Teatro Massimo のガラ・コンサート

3/20にライヴ配信された Teatro Massimoのガラ・コンサートが非常にレベルの高い演奏だったので紹介しようと思います。

 

 

Gala lirico

<キャスト>

Soprano Angela Meade
Mezzosoprano Marianna Pizzolato
Tenore Enea Scala
Baritono Nicola Alaimo

 

<曲目>

Giuseppe Verdi
“Tu che le vanità” da Don Carlo
Gioachino Rossini
“Sois immobile” da Guillaume Tell
Gaetano Donizetti
“Il segreto per esser felici” da Lucrezia Borgia
Gaetano Donizetti
“Spirto gentil” da La favorita
Gioachino Rossini
“Ai capricci della sorte” da L’italiana in Algeri
Gaetano Donizetti
“Un tenero core” da Roberto Devereux
Giuseppe Verdi
“Patria oppressa” da Macbeth
Gaetano Donizetti
“Venti scudi” da L’elisir d’amore
Gioachino Rossini
“Serbami ognor sì fido” da Semiramide
Vincenzo Bellini
“Meco all’altar di Venere” da Norma
Vincenzo Bellini
“Guerra, guerra” da Norma
Giuseppe Verdi
Atto III scena iniziale e arie da Un ballo in maschera:
“Morrò ma prima in grazia”
“Eri tu”
Gioachino Rossini
“O patria… Di tanti palpiti” da Tancredi
Vincenzo Bellini
“Col sorriso d’innocenza” da Il pirata

 

 

ソプラノのAngela Meade(アンジェラ ミード)は1977年、米国生まれのソプラノ歌手。
メトロポリタン歌劇場の主催するオーディション(Metropolitan Opera National Council)に2007年に通っており、
この年は、メゾソプラノのJamie Barton、テノールのMichael Fabianoが同じ年の合格者となっているのを見ると、当たり年だったと言っても良いでしょう。
その後ミードはメトを中心にイタリアオペラのリリコより劇的な表現が求められる作品で活躍しているのですが、一方でロッシーニ作品も得意としている色んな意味でぶっ飛んでる歌手です。

 

 

 

この演奏は好き嫌いが分かれるでしょうが、凄いことは疑いようのない事実で、
発声的な面でも、米国人歌手にしては悪い癖が目立たない印象です。

こちらの演奏より、冒頭に紹介した今年の演奏の方が
高音のピアノの表現も美しいですし、やっぱりアジリタよりはヴェルディの強めな声の役を歌った方が合いますね。

発声的な面について少し書きますと、時々喉にひっかかるような感じになってしまうので、やっぱりどっか余分な圧力で押したような歌い方ではあります。
アリアではそこまで気にならないのですが、レチタティーヴォではレガートに喋るということができていないので、かなりぶつ切りに聞こえてしまいます。
ただ、鼻に入ったり絶叫になってしまうということはないですし、変なポルタメントも使わないので、中低音で響きが落ちながらも声量があって、曲全体を見ればバランスの取れた演奏ができる。といった感じでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

メゾ・ソプラノのMarianna Pizzolato(マリアンナ ピッツォラート)はイタリア生まれで、イタリアバロック作品~ロッシーニ作品を得意としており、この人の軽妙なアジリタを聴くと、なるほど、確かにロマン派オペラのコロラトゥーラとは根本的に違って面白いなと思うのですが、技術や声が凄いと言うより、喜劇の歌い回しを熟知しているなという印象を受けました。
正直声はちょっと響きが乗りきっていない感じがしますし、声が重くない割には音色が暗いので、この声は言葉が会場の後ろまで飛んでいるのかな?という疑問を持ちました。

 

 

 

 

 

 

テノールのEnea Scala(エネア スカラ)については度々取り上げてきたので細かくは書きませんが、歌い方がちょっと重くなってる気がするのがちょっと気がかり・・・ではあるのですが、35:50~のロベルト・デヴリューの二重唱は滅多に聴けない曲で、二人とも迫力のある演奏をされているので楽しめます。
最後二人でハイDも出してるしね(笑)

ただ、ミードがスカラの歌唱と比較しても押した声なのは明らかに分ると思います。
スカラも少々重く作り気味な声な気がするので、愛の妙薬なんかはネモリーノにはちょっと見えないかな。

 

 

 

Nicola Alaimo(ニコラ アライモ)は1978年イタリア生まれのバリトン歌手

父親は名バスバリトン歌手Simone Alaimoです。

 

 

Simone Alaimo

アルジェのイタリア女の重唱では父親にも負けない見事なブッファの歌い回しを披露し、
仮面舞踏会のアリアでは、中音域は荒々しく決して美しい響きではないものの、高音では勢いではなく確かな発声技術に裏打ちされた声を出していました。
決して輝かしい声の持ち主ではありませんが、センスも技術も兼ね備えた素晴らしいバリトン歌手だと思います。

あくまで個人的な感覚ですが、声や体格に似合わず中低音より高音の方が綺麗にでていて、逆に本来バリトンが出し易い音域が、詰まってはいないもののちょっとくすんだ感じがすることから、必要以上に太い声で歌っているように聴こえてしまうのが気になるところ。
とは言え、セリアもブッファも上手く歌い分けられるのは素晴らしいですね。
声がとにかく良いスカラとは対照的に、声の美しさ以外の部分で最も優れた演奏をしてたのは彼ではないかと思います。

 

 

 

 

 

2件のコメント

  • JK より:

    素晴らしいコンサートをご紹介いただき、ありがとうございます。テアトロ・マッシモに行きたくなりました。イタリア統一前は、ナポリ・シチリア王国(両シチリア王国)は北部よりも豊かであり、シチリアはヨーロッパ(ロシアも含む)の王侯貴族の避寒地でありオペラも盛んだったのであれだけ大きな劇場も必要だったのですね。今回、ソプラノを除いて三人ともシチリア出身(と言っているように聞こえました)というのもパレルモのオペラファンの心をくすぐりますね。スカーラが「デル・モナコなどが歌っていたためにポリオーネはヒロイックなテノール(ドラマティックということでしょうか)が歌うものと思われているが、元々はベルカントで歌っていた」と述べていたのに、目から鱗が落ちました。カラスやデル・モナコは私も大好きですが、そうした大歌手のせいで、色々な役柄が必要以上にドラマチックに(力みすぎ)に歌われているのでは、と感じました。

    • Yuya より:

      JKさん

      全く仰る通りだと思います。
      ノルマは特にそうで、カラスがベルカントにヴェリズモ的な表現を持ち込んだと言われています。

      椿姫が当初あまり評価されてなかった理由も、当時幕ごとに違うキャラクターが求められるオペラというだけで、どちらかと言えば構成的なミスと受け止められていたのかもしれませんね。
      私は今でも1幕のアリアだけやたら超絶技巧が求められるのには違和感を感じてる人間なんですけど(笑)

      それはともかく、聴衆が濃い味付けの表現に慣れてしまい、薄味には満足しなくなってしまったので、ベルカント物が劇的に歌われる傾向が強くなった。というのが個人的に支持してる考え方です。
      最終的に歌を評価するのは聴衆ですからね。

      シチリアと聞いて、Enea Scalaの声を初めて聴いた時はディ・ステファノを彷彿とさせる圧倒的な美声だなと思いました。
      土地と声には何か関係があるのでしょうかね?
      シチリア訛りというのがあると聞きますけど、美声と関係あるのかな・・・。

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