イスラエルの歌手レベルは高くないのか・・・?

イスラエルは優れた音楽家が出ているのですが、声楽家は全然レベルがわからない。

 

そんな時に以下のような演奏会を発見しました。

 

 

Gala Concert dedicated to World Opera Day – 2021

 

<キャスト>

Inbal Brill (Israel) – soprano
Julia Binek (Germany) – soprano
Olga Budzhak (Ukraine)soprano
Rivka Falk (Israel) – soprano
Isabel Springer (USA) -soprano
Audelia Zagoury (Israel) – soprano
Marija Yelich (Serbia) – soprano
Marta Matalon (Lithuania) – mezzo–soprano
Jason Berger (USA) – tenor
Benjamin Pregl (Slovenia) – tenor
David Goldberg (Israel) – tenor
Mordehai Tekay (Israel) – tenor
Olexandr Forkushak (Ukraine) – baritone
Jacob Bowman(USA) – bass- baritone

 

 

ざっくり聴いた感じなのですが、

55:59~トスカのアリアを歌っている

Marija Yelichというソプラノ以外は正直微妙です。
特にソプラノ勢は技術や発声云々以前に声が全然成熟していないと言えば良いのか、
殆ど上半身だけで歌っているような声の歌手が目立つ。

この演奏会を見る限り、母音の質が全然揃っておらず、全体的に籠り気味ではあるものの、
前述のMarija Yelichだけがプロの声楽家らしい声を出していると形容できるレベルかもしれません。

男声陣もパっとする歌手はおらず、
Jason Bergerという、一度みたら忘れられない特徴的な外見の米国人テノールが、まぁ中音域はそれなりに良い感じではありますが、軽い声にも関わらず高音は喉が上がって貧弱な響きになってしまうので残念な感じです。

 

 

イスラエルの歌手を何人と形容すれば良いのかは正直わかりませんが、
アジア人=パワーがない。というイメージは間違ってて、なぜこうも韓国の歌手は喉強いのだろうと不思議になったりする訳です。

 

 

 

こうして色々聞いてると、やっぱり日本人だから声がない。
という理屈は成り立たないと思うに至るのですが、それでも声に合わない曲を歌って、本来持っている声の良さを生かせない歌手が沢山いる気がしてしまうのは残念な限りです。

 

 

 

こうやって色んな国の演奏会聴いてると今の東欧はレベル高いなと改めて思います。
明日か明後日には、ウクライナの歌手特集、ソプラノ編の動画を公開できると思いますので、
是非そちらで彼女達の実力を確認して頂きたいのですが、
以前紹介したポーランドやウクライナだけが特別レベルが高い訳ではないのです。

以下に貼った、ハンガリーのオペレッタガラコンサートの映像があったので拝聴してみましたが、
上で紹介しているような歌手達より全体的に上手いのは明白です。

特に女声陣はかなりレベル高いと思います。
オペレッタなので、奥行きのある深い響きとかではなく、言葉を直線的に飛ばす発声ではありますが、それでも口のフォームが崩れてる歌手が少なくて、特に1:40:00辺りで歌っている方は上手いですね。

一見、細くて可愛らしい声に聴こえるのですが、全部前に響きが乗っているので低音でも全然詰まったり、スカスカにならず、当然胸に落として無理にドスの効いた声を出す訳でもない。
この歌手の名前がわからないのが残念なのですが、口のフォームに無駄がなくて、低音~高音まで音質にムラがない、所々フォルテで喉声気味にはなるものの、それでも本当に良い歌手だなと思います。

と言うことで、暫くは東欧の歌手発掘作業が続きそうです。

6件のコメント

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    (掲示板に書き込めませんでしたのでこちらに書かせていただきます。もし掲示板に移行することができましたら、移行していただいて構いませんし、このコメントを削除して改めて私が掲示板に書き込んでも構いません。)
    ウクライナ人ソプラノの動画拝見しました。若手に良い歌手が結構いることが分かり、最近の良い歌手リストも増えて、非常に参考になりました! ありがとうございました。

    以前コメントしましたロシアのパワー系歌手についてですが、アトラントフといったパワー系テノールは多分、ロシア圏に元々存在したパワフル系テノールのようにロシア圏の歌手は喉が強い+デルモナコ公演の衝撃+スカラ座での研修(多分晩年のステファノ的歌唱やデルモナコ的強い声に教育するようソ連から要請があったはず)、の三要素によって生まれたものかと自分の中では推測しております。

    一方ホロストフスキーのパワー系バリトンの系譜について考えたくて、ホロストフスキーの歌唱と、ホロストフスキーの師匠であるPavel Lisitsianの歌唱とを五秒置きに交代しながら丁寧に聴いてみましたが、全く両者は違いますね(笑)

