正統派若手リリックメゾSimone McIntosh

Simone McIntosh(シモーネ マッキントシュ)はスイス系カナダ人のメゾソプラノ歌手

サンフランシスコオペラとカナディアンオペラの研修所で研鑽を積み、現在はチューリヒ歌劇場のメンバーになっているようです。

 

 

CBC の「30 歳未満の最もホットなクラシック ミュージシャン 30 人」

に選出されただけのことはあって、大変完成度の高い歌唱をしていると思います。

 

モーツァルト、
Rシュトラウスの歌曲
そして、珍しいベルリオーズの『ベアトリスとベネディクト』(Béatrice et Bénédict )のアリアと、性格の違う作品を見事に歌い分けられているところも素晴らしいですね。

 

個人的には一番最初に歌っているモーツァルトが得意にしているだけあって一番良いと思いました。
若い頃のガランチャみたい!

 

 

 

 

レチタティーヴォの「fuggi per pieta」みたいな歌詞で、
比較的高い音域でも”u”母音が太くって形が崩れたり、奥に引っ込んだりせず、
前に響きが乗っていながら、奥行きのある響きで歌えるというのは大変重要なポイントで、マッキントシュも(若い頃の)ガランチャと同様、持っている声はメゾの音質ながら良いソプラノのような軽く薄い響きで、奥行きがどんな母音でも失われずに”u”母音の深さが他の母音にもあるんですよね。

ドラマティックメゾとして知られる大御所のコッソットやシミオナートだってモーツァルトはきっちり歌えたので、私の中で良いメゾと言うのは、基本時にどんな声質であろうとモーツアルトは上手く歌えないといけない。と考えているので、そういう意味でもマッキントシュは注目しています。

 

 

 

 

 

 

こちらは上記のコンクールのファイナルの映像。

1曲目に歌っているシュトラウス 「ナクソス島のアリアドネ」の曲ですが、
オケが華やかで、オケに負けない声としっかりした高音が出せているので、演奏としては立派なのですが、。ちょっと口のフォームが横に開き気味で、個人的にはちょと喉の上がった声に聴こえなくもない。

上の前歯を見せながら歌うと、どうしても唇の先が使えないので”w”(英語では”v”)や”b”みたいな子音は飛ばせないというデメリットもありますね。

 

次に歌ったヘンデルの「ジュリオ・チェーザレ」のアリアですが、
この曲を聴いて、この人の母音の特徴がなんとなくわかった気がしました。

と言うのも、”u”や”o”のような、奥で発音される母音はとても安定しているのですが、
この曲では”a”母音が鼻に入るんですね。

中間部のテンポがゆったりになり、ピアノで歌う分にはそこまで母音ごとに音質のブレはないのですが、速いパッセージを歌うとまだまだ色々技術的な課題が見えると言ったところでしょうか?

前のシュトラウスも、若さで高音が出せているという面が無きにしも有らずだったと思いますし、前歯を見せて歌っている時はやはり母音も横に平べったくなり易いですが、”u”みたいな母音ではそういうことはやろうとしてもできないので、ここで良いポジションに声が戻せているのだと思います。

そういった観点で、最後のロッシーニのアリアを聴いて頂くと、
コロがる音が、「lungo」の”o”母音みたいな時は素晴らしいポジションなのに対して、
「palpitar」”i”母音のような場合は奥行きがなくなって浅い響きになってしまうのがわかります。

「gioco」という言葉で最後方、高音に上がっていく時は本当に素晴らしいのですが、
一番最後の音「Ah si」と歌った”si”で微妙にポジションが崩れる。

この辺りが、全て”o”母音を歌うポジションで統一できたら本当に素晴らしい歌手になるだろうなぁ。
というのが私の感想なのですが、いかがでしょうか?

 

 

 

 

ところで、全く違う話なのですが、
以下のような記事が先週出ていました。

東京藝大が練習ピアノ売却 「本当にやばいかもしれない…」学生に動揺広がる 学費、学食値上げしても予算不足

 

日本の声楽教育の問題については今まで色々書いてきたのですが、
そもそも芸大は国立だから学費が安い。というのも今は昔。
私立に比べれば勿論安いのですが、既存の施設が維持できない程予算がないなんて正直信じられない。

大学側は、撤去してもピアノ科などの学生の練習に影響が出ない、室内楽用のピアノだと言っていますが、そういう問題ではないでしょう。

そもそも不要なものなら最初から設置していないでしょうから、重要度が低く維持費が高いところに白羽の矢が立ったと言うべきでしょう。

 

しかしながら、今の学生は不遇ですね。
流行病で大きなイベントは中々できないですし、オンラインレッスンだの、歌う時にマスクだのが必要になったりもした訳で、そういった環境を整えるのにもお金が掛かりますから、今の音大というシステムが学費に見合った教育を提供できるのか甚だ疑問です。

今でも日本が先進国だと言うのであれば、少なからず芸大くらいしっかり予算出して才能のある若い物を発掘して一流の芸術家を育てろよ!
と思ってしまいますね。

 

 

 

 

 

 

 

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