音大生の現状を分析してみた! (軽いソプラノ中心)

最近は、大学が大学内部での演奏会の様子をアップしたりするので、
それを参考にしながら今の音大、声楽科の状況を追っていました。

一応知人に現役の大学生もいるのですが、はっきり言って学費は高いのにイベントはほぼゼロで、授業も休講やオンラインが多くなり、休学・退学を選択する学生も多いというのが現状のようです。

そんな中で、まず東京音大の卒業演奏がYOUTUBEにアップされていましたので、そちらを見ていきましょう。

まぁ、予想通りと言えばそうなのですが、やはり優秀と認められる学生は軽い声のソプラノが多いのは現在も変わっていないようです。

これは、若い楽器は軽い声の方が完成も早いですし、技巧や高音をこなせる方が良い点が取り易いという特性もあるでしょうから仕方ないことだとは思いますし、実際かなりレベルは高いと思います。

 

 

<東京音大>

 

[TCM]東京音楽大学 卒業演奏会 / 2020年度卒業生

声楽の演奏は3人で、それぞれ以下の時間からです。
①0:23.00~

②1:19:40~

③1:25:55~

 

大学4年でこれだけ歌えるのであれば本当に凄いことだと思うのですが、
問題はこの先が見えないと言えば良いのか、この歌い方を続けていった先に更に上達した演奏がどうなるのかを想像できないことです。

3人共例外なく上半身の響きだけで歌っているので、高音しか鳴らないのですね。
こんなに同じような歌い方の歌手を量産することに意味があるのでしょうか?

恐らく音大とか、多くの日本のコンクールは減点方式なので、プラスを伸ばすよりもマイナスのない演奏を生徒は求められます。
彼女達が、学を出て25・30・・・40と歳を重ねてどのような声になっていくのかという長期的な目線で生徒の声のことを考えている先生っているのだろうか?と心配になってしまう。

まずレガートで真っすぐ喋るという基礎を教えられてないんじゃないのかな?
と心配になるのです。
小難しい曲を歌っているので粗が目立ちにくいですが、大学生は1曲は誤魔化しの効かない古典歌曲やシューベルトを歌うべきだと思うのですね。

音大を出ているというアドバンテージを端田的にアピールする方法は、普通の人が歌えない曲を楽譜通りに歌えることです。
しかし、それは歌が上手いとは別で、誰でも歌える曲を、違う次元で演奏できてこそ意味があります。

 

 

 

因みに、こちらが東京音大声楽教員による演奏会

<プログラム>

1. 中丸 知美(ソプラノ)
00:00​ 山田 耕筰/からたちの花
K.Yamada / Karatachi no hana
03:14​ 武満 徹/小さな空
T.Takemitsu / Chiisana sora
07:13​ ラモー/歌劇『イポリートとアリシー』より 「恋するナイチンゲールよ」
J-P.Rameau / Rossignols amoureux : from “Hippolyte et Aricie”

2. 北嶋 信也(テノール)
13:03​ ベートーヴェン/くちづけ 作品128
L.v.Beethoven / Der Kuss, Op.128
15:30​ ベートーヴェン/6つの歌 作品75より 「新しい愛、新しい人生」
L.v.Beethoven / 6 Gesänge, Op.75. Neue Liebe, neues Leben
18:46​ モーツァルト/歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より 「私の恋人を慰めて」
W.A.Mozart / Il mio tesoro intanto : from “Don Giovanni”

3. 藪内 俊弥(バリトン)
23:03​ ラヴェル/ドゥルシネア姫に想いを寄せるドン・キホーテ
M.Ravel / Don Quichotte à Dulcinée
30:40​ コルンゴルト/歌劇『死の都』より 「私の憧れ、私の幻は甦る」
E.W.Korngold / Mein Sehnen, mein Wähnen : from “Die tote Stadt”

4. 岡 昭宏(バリトン)
35:25​トスティ/哀れなお母さん
F.P.Tosti / Povera mamma
41:52​ ジョルダーノ/歌劇『アンドレア・シェニエ』より 「祖国の敵?!」
U.Giordano / Nemico della patria : from “Andrea Chénier”

5. 木下 美穂子(ソプラノ)
47:26​ プッチーニ/歌劇『トスカ』より 「歌に生き、愛に生き」
G.Puccini / Vissi d’arte, vissi d’amore : from “Tosca”
51:54​ プッチーニ/歌劇『蝶々夫人』より 「ある晴れた日に」
G.Puccini / Un bel dì, vedremo : from “Madama Butterfly”

 

 

木下 美穂子氏以外、生徒と変わらない、あるいは生徒の方が上手いのでは?
というレベルに驚きました。

ですが、東音の名誉のために書いておきますと、
今日本国内で一番勢いのあるテノールの一人と言える、 宮里直樹氏が研究員にいたりしす。

 