    ・ホロストフスキー
    https://www.youtube.com/watch?v=S2sdnuPmThg

    ・Pavel Lisitsian
    https://www.youtube.com/watch?v=_66VeWHtlEI

    Lisitsianはホロストフスキーより凄い声なのに力みが入っておらず、低音は軽やかに、高音は突き抜けるような輝かしい声。しかもまろやかな響きに声が覆われて非常に聴き心地が良い。抑揚表現もしっかりして言葉を語るような歌唱で表現力がある気がします。しかも53歳の演奏です。同年齢のホロストフスキーは声が衰えていよいよ吠えるような歌唱になっていた記憶があります。

    一方のホロストフスキーは確かに美声かもしれませんが声が硬く、響きもLisitsianの方が柔らかく感じます。また圧力で直線的に飛ばしている感があり耳に障る面が否定できず、低音は力んで唸り声のようで、高音は無理やり力で飛ばしている感があり、それでいて全く伸びておらず、抑揚表現があまりないからまるでお経のように聞こえます。今まで彼の美声と勢いとパワーで騙されてきましたが、実のところ結構まずい歌唱である気がします。アンチホロストフスキーのコメントが「吠えている」だとか「ロック歌手」である意味が分かった気がします(笑)
    ホロストフスキーもLisitsianも強い声で歌う歌手なので一見似ているように見えますが、技量は天と地の差があることが分かりました。
    個人的に、昔はホロストフスキーが好きだったんですが、他の歌手を聴くにつれあまり好みじゃなくなった、その理由が言語化された感じです。

    それでこのホロストフスキーの圧力で歌う歌唱の系譜を考えてみたのですが、先代オネーギン・エレツキー歌いのYuri Mazurokは圧や力押しで歌う歌手ではなく、その前のYevgeny KibkaloやGeorg Ots、Evgeny Belov、Andrey Ivanov、Panteleimon Nortsovらも圧力で歌っているとは考えられず、彼らはホロストフスキーの系譜であるとは思えません。

    一つの候補は強い声のバスバリトンであるAlexander Baturinですが彼もホロストフスキーより凄い声なのに圧力をさほど感じないので違う気がします。

    ・Alexander Baturin(Toreador’s Song )
    https://www.youtube.com/watch?v=YV9c3mbkBMU

    ・ホロストフスキー(Toreador’s Song )
    https://www.youtube.com/watch?v=AvPKi_IDRbg

    他の候補はDmitry Golovin ですが、彼も圧で歌っているとは思えません。
    ・https://www.youtube.com/watch?v=S4QbBMzs5lM

    ただ、彼は冤罪で1943年以降流刑にあって、その影響で健康を害して歌うことができなくなったのですが、流刑中あるいは釈放後の録音(曲が流刑中の1945年に作られているので)はやや力任せに歌っている感があるのでホロストフスキー系譜という気もしますが。

    Dmitry Golovin(流刑中あるいは流刑後)
    https://www.youtube.com/watch?v=_2xjGjLgo_c

    しかしボリショイ劇場系にホロストフスキーのようなパワー系は見当たりません。で、実は意外や意外、赤軍合唱団のソリストにホロストフスキーに似たバスバリトンがいました。
    赤軍合唱団のLeonid Kharitonov氏は「ヴォルガの舟歌」歌いでソ連内で一世を風靡し、西欧での赤軍合唱団コンサートでも大成功を収めた人物で、彼の「ヴォルガの舟歌」のYOUTUBEでの動画は数百万再生の人気を誇っていたりします。しかもホロストフスキーとKharitonovはともにシベリア出身なのでホロストフスキーは赤軍合唱団のソリストとして高名なKharitonov氏を知っているはずです。で、Kharitonovの歌い方が、ホロストフスキーほどひどくありませんが、やや力み圧力で歌う感じなんです。
    ・Leonid Kharitonov 「ヴォルガの舟歌」(ライブ映像)
    https://www.youtube.com/watch?v=0tw3g88JtWA&t=161s

    しかも口の開け方がホロストフスキーに似ています。特に1:20~1:41の頬をやや膨らませて大きく開いたアヒルの口のように開けて歌う歌い方はホロストフスキーのライブ映像でもよく見かけます。
    さらに彼の他の映像を見ると、

    Leonid Kharitonov「真夜中の閲兵」
    https://www.youtube.com/watch?v=6L3lMdnhShk

    若い頃の「ヴォルガの舟歌」よりも力と圧力で押している感があります。特にフォルテで、Lisitsianのような響きに囲まれた丸い音とは全く異なる、ホロストフスキーのような直線的で鋭く硬い声が耳に突き刺さる感覚があります。さらに言えば、丸い響きに欠いたパワー的声の性質のためか、劇的な表現しかできず繊細な表現ができないところもホロストフスキーと似ていると思います。

