Franco Fagioli(フランコ ファジョーリ)は1981年、生まれのカウンターテノール歌手。
今回この歌手を取り上げるのは、前回私が作成した以下の動画に対し、
ファジョーリが入ってないないとのコメントを頂きましたので、
それではこの機会にと思って彼の急遽歌唱分析をすることにしました。
現代を代表するカウンターテノール4選
因みにファジョーリは、私がカウンターテノールの勉強をしていた学生時代から知っている歌手で、
廉価レーベルだったArte Novaから出したCDを持っていました。
今見たらAMAZONで当時の10倍程の値段になってて驚きましたが・・・
ヘンデル ロデリンダ Se fiera belva ha cinto
30歳になるかならないかの時の演奏がこんな感じです。
作ったような音色で何を言っているのか正直よくわからないのが気になるのですが、
技巧的には優れた能力を持っている歌手ではあったので、今後どうなるかは多少気にはかけていました。
そして、彼は見事に大出世して、今では最も権威のあるクラシックレーベルのDG(ドイツ・グラモフォン)からCDを出すまでになりました。
このCDに関連した映像だと思いますが、YOUTUBEでも以下が公式映像として出ています。
では、この曲を使って彼の歌唱を分析していきましょう。
まず出だしの「o」母音が「お」に聴こえない。
「u」と「o」の中間のような音色で、続く「bra」の「ra」は平べったい響きで、
「mai 」の「ma」は力んで重い声と、最初のフレーズだけで母音の音色がバラバラです。
1:59~2:07の「cara ed amabile」は
「c」が「k」のような子音になっていて、cara(愛おしい)という歌詞の意味を考えてもこれは変だし、伸ばしている「ca」は、伸ばしているうちにどんどん鼻に入っていて、「edaamabile」は微妙に演歌ちっくなポジションに入っている。
良い部分を挙げるとするならば、最後の「soave più」の「piu」の高音のピアノは上手い具合に抜けているが、全体的に中音域は平べったく、低音域は詰めたような感じなので、母音や子音の種類に関係なく音色の統一性がないです。
カウンターテノールのレジェンド的存在のアンドレアス・ショルの演奏と比較すれば、
いかにファジョーリの音色がバラバラで、発声的に癖が強いかがわかると思います。
唯一ファジョーリが優れているのは、最後のsoave più」の「piu」の部分だけだと私は思いますが、いかがでしょうか。
ヘンデル アリオダンテ cherza infida
さて、こちらが今年の演奏。
40歳と一番歌い手として脂の乗る年齢になった彼の演奏はどうか?
と思って聴いてみても、30代の時と同じように、喉声気味で音色が暗くまったく発音が飛ばず、声に開放感がない。
響きではなく声で歌っているので、正直大手レーベルからCDを出してて知名度は高いですが、どう聴いても現在を代表するカウンターテノールとは呼べないです。
では、ファジョーリより年下で、個人的に注目しているヴィストーリと比較してみましょう。
ヘンデル ジュリオ チェーザレ Va tacito e nascosto
ファジョーリの声は喉が鳴っているのに対して、
ヴィストーリは硬口蓋が響きの中心なので、言葉も飛ぶし、低音でも詰まったような音にならず、レガート豊に響きます。
個々がどの歌手が好きかは自由ですし、私が口を出すことではありませんが、
好き嫌いと上手い下手は全然別物だということはご理解頂きたいと思います。
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