若手有望株として、国内の公演で主役を歌う機会が多くなっている、テノールの城 宏憲氏なのですが、
ちょっと声が最近よくない方向にいっているように思い心配になりました。
音源として一番古いのは、ご本人のYOUTBEチャンネルにアップしている2009年の演奏です。
プッチーニ ラ・ボエーム Che gelida manina
音がブツ切りになったり、母音が日本語っぽい音色になったりしてしまうことが時々あるのですが、総じて明るく、素直なリリックテノールの声で、このまま伸びたら海外の歌手とも張り合えるだろうなという期待を抱かせるものでした。
そして以下が2015年、日コンでの演奏
ベッリーニ ノルマ all’altar di Venere
歌う曲を1段重くして、声をスピント気味にしているので、高音を伸ばして音を切る時に、息を押すような音が入る時があります。
例えば0:56、4:19などですね。
本来持ってる声以上に強い声を出している時にこういうことになるのですが、
その後彼は頻繁にトスカを歌うようになって現在に至っています。
プッチーニ トスカ E lucevan le stelle
2014年
2020年11月 (25:45~)
確かに2014年の演奏は無骨なんですが、まだ高音の響きは悪くなかったのです。
しかし、2020年は五線の上のFより高い音が全部鼻に入ってしまってます。
なぜこうなってしまったのか?
この演奏を聴いた後で、改めて2009年のボエームの声を聴いて頂ければ、どっちが自然な響きに聴こえるかは明らかです。
彼は確実にレパートリーを誤った。
リリコなのにスピントに歌い過ぎた。
正直ここから声を戻すのは難しいと思いますが、まだ衰えていく年齢ではないので、
どうか発声を軌道修正して欲しいものです。
このように、レパートリーを選び間違えると、数年で声がここまで変わってしまうのですね。
このような歌い方をした後に待っているのは悲劇しか想像できません。
喉の不調が続く → ステロイドに頼る → 無理して歌う → 本番の度にステロイドを使う → 不自然な声になる。
こういう悪循環を辿ったテノールがどれだけいることか・・・。
彼にはそうなって欲しくないものです。
参考までに、不自然な声になりながらも、現在もトップテノールとして歌い続けている方がホセを歌った、新国のカルメンが、YOUTUBE上に公開されてます。
カルメン役を歌っているドゥストラックもちょっと声が重くはなっているのですが、
それでも、響きが乗っているので、どの音域でも声が均等に聴こえます。
しかし、ホセ役のテノールは、高音を出してる時以外全く響きが乗っていないので、中音域はほぼオケに掻き消されます。
こういう声になったら、ただ高音で大声出して、デシペルにだけしか興味のない聴取から喝采貰う、という以外にやれることがなくなります。
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