    Kharitonov氏のキャリア後期は

    ・Leonid Kharitonov ”Черный Ворон”
    https://www.youtube.com/watch?v=gTmaxkzHIII

    良い声かもしれないが抑揚に欠いていることからお経のように聞こえ、低音は力づくで高音は吠えるように力で出しており、まさしくホロストフスキーの歌唱の欠点と同様の欠点が散見されます。(ただし感情表現の深さはホロストフスキーよりこのKharitonovの方が優れているように思えます。)このときのKharitonov氏は50代半ばかと推測され、やや歌唱が崩れつつあると思われますが、ホロストフスキーも50代になると歌唱が崩れてきたと個人的に感じており、彼らのような力任せの歌い方は若いころは良くても50代になるとボロがでるのではないかと思われます。Lisitsianが50代になってなお若い頃の録音に勝るとも劣らないライブ歌唱を行い、Kozlovskyが80になってもhigh D (D5)の声を出し、Mark Reizenが80半ばにして「蚤の歌」の素晴らしい歌唱を行い90歳にして「グレーミンアリア」を歌っていることを考えると、技術ではない力任せの歌唱は短命であるかのように思えます。

    そしてKharitonov60代の歌唱になりますと
    ・The Aria of Ivan Susanin – Leonid Kharitonov (1996)
    https://www.youtube.com/watch?v=9pLUzdaIowQ

    もう吠えているだけの歌唱になってしまっております。抑揚もなくお経のようです。力任せの歌唱の末路を示している気がします。

    結論を言えば、ホロストフスキーとKharitonovは歌唱タイプや歌唱の欠点、加齢による歌唱の崩れ方が類似していること、両者とも同じシベリア出身であり、赤軍合唱団のソリストとして高名なKharitonovをホロストフスキーは絶対知っていたことから、ホロストフスキーがKharitonovをモデルにしたことは充分に考えられるかと思います。

    最後にボリショイ劇場ソリストのエレツキーのアリアを探している最中に素晴らしい歌手を発掘しましたので貼っておきます。

    ・Сергей Мигай (セルゲイ・ミガイ)Ария Елецкого
    https://www.youtube.com/watch?v=8oK3br5SLAE

    力みのない歌唱、クリアなディクション、豊かな感情表現、重たすぎない明るい声、伸びやかで輝かしい高音と素晴らしい歌唱を行っており、これを発見したときは衝撃で何回も聴き込みしてしまいました!
    Mattia Battistiniの弟子であったとする説もあり、さもありなんという感じです。

    • Yuya より:

      声楽鑑賞初心者様

      ロシアのバリトン歌手でイタリアでも通用したのはVladimir Chernovが私は真っ先に思い浮かびますね。
      最近の若手ならVasily Ladyukが良いです。

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    長文コメ失礼しました。次は短くコメントします。

    Vladimir Chernovは私も好きです。彼の歌唱はロシア(ソ連)の先代バリトンYuri Mazurokの系譜(ひいてはボリショイ劇場の名バリトン達の系譜)に入るような丁寧な歌唱をしていて好きです。90年代ロシア圏のバリトンの正統な系譜はホロストフスキーじゃなくてVladimir Chernovだと思います。
    (というより過去のロシア圏の名バリトンを聴くとホロストフスキーが突然変異に思われて仕方がないです。ホロストフスキーがロシア圏の代表的バリトンと広く思われている現在はロシア圏の声楽界にとって不幸なのかもしれません。)

    Vasily Ladyukは初耳でした。Korchakともデュエットしたりしてますね。ちょうどいい重さで力みもなく柔軟性もある良いバリトンだと思います。日本に来たら是非聴きに行きたいですね!

    また現在活躍する良い歌手を教えていただきました。本当に有難うございます。

    • Yuya より:

      声楽鑑賞初心者様

      チェルノフのホロストフスキー評は全くその通りとしか言いようがないですね。
      しかし、これが彼だけの問題であれば歌い方を変えていたのかもしれませんが、
      容姿も相まって彼をもてはやしたのは結局周りなんですよね。

      日本のオペラ評論なんかは勿論彼をヨイショする記事ばかりで、オペラ評論を書いてる人は歌なんて全然理解してないのだなと思ったものです。
      しかし、彼のような実力以上に人気が先行した歌手が檜舞台に立つ裏では、
      実力があっても正当な評価をされない歌手が沢山いる訳で、そういう歌手を紹介していこうと思ってこのブログ始めたんですよね。

      Vasily Ladyukは静岡国際オペラコンクールで優勝した歌手ということもあって、結構来日してますので、
      この流行病が落ち着けばまた来日するのではないかと思います。

      • 声楽鑑賞初心者 より:

