11月28日に発表されるInternational Opera Awardsにノミネートされた女声歌手を前回紹介いたしましたので、今回は男声歌手を紹介していきます。
男声と言えば、来年の1月にドミンゴとカレーラスが来日して、「パヴァロッティに捧げる奇跡のコンサート プラシド・ドミンゴ&ホセ・カレーラス」なる演奏会があるようですね。
パバロッティが抜けてもチケットの値段変わらないの凄いな~。
こういう演奏会に行くことが上級国民のステータスなのでしょうか?
私には全く理解できないイベントです。
ですが、気になるのはこの中でゲストとして出演するソプラノのNina Minasyan(ニーナ・ミナシャン)
名前からカザフスタン辺りの出身かと思ったら米国人でした。
とても変わった声をしています。
丁寧な歌い方で、低音でも響きが落ちないのは良いのですが、開放された声ともちょっと違って、それがよく分かるのは”i”母音の響き。
3:38~からの「crace delizia al cor」という歌詞の「delizia」の”li”が奥に入って”le”に近い発音に聴こえます。
響き自体は前にあるのですが、発音のポイントが奥で、そのために発音に影響されて音色もバラツキが出てしまっているように思います。
決して悪い歌手とは思いませんが、これだけ値段の張る演奏会のゲストに呼ばれるのは、名前の知れたスター歌手ではない分荷が重いかもしれません。
その前に、今のドミンゴはバリトンなのに「三大テノール」という看板立てるのはどうなのだろう?テノールアリア歌うのかしら・・・。
と、話が脱線してしまいましたので、International Opera Awardsの話に戻します。
ノミネート歌手は以下の通り
Benjamin Bernheim(バンジャマン ベルネーム)
私がこのブログを始めた当初から礼賛してきたテノール歌手ですが、今ではすっかり大手レーベルからCDを出し、READERS’ AWARDにもノミネートされている現代屈指のテノール歌手になりましたね。
ヴェルディのレクイエム彼の声にとって合っているのか、重いのかはちょっと判断が難しいところではありますが、今後もレパートリーさえ間違えなければ長いキャリアを築ける技術を持った歌手だと思います。
Allan Clayton(アラン クレイトン)
1981年英国生まれの歌手で、YOUTUBEに有名なアリアを歌っている映像がないので、スケジュールを調べたところ、この人はオペラだとブリテンの「ピーター・グライムズ」以外殆ど歌っておらず、メインはオラトリオのソリストやリートなどのコンサート活動が中心のようでした。
声は往年の名ドラマティックテノールのジョン・ヴィッカース(Jon Vickers)のような、決して美声ではないながらも、暗めの音色で重い声でありながら、勢いで張り上げずにしっかり声がコントロールできる歌手ですね。
因みに、ヴィッカースはオテッロの映像が有名なのですが、実はヘンデルのメサイアのソロも素晴らしいです。
クライトンのような大劇場で有名オペラの主役をバリバリ歌っている訳ではない歌手がノミネートされるのは良い事ですね。
Stéphane Degout(ステファン・ドゥグー)
1975年フランス生まれのバリトン歌手
この人はオペラもコンサート活動も幅広くこなしている歌手で、
レパートリーはオペラだとフランスリリック作品を中心に、モーツァルトやヴェルディも時々歌っているようです。
コンサート活動は、バッハ~マーラーまでドイツ物が多く見受けられました。
個人的な好みとしては、発音の芯が鋭いタイプではなく、詩のフレーズ感が埋もれてしまう感じがするので、シューベルトだとどうも重く感じてしまう気がして、マーラーの演奏の方が好みでした。
巧いリート歌手は細やかな表情を、発音、音色の変化、フレージングなんかで出すのですが、ドゥグーは重声質ながら、高音もヴェルディバリトンのように抜けるので、良い意味でも悪い意味でも、声の力が生かされるスケールの大きな曲の方が演奏としては魅力を感じるのは私だけでしょうか?
Enea Scala(エネア・スカラ)
スカラも私がブログを始めてすぐに取り上げた歌手で、これぞシチリアンテノールという、他の国の歌手にはない輝かしい声が最大の特徴!
レパートリーはベルカント物と言われる、ドニゼッティ、ベッリーニ、ロッシーン作品が中心で、フランス語でも頻繁に歌っていることからも、マイアベーア、ベルリオーズなどのグランドオペラ~マスネなどのフランスリリック作品も得意としていると見て良いと思います。
スカラの演奏音源は最近のものがあまりYOUTUBEになく、一度消えた2021年のTeatro Massimoのガラコンサート映像がロシア語で上がっていました。
ここに出演してる歌手はレベルが高く、イタリアの声を満喫できるので、まだお聴きでない方は是非聴いてみてください。
スカラは声が最大の魅力なだけに、この声を何歳まで維持できるかは心配な感じもしますが、今のレパートリー選びを見ている限り慎重に声を管理されているように見受けられるので、どうなっていくのか楽しみです。
Russell Thomas(ラッセル トーマス)
スカラを聴いた後では響きのポイントが低く、体格で声を支えているような歌唱なので正直個人的には好きになれないのですが、昨年も確かノミネートされていたと記憶しているので、審査員にこの人を気に入っている人がいるのかもしれません。
Georg Zeppenfeld(ゲオルグ ツェッペンフェルド)
今ではワーグナーバスと言えばこの人という感じで、世界中の大劇場で歌いまくっていますが、私は圧力で歌っていて、喉声っぽく聴こえるので今一つ好きになれません。
最近まで活躍していたドイツのワーグナーバス、Hans-Peter Königと比較するとツェッペンフェルドとの発声の違いがわかるかと思います。
以上がノミネート歌手になります。
女声の選出でも思いましたが、全体的に実力、知名度ともバランスの取れた良い人選だと感じましたが、ラッセル・トーマスは、読者賞に入っていたAndreas SchagerやMichael Spyresの方がしっくりくるところがありました。
皆様はこの人選どのように感じましたでしょうか?
ご意見などがあればお聞かせください。
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