今年他界された実力派テノールPEDRO LA VIRGEN

最近全然更新できずすいません。
家のPCが壊れてしまって、流石に会社のPCで記事を書く訳にはいかず、時間が空いてしまいました。

 

PEDRO LAVIRGEN(ペドロ・ラビルゲン 1930~2023)はスペインのテノール歌手

 

今年亡くなった有名な歌手としては、グレース・バンブリー (Grace Bumbry)という黒人のメゾソプラノ歌手がいますが、
彼女以外にもPEDRO LA VIRGENというスペインのテノール歌手も今年の4月に亡くなっていたことを知りました。

1930年生まれとのことなので、この時期のスペインといえば
Aクラウス、Pドミンゴ、Jカレーラスと超有名テノールを輩出していたので、名前を聞いても

「誰だよ!」

と思ってしまったのですが、調べて見る経歴も立派なものでした。

<以下 ラ ビルゲンの経歴>

1959年に初めてソリストとしてデビューし、
1964年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場、
1975年にはミラノのスカラ座やロンドンのコヴェント・ガーデン歌劇場など、世界の名だたるオペラハウスで活躍しました。

特にヴェルディやプッチーニのオペラにおいて情熱的でドラマティックな歌声を披露し、聴衆を魅了しました。
1993年に引退後は、マドリード王立音楽院で後進の指導にあたり、
2023年4月2日に92歳で亡くなった。

とのことで、そんなラ ビルゲンのリサイタル音源もありました。

 

 

 

 

PEDRO LA VIRGEN DAL VIVO AL TEATRO COMUNALE DI BOLOGNA

おぉ、高温がどことなくクラウスに似てる!
超有名なJ・CやP・Dより良いテノールではないか?

なんて思ってしまったのは私だけでしょうか。

 

 

若い頃のJ・カレーラス

 

半音下げた調整で歌ってる時点でこのアリアを歌う意味ないんじゃないかと思ってしまう訳ですが、J・C氏はそれでもパッサッジョ付近は上手いんですよね。

いらん所で泣き入れたり、勢いで高音出したりしてるので個人的には好きになれないのですが、それでも、中音域の安定感という部分はラビルゲンより上でしょう。
ラビルゲンはクラウスのよう。と前に書いた通り、鼻腔の響きが強いので、
決して鼻声ではないのですが、ちょっと中音が鋭く丸みに欠けるところが気になります。

ただ全体の響きのポジションや高音の安定感や輝かしさはJ・C<ビルゲンというのが私の意見です。

 

 

P・ドミンゴ

カルメンの「花の歌」を1967~1975の録音で集めた中々マニアックな音源です。

0:00 1967
3:56 1968
7:45 1970
11:15 1973
15:47 1975

 

60年代は全然レガートで歌えていないのですが、70年代になるとかなり安定感のある歌唱ができるようになってきて、元バリトンらしく、低音域に輝かしい響きがあるのは良いですね。

ただピアノの表現は抜いた感じになって芯がなくなる。
そして最高音のBはやっぱり喉声・・・
この歌い方でもハイCが出せたから「ド」ミンゴなんだが、今は「ラ」ミンゴくらいかな。みたいな冗談が1990年代に音大内では言われてましたけど、
バリトンとなった現在「ソ」ミンゴかも・・・。

それはおいておいて、やっぱり彼の場合は圧力で狂人な響きを作ってる感じがして、どこか不自然に聞こえてしまう。
この歌い方で今まで歌えてることが奇跡だとも思う訳で、そういう分も加味すれば持ってる楽器は歴史的に見ても稀有なものなのでしょう。

 

 

A・クラウス

やっぱクラウス先生は神ですね。
このクラウスを聴いてしまうと、ラビルゲンの声もやや押しているように聴こえてしまう。

実際、ラビルゲンの声は決して重くないにも関わらず、ヴェルディやプッチーニのドラマティックな曲を歌っているので、声とレパートリーが合っていない部分はあったことで、それほど知名度が出なかったというのはあるのかもしれません。

 

発声的な部分について、最近どのくらい口を開けるのが一番力まずに声を出せるのか?ということを考えていて、
空間を効率的に使うためには当然広い空間は必要なのですが、舌や顎に無駄な力を入れずに開けられる範囲はそこまで大きくないだろうというのも事実で、改めてそういう視点でクラウスの歌唱を見ると、一般的に言われる
「口を縦に開ける」なんて歌い方はしてなくて、昔は下の歯を見せるように下に開けてる(下唇を横に引っ張る感じ)のだと思っていましたが、それも間違っていて、本当に唇まで脱力できるとこういうフォームになるのだと思います。

上唇がほとんど動かない範囲で口を開けるのが力みなく歌えるラインなのではないかと思うと、このクラウスの歌唱は本当に無駄な口の動きがないなと感心させられてしまいました。

 

 

と、ここまで色々書いてきたのですが、
最初に紹介したラヴィルゲンのリサイタルの音源がいつなのかわかりませんが、もしかしたら結構若い時なのかもしれません。
でも、30代前半とかでオテッロのアリアとか歌うかな・・・?

と言うのも、70年代の声を聴いてみると全然違う。

 

 

 

 

Pedro Lavirgen(1973)

 

 

 

1966年に道化師のアリアを歌っている音源もあるので、
やっぱり若い頃からやたら重い役を歌っていたのは間違えないので、オテッロを30代で歌っていても不思議はないか。

年代はわかりませんが、以下「若い時の演奏」というYOUTUBE説明を見る限り、この時の演奏が一番上で紹介した時の声に近いか

 

 

こんな感じで、ラヴィルゲンの演奏は音源によってかなり声が違い、年代がわからない部分もあるのですが、それでも全体的に高いレベルの演奏をしていることからも、ラヴィルゲンはもっと評価されて良いテノール歌手なのではないかと思います。

 

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