第67回NHKニューイヤーオペラコンサート
<出演>
[ソプラノ]石橋栄実 大村博美 小林厚子 砂川涼子 田崎尚美 船越亜弥 森麻季
[メゾ・ソプラノ]山際きみ佳 山下裕賀 山下牧子
[テノール]樋口達哉 福井敬 宮里直樹
[バリトン]池内響 大西宇宙 上江隼人 黒田博 須藤慎吾
[バス]伊藤貴之 妻屋秀和
[合唱]新国立劇場合唱団 二期会合唱団 びわ湖ホール声楽アンサンブル 藤原歌劇団合唱部
NHK東京児童合唱団
[管弦楽]東京フィルハーモニー交響楽団
[指揮]沼尻竜典
毎年恒例のニューイヤー評論になります。
久々に見る名前もあれば、ずっと出続けている方もいらっしゃいますが、
そんな中では、メゾソプラノの山際きみ佳氏の歌唱に注目しています。
ビぜー「カルメン」からセギディーリャ
山下裕賀
低音がバリバリ鳴る訳ではないのですが、無理なく響き、
高音も強い。
ソプラノでもいけそうだけど、ちゃんとメゾの響きというところが良いですね。
世界的には、メゾの役とソプラノの役を両立させる人がいるので、山下氏もそうなっていきそうな気がします。
モーツァルト「フィガロの結婚」自分で自分がわからない
山際きみ佳
喉が上がったような響きで、アレこんなんだったっけ?
と正直ちょっと残念。
確か昨年の日コンのセミファイナルで彼女の演奏を聴いた時は、もっと密度の濃い声だったと記憶していたのですが、
地に足がついて感じの演奏になっていた。
役作りこういう演奏をしていたのであれば止めた方が良い。
モーツァルト「フィガロの結婚」もう飛ぶまいぞこの蝶々
大西宇宙
この人はホント何歌っても上手い。
高音が強いだけでなく、バスバリトンが歌った方が栄える曲を歌っても様になる。
口の開け方を見ても無駄がないんですよね。
口のフォームについては、大して高い音域でもないのに、山際氏が口を開けすぎて.
息が声になりきっていないのとは対照的。
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」お手をどうぞ
石橋栄実
池内響
池内氏は低い音域でも響きが乗っていて、柔らかさと強さを併せ持った声。
かなり昔に聴いた時はもう少し力押しで歌っていた記憶があったのですが、今回の演奏を聴いて考えを改めました。
ソロでちゃんと聴いてみたい。
石橋氏は、声は透明感があって役向きなのですが、いかんせん日本人声。
もしかしたらこの曲のテッシトゥーラが低いのかもしれませんが、全体的に母音の幅が”o”母音に揃ったら、声に深みが出る気がしました。
もう少し音域の高い曲でちゃんと演奏を聴いたら、また違う印象を持つかも。
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニひどい人
森麻季
この人の声は、どこが鳴っているのかよくわからないし、フレージングも独特なので、
上手い下手というより好き嫌いの問題な気がします。
とりあえず私には彼女の高音は心地よく聞こえない。
心地よい声は開放されていく方向なのですが、森氏の高音は鼻の上の方に圧縮していく感じで、なんであれで声出るんだろう?
ととても不思議。
ベートーヴェン「フィデリオ」からフィナーレ
田崎尚美氏は結構好きだったんですが、重い曲を頻繁に歌うようになって叫ぶようになってしまった。
なんだろう、この動物園のような騒々しい演奏。。。聴いて辛い。
福井敬氏は、とりあえず伸ばしてる音で揺れてる時点でまともなアンサンブルは無理。
もう信者のためだけに歌っていて欲しい。
それにしても全くドイツ語が聞き取れない。
ヴェルディ「ドン・カルロ」フィリッポと大審問官の二重唱
伊藤貴之
妻屋秀和
妻屋氏は相変わらず声だけなら大変すばらしいのだが、
何を歌ってもかわり映えしない。
こういう役だと良い部分の方が目立つので良いのかもしれませんが、ヴェルディの音楽に必須なレガートとは程通り。
一方伊藤氏は、芯の強い声ではありませんが温かみのある響きで、味のある歌唱をするなという印象。
こういう演奏ができる方って貴重だと思いますよ。
ヴェルディ「運命の力」ラタプラン
山下牧子
この人のドスの効いた声はなんか違う感があって、
若い頃はこんな声じゃなかったのに・・・。
しゃくり上げたり、中音域で不安定になったりすることがあるので、この発声は良くないと思うんですが、こういうのが好き方も一定数いらっしゃるのは事実。
ヴェルディ「運命の力」神よ平和を与えたまえ
大村博美
肝心な第一声でしっくった?