 

 

<国立音大の大学院>

 

 

【国立音楽大学】2020年大学院オペラ公演 皇帝ティートの慈悲 <1日目>

 

 

 

 

【国立音楽大学】2020年大学院オペラ公演 皇帝ティートの慈悲 <2日目>

 

 

 

一日目の講演で、ティートを歌っているテノールの渡邉 公威さんは素晴らしいですね。
そこらのプロより全然上手い。
モーツァルトを歌うテノールは、どうも軽く歌おうとし過ぎる傾向があって、ふわふわした声だったり、鼻声で歌ったりする人が多いのですが、渡邉さんは開いた声で、真っすぐ歌えている。
レチタティーヴォがやや歌い過ぎかな?という気はしますが、学生でこれだけ歌えれば見事と言う他ありません。今後がとても楽しみですね。

伝統的に国音はテノールが強いイメージがあったのですが、こういう人が育つ土壌がやっぱりあるんだなと思うと安心します。

女声陣に関しては、国音が大学院のオペラ全曲、東音が大学の卒業演奏でのアリアだけなので、大学の状況を単純にここで比較することはできませんが、国音の方が上手い下手は別として声の個性という意味では尊重されている気がします。

 

 

 

<東京藝術大学>

 

芸大については、ここで国立だからなのか、この類の動画がありませんでしたので、
2020年のコンクールから実力を見てみましょう。

 

第12回東京国際声楽コンクール・大学生部門入賞者

第1位 該当無し
第2位 平野 葉月 (メゾソプラノ, 東京学芸大学4年)
コルンゴルト/我が女の瞳
モーツァルト/あぁ、この一瞬だけでも《皇帝ティートの慈悲》役名:セスト

第3位 日下 萌音 (メゾソプラノ, 愛知県立芸術大学3年)8:13
モーツァルト/私は行く《皇帝ティートの慈悲》役名:セスト
グノー/どうしたい、白いきじ鳩よ《ロメオとジュリエット》役名:ステファノ

第4位 山元 三奈 (ソプラノ, 東京藝術大学3年)16:39
ドニゼッティ/永遠の愛と誠
ドニゼッティ/あの目に騎士は《ドン・パスクワーレ》役名:ノリーナ

第5位 柴田 優香 (ソプラノ, エリザベト音楽大学4年)24:31
ドニゼッティ/ジプシーの女
ヴェルディ/ああ、そは彼の人か~花から花へ《椿姫》 役名:ヴィオレッタ

奨励賞 三好 一輝 (テノール, 京都市立芸術大学2年)35:31
ドニゼッティ/人知れぬ涙《愛の妙薬》役名:ネモリーノ
奨励賞 小山 百合香 (ソプラノ,  愛知県立芸術大学3年)39:42
ヘンデル/でもあなたが戻ってきた時は《アルチーナ》役名:アルチーナ

 

2位と4位の方が芸大ですね。

芸大の博士課程だと

 

 

この動画が2018年頃なので、現在プロとして活躍していらっしゃる小林 瑞花氏は芸大の大学院博士課程に在籍していたか、出たばかりの演奏と思われるので参考までに。

 

 

<海外の音楽大学の演奏>

 

では、海外の音楽大学の演奏と比較してみましょう。

 

New England Conservatory Liederabend

何が決定的に違うのかと考えてみると、
今回日本の音大の方はあまり男声は取り上げてないので、女声、特に軽いソプラノだけに絞って書かせて頂きますが、日本人女声の殆どの歌手は基本的な声で先ず喉が上がっているということ。
なので、New England Conservatoryでの女声歌手は、軽い声の方がいても、決して首から上だけで歌っている感じにはなっていません。

これは喋り声からの改革が必要な部分でもあるので、単純に歌のレッスンだけでどうこう出来る部分ではないかもしれませんが、日本人ソプラノ大半は声が浮く、中低音が鳴らない、という状況がなぜ起こっているのかは本気で音大は考えて対応をして欲しいと思う。

 

 

 

 

最後にヴェルディ音楽院のオペラ

Wolfgang Amadeus Mozart, Don Giovanni (rappresentazione 4 maggio 2019)

最初の話ではありませんが、25・・30・・・40歳になった時の声が想像できる歌というのは、
若くてまだ線が細いけど、このまま伸びて行ったら良い声になるだろうな~。
という期待感を持たせられる声だと私は考えていて、やっぱりヴェルディ音楽院にはそんな声が溢れているんですよね。

 

 

結論

 

芸大の博士課程に行っても歌は上手くなりません!

 

1件のコメント

  • さのさ より:

    渡邉公威さんは恐らく2020年時点で既にプロだと思います。間違ってたら申し訳ないです。

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