Hedwig Ritter(ヘドウィク リッター)は1995年、オーストリア・ブルゲンラント州生まれのソプラノ歌手
ウィーン市立音楽芸術大学(MUK)で声楽を学び、
ケルン音楽舞踊大学にも留学経験があるようです。
現在は、ウィーン・フォルクスオーパーを中心に活動し、
来日時には、、『こうもり』のロザリンデや『メリー・ウィドウ』のハンナを歌っており、
徐々に歌う役柄をリリコ・レッジェーロから、よりリリックな方向に転換している最中にあるようです。
ぶらあぼのインタビューの中でも、ローエングリンのエルザを歌うのが目標と語っており、
今後は、Rシュトラウスやワーグナー物での活躍が期待されます。
2023年来日時のインタビュー記事はこちら
そんなリッターの演奏は、残念ながら本人のチャンネルでは、
ヘンゼルとグレーテルを歌った時の2つしかなく、正直ここで紹介できるソースが欠けていました。
こちらがグレーテルを歌った時の映像ですが、
この演奏でも上手さは十分伝わるんですが、流石にグレーテルだけで
「凄い若手歌手やで~!」と言っても、ちょっと情報が少ない過ぎる。
そこで、遂に見つけました。
最近のコンクールで歌って映像、しかも彼女がこだわるエルザの夢を歌っているのが聴けます。
この演奏で30代前半とか、期待感しかありません。
3:37:05~がリッターの演奏です。
エルザという役は、夢の中の騎士に助けて貰う妄言を語るわ、
オルトルートに簡単にだまされるわ、
初夜にパートナーを疑うわで、とても残念な女性という印象が先行するところもあるのですが、常識的に考えて、「名前は聞くなよ。」とか言う白鳥に導かれてきた騎士を、無条件に信じる周りもおかしくないか?
という話で、周りが妄信している対象に対して、信じるために正体を知りたいと思うのは、とても自然な行動だと私は思うんですよね。
ロシアにも「Доверяй, но проверяй」(「ドヴィリャイ、ノ・プロヴィリャイ」)、「信頼せよ、されど確認せよ」ということわざがある。
と、まぁ、エルザ役の解釈についてはここまでにして、
つまり何が言いたいかと言うと、エルザは別に弱い女性なのではないということ。
そしてリッターの演奏よ。
何と気品があって、低音にも深さがあることか。
2023年のインタビューで語っている通り、確かに理想的なエルザの声ではないか!?
技術的に部分にも少し触れると、何といっても母音の幅がブレず、つま先かた頭まで、息のラインが繋がっている。
しっかり発音は前でさばけているが、息が発音につられて前に吐き出されることもなく、発音に必要な最低限の筋肉の動きで対応できている。
だから口のフォームも余計な動きがなく安定している。
これを実現するには、兎に角舌の扱いがキモになってくるのですが、
この若さで発音が硬くならずに子音を明瞭に、そしてレガートで処理できるというのは、本当に凄いことです。
後の2曲はあまり頭に入ってこず、もうこのエルザの夢の上手さに圧倒されました。
一応このコンクールで歌った他の曲についても簡単に書くと、
2曲目に歌ったドビュッシーは、低音で声が太くなるのがやや気になりますね。
息の量が多過ぎる気がするので、高音と低音で音質に統一感がなく聴こえてしまいました。
3曲目のシュトラウスの歌曲は、一言で言えばアリアのように歌い過ぎ!
アリアと歌曲でもっと言葉の出し方や、ディナーミクはかえて欲しいところ
私の大好きなテノール、 Rüdiger Wohlersの「Cäcilie」を聴いて頂ければ、
私の言いたいことが伝わるのではないかと思います。
と言うことで、
リッターはハマる曲を歌えば、現在でも一流レベルの演奏を聴かせてくれる能力は十分ありますが、まだまだ改善の余地はありますし、
何と言っても年齢的に声はまだ完成されていないでしょうから、今後さらに演奏に磨きが掛かっていくことでしょう!
日本にも良い印象を持っているようなので、今後も来日して演奏に触れる機会はあるかと思いますので、応援していきたいと思います!
コメントする