        Yuya様

        周りがもてはやすから余計に悪くなってしまう、確かにそうでしょうね。
        評論家もお金を稼ぐ必要があるからスター歌手を批判し難いし、観客も当然スター歌手という色眼鏡で観てしまうから正確に評価できない。
        さらに言えば美声を作って大声で力強くドラマティックに歌う歌唱は多分一般受けしてしまう。
        で、そういう歌唱を求める観客の拍手喝采ほど魅力的な報酬は無いわけで、スター歌手はよっぽど禁欲的にならないと堕落する宿命にあるかもしれませんね。
        で、堕落したスター歌手ばっかり聴いているから聴衆も鑑賞眼が悪くなってしまう。
        ホロストフスキーも90年代はまだ良かったのですが…

        ただ、そういう悲劇が起こるのは聴衆の鑑賞眼が悪いからとも思ったのですが、これは個人的な話ですが、声楽に全く興味のない知人にホロストフスキーの歌唱を聴かせた後にLisitsianの歌唱を聴かせて改めてホロストフスキーを聴かせたんです。
        で、最初はホロストフスキーの歌唱を上手いと言っていたのですが、Lisitsianの歌唱を聴かせると圧倒的にこっちの方が良いと言い始めて、そして改めてホロストフスキーの歌唱を聴かせると力任せで声は良くないし、Lisitsianに比べて上手くないと評したんですね。
        でダメ押しにSergei Migaiを聴かせるとLisitsianよりこっちの方が凄いと(笑)。
        もちろんLisitsianがホロストフスキーと比較してどの点で優れているかという私の拙い講評も納得してもらいました。
        だから多分聴衆の鑑賞眼が曇っているのは歴史的名演を知らないというのも一因かもしれません。(ホロストフスキ―に拍手喝采の聴衆にMattia BattistiniやSergei Migaiを聴かせたらどうなるんでしょうね?)

        かくいう私も最初はホロストフスキー好きでした。が、歴史的に有名な歌手を聴いているうちに、違和感を感じて来て、現在はあまり好みではない歌手になってしまいましたね。
        ただ、ホロストフスキ―に早めに違和感を覚えるようになったのはReizenやLemeshev、Kozlovskyといった技術でしっかり表現する昔の歌手を始めの頃から聴いていたからであって(当時は彼らが優れているとは知らず、ただソビエトの有名な歌手ということで聴いていたのですが、今思うと凄い歌手陣ですね)、スター歌手ばっかり聴いていたらどうなっていたか分かりません。

        どんな分野でも、世の中流行っているものはプロモーションで良いように見せられた紛い物であり、良い物を知るにはまず歴史的名品を鑑賞し、ものの格を知って判断基準を作った上で現在のものを吟味すべしという信念がありますので、私は声楽鑑賞を始めるにあたって歴史的名演を聴くことから始めるという方針を立てました。
        それで良い歌手の判断が素人なりに朧気ながらもできるようになりつつあると感じており、そろそろ現代の実力派歌手を開拓したいと思っていた頃です。
        特に自分はロシア圏に偏り過ぎているのでドイツ・イタリアを深めたいと思っており、そういった理由からYuya様のブログ記事は大変参考になっております。ありがとうございます。

        Vasily Ladyuk、コロナが収束して来日したら是非観に行きたいです!

        追記:ロシア革命以前、Mattia Battistiniはロシア帝国で積極的に公演をして絶賛されていたようです。
        やはりイタリアの優れた歌手はロシアでも称賛されており、イタリアとロシアの声楽上の関係の深さを実感するとともに、ロシア帝国やソ連の声楽歌手に対するMattia Battistiniの影響力も気になる所です。

        https://en.wikipedia.org/wiki/Mattia_Battistini

  • 声楽鑑賞初心者 より:

    追記:Vladimir Chernovがホロストフスキーを批評した興味深い文章がありましたので貼っておきます。

    https://news.mail.ru/society/48053858/

    DeepL翻訳

    「ディミトリが若いころは、もっと技術的に優れていた。しかし、彼は自分の声に対するドラマチックなニュアンスを気にするようになったのです。彼は、自分が成長した、リゴレットやイアーゴを歌えるようになったと思ったのでしょう。声のダイナミクスに対する姿勢を変え、喉の筋肉に切り替えた。それは、私たちの耳に間違った演出効果を与えてしまうのです。そして、靭帯はその猛威に耐えられないのです。大切に育てなければならない。」

    原文

    Когда Дмитрий был молод, он был гораздо более технически образованным. Но ему стали важны драматические нюансы для голоса. Наверное, он подумал, что уже заматерел, что может петь Риголетто или Яго. Поменял отношение к динамике голоса и перешел на мышцы глотки. Они создают в наших ушах неверный эффект драматизма. А связки не выдерживают такого натиска. Их надо холить и лелеять.

    色々と首肯するところの多い批評です

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