全盛期から比べると聴いてて切なくなりますね。
まったくレガートで歌えていないし、高音のフォルテがハマらないから、ピアノでもただ声が小さくしているようにしか聞こえない。
表現的な部分でなんとか間をもたせて。最後の高音はなんとか決めたといった感じ。
ヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」より
上江隼人氏は何度か聴いているが、他のキャストと比較してちゃんとレガートで歌えていてよかった。
最近の演奏がYOUTUBE上にないのですが、気になる部分としては「i」母音が硬くなるところで、これは、以下に貼った2023年の演奏でも、本日の演奏でもかわっていなかった。
だが、2022年の演奏と比較すると明らかに上手くなっている。
プッチーニ「蝶々夫人」1幕フィナーレ
砂川涼子
宮里直樹
宮里氏が上手いことは前提として、強い声ではありますが、重い声ではないので、ピンカートンが合ってるかどうかは難しいところ。
個人的には、宮里氏はブッファ歌った方が生き生きしていて好きなので、あんまりヴェルディやプッチーニの重い役ばかり歌わないで欲しいなぁ。という願望があります。
砂川氏は、相変わらずこういった役の雰囲気作りは上手いし、持っている声もあっているので、
それで上手く聴こえてしまうんですが、宮里氏と一緒に歌うと歌唱の推進力と言えば良いのか、
フレージングの部分で物足りなさを感じる。
最後のハイCも結構ギリギリだった。
この二重唱の理想形は、無茶苦茶古い演奏ですが、カルーゾーとファーラーの演奏
この演奏を初めて聴いた時は感涙したものですが、今改めて聴いてもその凄み言葉を失う。
ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」祖国の敵
黒田博
いつまでこの人を出すのか・・・
詰まった声で、高音もまともに出ない。学生でもこの人より上手く歌える人は沢山いると思う。
ジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」フィナーレ
小林厚子
樋口達哉
樋口氏はシェニエ歌うような声じゃないのに、硬い声出して低音は全く響かず、高音は絶叫。
だからユニゾンになると完全に声がかき消される。デル・モナコの真似して出ないモナコになる典型的パターン。
小林氏は器用な歌手なので、音楽に飲まれずに自分のスタイルで歌えていて立派。
この辺りは田崎氏と正反対で、ワーグナーやヴェリズモの重い曲を歌ってもフォームを崩さず安定した演奏ができる。
強い個性はないですが、安定して幅広い演目に適用できる能力は大したものだと思います。
最後の「こうもり」の重唱は、
ほぼ船越氏の歌唱がなかったので、割愛させて頂きます。
前半は、ニューイヤーとしてはかなりレベルの高い演奏が続いていたのですが、
ベテラン勢が足を引っ張るという形。
実力のある若手が出てきていますので、私の中で日本の声楽界については、数年前よりは悲観していません。
間違ったことを教える権力だけ持ってて下手なベテラン勢がいなくなった時にこそ、ニューイヤーにも実力のある歌手だけが集まるようになるのではないかと、少し期待しています。
ご無沙汰しています
怖いもの見たさで途中まで見てしまいました
素人の雑な感想ですが…
やましたひろか
喉仏動かしすぎる
山際 音がぶら下がる 音が上に抜けない 別の役がいい
大西 無難 石橋も
森 やめてくれ 顎を震わすの
田崎あかん喉声
福井 もう 細川たかし
のりしんさん
コメントありがとうございます。
大西さんは何歌っても、フォームが安定している上に、曲による歌い訳も見事で、
世界的に見てもかなりレベルの高い歌手だと思います。
メゾのお二人は、歳を重ねてどう声が成熟するかですね。
福井さんは絶対に出さないといけない決まりがあるとしか思えないですね。
あの演奏でチャンネル変えた人多そう。
後半見ましたが、響がなく喉で押す絶叫型の歌手が多いですね。
ホールで聞いた時は声がスカスカだったのでどうかと思った上江さんがまともなほうでした。
>のりしんさん
上江さんは、私も以前聴いた時より上手くなったなと正直驚きました。
今年は生で聴く予定があるので、それで改めて彼の実力は判断したいと思いますので、
改めてその時は記事を書く予定です。
いつも論評をとっても楽しみにしています。
今回のコンサートは去年より演出、曲目に馴染みやすさがあり、楽しく視聴しました。
大西さんは力まず自然に素敵な歌声でしたね。
でも、全体的に、絶対もっと素敵な歌手たくさんたくさんいるやろ〜と、フラストレーションがたまりました。
てもやっぱり観てしまうのですが(笑)
あうらたんさん
コメントありがとうございます。
海外で活躍している方は出演できませんし、
オペラ歌手は何かと仕事が多い時期なので、スケジュールが合わない人も多いみたいなので、
完全に呼びたい人が呼べるという訳ではないと思います。
なので、個人的にはせめて変わり映えしない歌手が出るのを避けるため年齢制限とか設けて欲しいんですけど、
無茶苦茶な話、実力よりチケットが売れる歌手を出すことが大事なので、ずっと出演し続けてる歌手は集客能力で選ばれてるんだと思います。
琵琶湖の忖度が多いのが謎です。沼尻氏の采配かな…
どうでもいい話ですが、ちょい役で何度か登場してた市川氏は経歴詐称で有名なよう。琵琶湖のホームページのプロフにも、ものすごいことばかり…SNSはもっと酷い。NHKはバックグラウンドチェックとかしないのか。
ぼぶさん
コメントありがとうございます。
市川氏とは「市川 敏雅」氏のことでしょうか?
