Erika Grimaldi(エリカ グリマルディ 1980~)はイタリアのソプラノ歌手。
19985歳でピアノを学び、16歳で歌唱を始め、ヴェルディ音楽院でピアノと声楽の学位を取得。
1998年、18歳でペルゴレージの「奥様女中」でデビュー
2016年、スカラ座デビュー
2017年~は、現在重点的に活動しているトリノのテアトロ レージョでの出演が多くなっているように見えます。
この辺りから現在のレパートリーの中心となっているヴェルディ、プッチーニ作品でも、蝶々さんや、マノン・レスコー、トロヴァトーレなど、強めのリリコ作品から、トスカのようなよりドラマティックなものへ移行してきているようです。
その一方で、ロッシーニ作品は歌い続けているのがこの人が、一般的なリリコとは違うところかもしれません。
また、この歳にヴェルディのレクイエムのCD録音も行っています。
ロッシーニ オリー伯爵 En proie a la tristesse
具体的にいつの演奏かは特定できませんでしたが、この音源がアップされたのが2011年2月17日なので、確実に31歳よりは若い時。
なぜこんな歌手を全然知らなかったのだろう?
と思うくらいフォーオムが安定している。
コロラトゥーラを得意とするレッジェーロソプラノの超絶技巧と比較すれば物足りなさはあるかもしれませんが、ものすごく堅実で、声の若さとは相反して、決して鋭く攻撃的な響きになることなく、余裕をもって歌えているところにすでに風格が漂っている。
プッチーニ ラ・ボエーム Sì, mi chiamano Mim
2008年の演奏
2023年の演奏
この比較は、グリマルディが如何に技術を向上させてきたかがよくわかって面白いです。
声そのものはそこまでかわらないのですが、
2008年の演奏は、まだまだ圧力で声をポジションにハメにいっていると言えば良いのでしょうか?
無茶苦茶ええ声しとんな~
とは思うのですけど、とにかくフレージングが硬い
具体的に比較をすると
2008年 2:45~3:14
2013年 2:26~2:55
歌詞では
「Sola mi fò il pranzo da me stessa.
Non vado sempre a messa ma prego assai il Signor.
Vivo sola soletta,
là in una bianca cameretta; guardo sui tetti e in cielo.」という部分ですね。
2008年の演奏は、まず”o”母音を押すような感じになることがあるのと、一番気になるのは”bianca”という単語の”ca”が強くなってしまっていること。
イタリア人歌手でこういうことになってしまうということは、どこか不自然な歌い方になっている証左でしょう。
対する2013年演奏は、表現的な好みは別として、フレージングがとても自然で、続くオケが煽ってくる部分でも声を張り上げることなく、喋るように歌っているポジションのまま、ディナーミクをコントロールできていて、硬い声になることがない。
こういうプッチーニが聴きたかった。
プッチーニ トゥーランドット Signore ascolta
こちらは2018年の演奏なんですが、
説明は不要、とりあえず聴け!
って感じの完成度です。
記事を本とんど書けなかった期間、どういう歌唱が自然に聴こえるのかをずっと考えていたのですが、
現在の結論としては、息を吐いているように聴こえない声。
極端に言えば、息が止まっているかのような声が理想!
「は?遂に頭おかしくなttか」
と思われる方もいるかもしれませんが、喋っているかのように歌うことが理想なのであれば、喋っている時の呼気を考えた場合、絶対に息のスピード感なんてものはありません。
「を習うと、レガートで歌う為に
「息を流せ!」と言われることが多々あるのですが、その行為が喉を押すことにつながるだけで良いことは殆どありません。
ただ、強く息を吐くために、いわゆる支えと一般的に呼ばれる、横隔膜などの動作が促されるので、筋トレとしての意味はあるから、こういった指導が正しいかのようにまかり通ってきたのだと考えています。
ある程度身体が出来上がってくれば、息は少なけれ少ないほど声は楽に出せる。
これはかなり確信をもって言えます。
話が脱線してしまいましたが、そんな視点でグリマルディの演奏を聴くと、前に息を吐いているようなところはなく、
漂うかのような、本当にゆったりした息で歌っていることがわかると思うのです。
プッチーニ トスカ Vissi d’arte
現在の演奏がコレですね。
こりゃ現役最高のリリコの一人と言っても良いかもですね。
もはや重箱の隅すらつつかせない完成度!
この人は絶対生で聴きたいですね。
ということで、グリマルディの演奏について、皆さまの感想などがあれば書き込んで頂けると幸いです。
Yuyaさま、こんばんは。
ご紹介されているトゥーランドット、以前に全編を視聴したのですが、トゥーランドット姫ではなくリューを中心に構成した演出で、演奏もプッチーニが書いたリューの死までで終わる、という非常に面白いものでした。
そしてジャナンドレア・ノセダの指揮も良かったのですが、何よりもリュー=ERIKA GRIMALDIの圧倒的な歌唱力と凛とした存在感で、彼女がリューを歌う前提で演出したのではないかと思うほどハマっており、今でも忘れがたい演奏です。
トゥーランドットという作品の新たな魅力に気付かされた演奏でしたので、記事で触れて頂き嬉しいです。
KK様
コメントありがとうございます。
グリマルディは近年稀にみるプッチーニ演奏のスペシャリストですね。
私も、この演奏がプッチーニが意図した演奏なんだな。と理屈抜きに納得させられました。
それにしても、実際にこの演奏を聴いていたとは羨ましい限りです。
トゥーランドットは、ベリオ補筆版も含めて聴いたことはありましたが、
モツレクのように、作曲者が書いたところまでの版で演奏されることがあることは知りませんでした。
Yuyaさま、こんばんは。
スイマセン、私の書き方が良くなかったのですが、このトゥーランドットは残念ながら生では聴いてません。幸いにもこの演奏はソフト化されていまして、それを視聴しました。
https://www.hmv.co.jp/fl/12/2631/1/
リューの死までで終わるのは、初演時(トスカニーニ指揮)に倣った、ということのようです。
これを生で観ることが出来た人が羨ましいです…。
KK様
なるほど、映像化されたものがあったんですね。
本当に生で聴けた方は羨ましい。
それにしても、これ程の実力でCD録音もあるにも関わらず、
グリマルディに関する日本語の記事が全くないのが不思議です。