期待の若手ヴェルディバリトン Ernesto Petti

年末年始を飾るにふさわしい歌手を探していたら、結局年内の記事更新に間に合わず2024年になってしまいました。

でも、この人は新年1発目に取り上げるに相応しい若狭と実力を備えていると感じましたので良い歌手に出会えて個人的には満足しています。

 

Ernesto Petti(エルネスト ペッティ)は1986年イタリア生まれのバリトン歌手。

ーレ・デル・ラーゴ・プッチーニ高等研修院とバレンシアのパラウ・デ・レス・アルツのプラシド・ドミンゴ研修センターで学び、。グルックの「オルフェオとエウリディーチェ」のエアグロ役でオペラデビュー。

その後、ナポリのサン・カルロ劇場、アムステルダムのコンセルトヘボウ、バリのペトルッツェッリ劇場、パルマのレージョ劇場などでヴェルディ作品を中心に活躍し、
2024年は、パルマ発で行われるヴェルディ音楽祭でマクベスを歌う予定となっています。

 

まだ30代でヴェルディバリトンとして着実に実績を積んでいるペッティの演奏が以下

まだ。あまり音源がYOUTUBE上にないのですが、
この映像はドイツデビュー時と紹介文にありますが、ドイツでのオペラデビューは今年のようで、このリサイタルがいつのものかはちょっとわかりませんでした。
ただ、動画の投稿時期から、2019年頃かなと思います。

若々しく勢いのある高音も、決して力任せにならず、
レガートを崩さずにディナーミクを構築できる範囲で収まっているのが大したものだなと思います。

若くしてヴェルディをレパートリーの中心に据える歌手には、持声の良さと楽器の強さで歌っている歌手も沢山いますが、彼は決してそうではありません。
それがわかるのがジェルモンのアリア

 

ヴェルディ 椿姫 Di Provenza il mar

この演奏は2020年の秋、モデナでのもの。
入り方から最初に紹介した動画とは響きのポイントを深くもっていきながらも、発音が不明瞭になることはない。

ピアノの表現でこそ、劇的な表現が必要な歌手の技術というのはよくわかるもので、フォルテとは全く違う、音圧のないファルセットのような弱音を使う人もいれば、
バスやバリトンでは奥に響きを引っ込めるのと同時に発音まで何言っているのかわからなくなる人もいたタイプは多いですね。
しかし、ペッティはピアノ~フォルテのディナーミクを同じポイントで歌える上に、以外と難しい、閉口母音~開口母音にかわった時にもポジションが落ちない。

上手さがわかるの例として、
1:24~1:47の「Dio mi guidò!」という歌詞の処理。

高音で”i”母音が来ると、硬くなったり、逆にそれを避けるために、”e”母音寄りに母音の質を変えてしまう人が多いですが、ペッティの場合は”mi”で多少強い圧力が掛かる程度で響きの質には変化がなく、
それ以上に突出して、難しい「guido」の”do”の母音の響きが落ちることなく、レガートでピアノにするというところ。
ここがスムーズにできる歌手は中々いないです。
しかも30代でここまでできるというのは驚きです。

 

そして、YOUTUBE上で聴ける最新の演奏が以下、

ヴェルディ ドン・カルロ Perme giunto・・・O carlo,ascorta,

彼の予定と動画の投稿時期を見る限り、昨年の11月の公演の映像だと思います。

いゃ~、無駄な圧力が掛かることが一切なくて、なんて心地よいレガートなのだろう。

若くして、ここまでピアノの表現が洗練されたヴェルディを得意とするイタリア人バリトン歌手も珍しい。

高音を輝かしく鳴らすだけなら、彼よりもっと素晴らしい声が出せるバリトンはいるでしょうけど、洗練されたフレージングと、出すところと内側に収める感情のコントロールと、響きのポジションは、例えはあまり良くないですけど、海苔が上あごにくっついているような感じで、ぴったり薄く息の層がはりついている感じで離れない。

こういう歌手の演奏を聴くと、良い声だな。と思う前に上手い演奏だな。と思うのですね。
逆に、良い声だな。と思ってしまう演奏は、曲の演奏としてはあまり魅力を感じない時に持つ印象であることが多い気がします。

そういう意味では、カプッチッリなんかもそうかもしれませんね。
枯れの声は、バスティアニーニみたいな圧倒的な美声と思う人はあまりいないですけど、誰もが最も優れたヴェルディバリトンとして名前を挙げれば絶対に入ります。

パッティがカプッチッリのようなところまでいくかはわかりませんけど、少なくとも現在ヴェルディを演奏する上では、とても優れていて、しかも更なる伸びしろがある有望歌手であることは間違えないでしょう。

ということで、今年一発目は、今後の活躍に期待したい歌手を紹介しました。

明日は恒例のアレをやると思いますが、キャストを見る限り、正直良いことを書ける予感がしません/(^o^)\

あした、アレを視聴されたら、その後にぜひペッティの演奏聴いて比較してみてくださいね(笑)

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