなく、当たり前のように場の空気のように溶け込む静寂も作り出せる。
本当に素晴らしい伴走車だな~と心酔してしまいました。

この演奏会は最初から最後まで弛むところがないので、休日ゆっくり鑑賞するのにお勧めです!

 

 

 

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