経歴詐欺かは存じませんが、確かに2018年にドレスデンで歌って評価されたと書かれていたドイツレクイエムについて検索しても情報は出てきませんね。
とは言え、小さなサロンコンサートに出ただけで、「海外のコンサートに多数出演」とか書いたり、
もっと酷いのはお金を払って海外の劇場に出演させてもらって経歴を作る人も中にはいますから、経歴に惑わされない耳を聴衆が身に着けなければなりません。
沼尻氏の采配、砂川氏が出て、村●敏●氏が外れるとか・・・。
そうですね、よくある話です。
しかしこの人の場合ロイヤルオペラの研修所であるジェットパーカーにいたと言っていたり、イギリスの超大手事務所インタームジカと契約とある(どちらも当然名前ない)ので、かなり確信犯的な経歴詐称か、虚言癖の類に思われます。SNSではLAオペラに出たことをほのめかしてますね。こちらは公演自体見つかりませんでしたが。
まぁいずれにしてもあの声だとすぐに消えていくかと思いますが。私も聞き手として、歌手の経歴には騙されまいと思います。
最後の1行には笑いました!笑
素人ですがオペラは好きです。何故NHK交響楽団とオペラを一緒にしてニューイヤーコンサートにしないのか不思議です。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートを楽しんだ後なので、幕間に篠崎さん達のワルツの演奏が突然飛び込む不思議な演出。お勉強ではなく、もっと気軽に音楽を楽しめる舞台演出があったらいいのにと観客としては希望です。出演者も老若男女、外国の歌手も交えた楽しい舞台に来年はしてください。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場の舞台が懐かしいです。元旦は何はともあれみんなを勇気づける楽しい演出をおねがいします。
のんちゃんさん
コメントありがとうございます。
>何故NHK交響楽団とオペラを一緒にしてニューイヤーコンサートにしないのか
⇒新国のオケが東フィルなので、ニューイヤーも東フィルなんだと思います。
私はオケにはそこまで明るくないですが、N響はオペラあまり得意じゃないという意見は聞きますね。
二期会、藤原、琵琶湖ホールと、一応日本を代表する団体が集まっていますが、あくまで日本を代表する歌手を集めたコンサートということになっていますので、
海外の有名歌劇場のガラ・コンサートのように、海外の一流歌手を集めるのとは趣旨が違うと思いますが、ご指摘の通り、間にはさまるワルツのようなものは私もいらないと思います。
当日3階席で聞いてた方から感想を聞いたのですが、テレビとはどうせ響きが違うんだろうな、と思いきや、ここに書いてあることと感想があらかた同じでびっくりしました。ちなみに三階まで声がしっかりちゃんと届いていたのは大西、山下牧子、宮里の三氏くらいだったそう。中でも言葉までよく聞こえたのはフィガロくらいだったとか。あとバスのお二人も良かったそう。
声量があっても声にまとまりがないとNHKみたいな大きなホールでは散ってしまうのでしょうね。
めるかりさん
コメントありがとうございます。
NHKホールは確かに生声を聴くには大き過ぎるホールですからね。
大きい声=遠くまで飛ぶ声。ではないのが声楽の面白いところでもあり、難しいところで、
上手い歌手を判断するには、上の階の後ろの席で聴くのが一番手っ取り早いです。
逆を言えば、前の方で聴いてた方は違った感想を持つかも・・・。
オペラに詳しくはありませんが、登場される歌手の方々はの選考基準値てどこにあるのでしょうか
藤原歌劇団所属の山口佳子さん、森野美咲さんは素晴らしいので、来年は是非出演して欲しいです。
オペラは敷居が高いと大方の人はなかなか聴いてくれません
でも総合芸術としても素晴らしいものなので、もっと初心者が入りやすい耳に馴染みやすい曲目をプロデュースして、演奏して頂きたいです。
ミヤジマミヤコさん
コメントありがとうございます。
選出歌手に関しては、二期会・藤原関係者で関東を活動圏にしている方と、時々海外を活動の中心にしている方が加わっている印象ですね。
ただ馴染みやすい曲となると、それこそ毎回「夕鶴」とかやる訳にもいきませんから、
やっぱり、鍛え抜かれた声に衝撃を受ける体験から初心者の方は興味を持つ、というプロセスになることが多いと思います。
だからこそ、本当に優れた歌手が全国放送されるニューイヤーには出て欲しいですね。