どうやらヒューストンのオペラハウスが若手歌手とピアニストを対象に毎年行っているコンクールのようです。
しかし、コンクールを受けるにも某流行病のワクチン ブースター接種証明が必要なのだそうで、
米国が未だにそのようなフィルターで出場者を選別を行っていることには正直憤りを覚えた訳ですが、それでも有望な若手歌手が集まっているコンクールであることは確かだと思うので、取り上げたいと思います。
演奏は48:25~スタートです。
最初に歌う、ジョージアのメゾ
ANI KUSHYANという方がいきなり凄い声のメゾ!
ドラマティックソプラノのように強靭な高音の響きと、
深く厚みのある低音を併せ持っていながら、終始抑えたピアノの表現で声をコントロールしながら歌える理性と技術を持ち合わせている。
ロシア系の歌手によくみられる奥まった感じの発音ではありますが、決して力で押し切るような歌唱をしないどころか、地味過ぎる選曲にむしろもっと派手な曲を選んでも良かったのではないかと思えてしまいます。
などと書いていたら、2:03:28~アドリアーナのアリアを歌ってました💣
出だしの声から他の出演者とは次元が違う。
もうこの人が圧倒的過ぎて他の出演者が下手という訳ではないのですが霞んでしまう。
ジョージアのドラマティックメゾと言えば、Anita Rachvelishviliが有名ですが、
彼女に劣らない楽器の持ち主かもしれません。
粗削りながら声は良いと思ったのは、1:17:47~
MICHAEL MCDERMOTTというテノール歌手
響いてるポジションや、明るい声質はとても良いのですが、
如何せん高音が不安定で、息が太過ぎる。
常にアペルトな感じでブレスコントロールが全然できていないので、
後半に歌っているレンスキーのアリア、1:50:20~などは粗ばかりが目立ってしまう。
最高音がAsまでしか出ないという理由でこの曲を選んだ上にまともに高音が出ていないのであればテノールとしてコンクールの予選を通過すべきではなかったと思うのですが、
その一方で声には魅力があって、中低音が充実しているので、正直バリトンだったら良い歌手になるんじゃないか?なんて思ってしまう。
テノールという声種は持った声の良さより、技術が結局モノを言うということを、彼の歌唱を聴いていると改めて実感してしまう。
こんな感じなのですが、
そもそも、Houston Grand Operaのレベルがそもそもわからないので、
どんな歌手が所属していて、どんなキャストを揃えているのか見て見ましょう。
Creative ConsultantがテノールのLawrence Brownlee
高音が売りのロッシーニテノールは声を保てる時期が短いのですが、
この人は年齢を重ねても声があまりかわりませんね。
2022-23シーズンは以下のような感じです。
<マスネ ウェルテル>
Matthew Polenzani
Werther
メトでも常連のテノールですが、正直この人の声好きじゃないんですよね。
例えるなら「気の抜けた炭酸」みたいな声。と学生時代にフランスに留学していた知人が言っていましたが、私もその意見に同意します。
Isabel Leonard
Charlotte
ヘンデル、モーツァルト、ロッシーニ辺りの作品を得意としているのですが、
シャルロッテを歌っても音楽に負けるような声ではないと思いますので、これは良いキャストだなと思います。
Sean Michael Plumb
Albert
音圧で歌うタイプのバリトン
<プッチーニ トスカ>
Tamara Wilson
Floria Tosca
何を言っているのか分からない。フレージングもない。
よくここまでレガートのない歌唱でヴェルディを歌えたものだと、あるいみこの声をだせる喉の強さに感服する。
Jonathan Tetelman
Mario Cavaradossi
声は良いのですが、上半身だけで歌っている感じで正直ドラマティックな作品を歌う深い支えがない。
深さを間違って籠ってしまったカウフマンとどっちが良いかと聞かれると難しいのですが、DGのような大手レーベルが押す程の歌手としては正直力不足感を覚える。
Rod Gilfry
Baron Scarpia
トスカでスカルピアが一番上手いというのも複雑ですが、
この人は巧いテノールの高音のような、鋭く明るい高音(アクート)が出せる素晴らしい技術を持っていますね。
深く太い声でありながらも、籠ることなく響きが前にあってレガートの質も良い。
<Rシュトラウス サロメ>
Laura Wilde
Salome
サロメを歌える強い声と、太い低音を持った歌手ではありますが、
音の入りが不安定なのが気になりますね。
Ryan McKinny
Jokanaan
最近の演奏音源がないので、現在どのような声なのかはわかりませんが、
2010年の演奏を聴く限りではピッタリな配役ですね。
この役はヘルデンバリトンじゃないと栄えないので、ある意味声だけで言えばサロメ役より声量が求められるかもしれません。
Chad Shelton
Herod
響きのポイントはそこまで悪くないのですが、なんとも酔っ払いの歌っぽく品がない。
しかし、ヘルデン的な声でありながらキャラクターテノールのような役回りのヘロデ王という役には合う声かもしれません。
Karita Mattila
Herodias
大御所がここに配置されているのは豪華ですね。
動画は昨年の演奏ですが、まだまだ健在のようです。
ということで、ヒューストン グランド オペラのキャストはかなり高いレベルだということがわかりました。
しかしこうして本公演のキャストの演奏を聴いても、
コンクールに出ていたANI KUSHYANの歌唱は聴き劣りしませんね。
今後の活動に注目です。
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