本日は私が一時期お世話になった方の講習会のお知らせです。
お二人とも個人的にお世話になったことがあるのですが、
私が特にお勧めしたいのは、北條加奈さんの講習会です。
合唱エクササイズと聞いて、
「何かお母さん合唱とか、会社員のおじちゃん、おばちゃん相手に在り来たりな発声の話とかするだけでしょ?」
と思われる方もいるかもしれませんが、
絶対にそういうことにはなりません!
これは断言できます。
大げさな言い方をすれば、北條さんは私の歌唱芸術に関する視野を広げてくれた恩人なのです。
元々は私もただの発声オタクでした。
イタリアのヴェリズモオペラはこういう声で歌われないといけない。
ベルカントオペラを歌う発声はこうじゃないといけない。
シューベルトの歌曲はこういう表現じゃないといけない。
ヘルデンテノールはこういう声質じゃないと歌ってはダメだ。
古楽の歌唱はこうあるべきだ。
そんな凝り固まった先入観で理想の声ばかりを漠然と追い求めていました。
そんな中で、日本語を上手く歌うにはどうしたら良いのか考えて色々模索していた時に出会ったのが北條さんでした。
今回の講習会は
「心と体を解放して、気持ちを声に出して伝える力を開花させる!」
ということをコンセプトにしているとのことで連絡を頂いたのですが、
彼女の指導はそこに命を賭けているとさへ言えると思います。
例えば、イタリアオペラのアリアを歌う良い声と言っても
「Amore 愛」と「Morte 死」を同じ音程、同じ音量で歌ったとしても、
”mo”という音が全く同じ声だったら不自然ですよね?
ちょっと考えれば当たり前のことなのですが、
歌を勉強していると、こういう当たり前のことがすっぽり抜け落ちてしまい、
気付けば発声のことや発音のことばかり考えて、感情を音色に反映させるという部分が忘れられてしまい、結果としてプロとして活躍している歌手にも全然できてない人が沢山いるのが現状です。
そういう私も最初は北條さんの指導に疑問を持っていました。
一般的に言うアペルトな声、息漏れした声、そういった独唱を勉強している人なら絶対注意されるところを積極的に直そうとはせず、
その代わりに息を通すこと、言葉に色をつけることに1にも2にも3にも重点を置いてる。
なので、中で聴いていると合唱団員のフォームが全然揃わなかったのです。
ですが、不思議なことにそういった団体によって歌われた日本語の合唱曲が、
ホールで歌われた時は実に生き生きとした日本語で歌われていたのです。
常識的に合唱をやっていれば言われる
「響きを揃える。」という行為を徹底して嫌い、
個々の自由な表現が、結果として一本の線になることを理想とした音楽作りだった訳ですね。
それなりに人数の多い合唱団が日本語の曲を歌うと、何を歌っているのかわからないことが多々ありまして、皆様の中にもそんな経験をされた方はいるかもしれません。
実際に詩人の谷川俊太郎氏も
「言葉が聞き取れないから、自分の詩は合唱曲にしてほしくない」
と言ったことがあるそうなのですが、
声楽を勉強していても、日本語の歌は上手く歌えません。
という人が結構いることを考えると、
詩人という立場から見れば、言葉を粗雑に扱う歌唱に腹を立てることは当然なのかもしれません。
そんな訳で、私は北條さんに出会えたお陰で、
発声、というのは声を出すだけのスポーツのようなものであり、それを芸術にするのは結局表現であることに気付き、
表現というのは、頭の中でひねり出す理論的なものも時には大事かもしれませんが、最終的には自分の心の動きと連動して声になることで初めて自然に生まれてくるものだと考えられるようになりました。
このブログを始めるきかっけも遡ればそういう部分
つまり、声だけ、知名度だけ、技術だけ、
みたいな歌手ではなくて、
本当に素晴らしい歌を歌っている歌手を紹介して多くの方々に聴いて欲しい。
というところに繋がったのだと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、
北條さんの講習会は、
アマチュアだから、とかプロだから、
という壁を越えて、歌唱芸術が声の芸術ではないことが実感として伝わる内容になると思いますので、ご興味のある方は是非参加してみてください。
因みに私も参加する予定でおります♪
因みに、
発声講座をする松平さんですが、
この方は現代音楽のスペシャリストです。
なので、普通の発声とかじゃなくて、倍音歌唱法とかの講義やって欲しいですね♪
シュトックハウゼンの講習会いったり、多重録音で一人合唱してみたり、
一言で言えば変人です(笑)
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