Teatro Massimo di Palermo ヴェルディ エルナーニ

ライヴストリーミングでYOUTUBEにアップされたTeatro Massimo di Palermoで、
ヴェルディ作曲 エルナーニが中々良い演奏なので紹介しようと思います。

 

 

Giuseppe Verdi – Ernani

 

<キャスト>

Elvira Eleonora Buratto
Ernani Giorgio Berrugi
Don Carlo Simone Piazzola
Silva Michele Pertusi
Giovanna Irene Savignano
Don Riccardo Carlo Bosi
Jago Andrea Pellegrini
Direttore Omer Meir Wellber

 

 

主役のテノールとソプラノ二人が、技術は勿論、若さと勢いがあって聴きごたえ十分で、
まだオケが伴奏に徹しているヴェルディ初期~中期オペラはこういう演奏をして欲しいな~。と思わせてくれる、近年あまり聴けなないスカっとするイタリアオペラの醍醐味を味わえる出来だと思います。

指揮をした、ウェルバーも1981年生まれと若く、
イスラエル生まれの指揮者ではありますがイタリアオペラの指揮に慣れている様子。
全体的に速めのテンポでありながらも、オケの鳴らし方は決して古楽的な軽くカラっとした音色ではなく、かなりずっしりとしている。
にも拘わらず重々しくくなることがないし、アリアでのリズムの出し方も本当に上手い。
ほとんど歌手が勝手なテンポ感で歌うような場面はなく、カッチリしていながあらも決してメトロノームのような味気なくリズムを刻むような演奏になっていない。

 

では、主役二人の歌手を中心に少し詳しく聴いてみましょう。

Eleonora Burattoは1982年イタリア生まれのソプラノ歌手。
どうやらパヴァロッティの弟子のようです。

彼女は若くしてリッカルド・ムーティに見いだされて活躍の場を広げていった歌手のようで、209年にムーティの元でザルツブルク音楽祭に出演したのをきっかけに、その後も米国や来日公演にも同行しています。

2014年のシモン・ボッカネグラでバルバラ・フリットーリの代役を歌ったのが、まさに彼女でした。

 

 

 

プッチーニ 蝶々夫人 Un bel dì vedremo

独特な声ではありますが、滑らかで気品のある響きは劇的な役を歌うのにピッタリな声ですね。
ただ、あまりイタリア人でこういう声は聴いたことがない。

良くも悪くも前にカンカン当たる感じの声が好まれる傾向にあって、
少なくともフレーニはそういう指導をしていました。

しかし、ブッラットはパヴァロッティに習っている・・・ということを考えるとこの声は興味深く、高いポジションに当てる感じ、前に響きを集める感じではなく、ゆったりした息の流れの上で歌っている感じで、発音のポイントが少し奥まって不明瞭になることはありますが、ディナーミクがとても自然で、技術的が前面に出てこない。

高音のピアノなんかでも、美しいピアノを出すということと、その役の歌詞としてピアノで歌うことは同義ではありませんので、いい声でも曲の表現からは浮いて聴こえてしまうような演奏も聴かれたりするものですが、ブッラットはそんなところがない。

 

 

プッチーニ ラ・ボエーム Sì, mi chiamano Mimì

この演奏なんかはブッラットの特徴が良く現れているでしょう。
1曲を通してミミの呼吸なんですよね。

高音のフォルテやピアノでミミという役の皮を脱ぎ据えて自分が出て来てしまう歌手が如何に多いことか。
ブッラットはミミとしての表現の範疇でコントロールできる声を駆使して歌っているので、あまり面白い演奏とは感じない方もいるかもしれませんが、そのスーっと入ってくる自然さこそが彼女の歌唱の最大の特徴だと私は感じています。
繰り返しになりますが、発音のポイントはもう少し前に欲しいところではありますけどね。

今年のスカラ座公演のCosi fan tutteで、フィオルディリージを歌っている映像もあるので、興味のある方はそちらもご覧になってみてください。

 

 

 

Giorgio Berrugiは1977年イタリア生まれのテノール歌手。
もともとはローマ交響楽団でクラリネット奏者をしていましたが、2007年にテノール歌手としてデビューしています。

 

クラリネット奏者だった時の演奏もYOUTUBEにはあります。

 

 

 

 

どうもスカラ座の研修所で、Carlo Melicianiというバリトン歌手に習っていたようです。

 

Carlo Meliciani,

その後はフランシスコ・アライサに習い、

以後はイタリアやドイツの劇場で、リリコ~リリコ。スピントの役を歌って活躍し、2015年にはサントリーホール オペラで来日もしていますが、
愛の妙薬のネモリーノや、ドン・ジョヴァンニにオッターヴィオといったレッジェーロの役も歌っています。

 

 

 

ドニゼッティ 愛の妙薬 Una furtiva lagrima

明らかに声には合っておらず、繊細に歌わないといけない五線の上のFより上の音が常にフォルテですし、このアリアを歌う上では正直硬めの強い響きはマイナスなのですが、それでも変なことをせずに歌えているという部分は立派だと思います。
8・9割のテノールが歌ったことあるんじゃないか?と思われるこのアリアは、やっぱりそれだけ様々な声楽的な技術を駆使しないとちゃんと歌えない曲で、テノールの力量を計るのには最適です。

 

 

 

ヴェルディ 仮面舞踏会 Ma se m’è forza perderti

少々押し込み気味の声がプラスに作用するのがこういう曲。
歌っている年代はどちらも2012年のドイツ、ゼンパーオーパーです。
こういう比較をすると、いかにレパートリー選びが重要かが伝わるかと思いますが、

声に合う曲を歌うのが必ずしも声にとって良い訳ではなくて、
有名な話では、イゾルデを歌った後に、舞台裏で夜の女王のアリアを歌っていたというニルソンとかいう化け物ソプラノの逸話が残っているのですが、
重く強い声だからそういう曲ばっかり歌えば良いかと言えばそうではないので、
軽い曲で声をリフレッシュする作業も必要だと言います。

ベッルーギの歌っているレパートリーを見ると、カルメンのホセやトスカのカヴァラドッシのような役と平行して、椿姫のアルフレードやボエームのロドルフォのような役も歌っているというのはとても利に叶っています。
このままアイーダ、道化師、オテッロに突っ込んでいったらどうなっていたか・・・。

 

今回のエルナーニは彼のアップされている動画の中で一番良い出来なのではないかな?と個人的に思います。
全ての動画を隈なく見た訳ではありませんが、最近アップされた動画はありまなかったので、2019年以前の声と比較して、声の硬さが今年の演奏では随分と取れてきています。

エルナーニは登場して直ぐに大きなアリアを歌わないといけないので大変ですが、
そこから最後まで崩れることなく安定した歌唱を聴かせているというのは本当に素晴らしいです。

声を聴いただけではイタリア人とはちょっとわからないブッラットの特徴的な暗めのリリコと、
いかにもひと昔前のイタリア人テノールらしい太い芯のあるリリコスピントの声のベッルギ。このエルナーニはこの2人の熱演を聴けるだけで価値がありますので是非一度ご視聴ください。

 

他のキャストについても、ヴェルディバスの大御所Michele Pertusi
1985年イタリア生まれの若手要望株のバリトンSimone Piazzolaと充実していますので、個人的には最近半年以内に聴いたオペラで一番満足度が高かったです。

 

 

 

 

CD

 

 

 

 

 

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