暫くは新しい情報を発信することができないので、主要な劇場や演奏家の活動より、
コンクールや教育機関について調べて発信することがメインになってきてしまっている気がしますが、今回もその一つ
Livermore Valley Operaという若手オペラ歌手育成機関についてです。
この世界的なイベント中止機関中に、ネットで自主的に公演したと思われるオペラをYOUTUBEに次々と最近アップしており、モーツァルトの後宮からの誘拐は台詞が英語、歌がドイツ語というちょっと独特な様式をとっていたりしますが、そういう部分も含めて世界的に観たセミプロ~プロへなろうとしている歌手がどんな感じかわかるという意味で中々興味深いです。
Livermore Valley Operaの
HPはコチラ
ヴェルディ 仮面舞踏会(全曲)
こちらは昨日(2020/5/2)公開された仮面舞踏会
玉石混交感がこういう公演を聴く面白いところ。
高いレベルを期待して聴くと言うよりは、良い歌手に出会えればラッキー位の感覚で聴かないと楽しめないかもしれませんが、
こういうところで光るモノを持ってる歌手を見つけると喜びは大きいものです。
この公演では、アメーリアを歌ったSarah Cambidgeが持っている声に関しては頭1つ抜けているように感じました。
男声陣は主役2人が頑張って高音も出せてはいるものの、まだまあ生声っぽく、無理やり力技で前に響かせようとしている感じでした。
ある程度高い音域になると響きの質が変わってしまって、明らかに硬く締まった声になってしまう。
体格がある歌手は圧力で押し切ってオペラ1本歌えてしまうのですが、この歌い方が40・50歳まで声を維持して続けられるとは思えません。
モーツァルト 後宮からの誘拐
モーツァルトはやっぱり難しいですね。
勝手なイメージなんですが、モーツァルトを歌うテノール=鼻声気味の人が多い気がします。
もとから地声と裏声の境目がないような持ち声の歌手でないと中々自然に歌うことが難しく、ロマン派オペラのように劇的な声で歌う訳にもいかないし、主張し過ぎない声でサラっと歌うのがテノールにとってどれ程難しいことか・・・。
全体的なことを言えば、この作品は台詞の部分が英語で歌になるとドイツ語になるので、
英語とドイツ語で響きの違いがはっきりしてしまっている歌手は、歌ってもフォームにバラツキがあるように感じます。
そのような視点で聴くと、オスミン役を歌っている方は中々安定感のある歌唱をしていると思います。
バリバリ鳴るような声を持ってはいませんが、発音のポイントがあまりブレないので、歌の集中力が維持できていて、歌唱が真っすぐ届く入ってくる。
一方の主役の2人。
テノールは前述の通り、前に響いてはいるもののどうしても鼻に入ってしまってあまりドイツ語っぽく聴こえないのですが、
コンスタンツェを歌っているソプラノも、技術的には上手く歌えていても、どこか英語っぽさがあって、発音が奥で響きが鼻といった感じに聴こえてしまう。
ロッシーニ セビリャの理髪師
こちらも全体的に歌手の癖は、鼻の響きが強い歌手が多く、
意外と米国でも鼻腔共鳴は重視されているのかな?ということが聞き取れるのですが、
その中で異彩を放つのが、ロジーナを歌っているShirin Eskandani
この人は、イラン系のカナダ人のようなのですが、明らかに他の歌手と響きの質が違います。
ロッシーニ チェネレントラ Non Piu Mesta
響きが鼻寄りの点ではなく、
もっと広く、鼻より下の硬口蓋部分で、発音も同じポジションなので、しっかり言葉として歌声が聞こえてきます。
低音でも、太い声にしなくても明瞭に響いて、焦点の定まった響きを維持できているのは素晴らしいですね
と、こんな感じで研修機関や大学が企画しているオペラでは、時々凄い才能を持った歌手、
粗削りながらも大変魅力的な声を持った歌手に出会うことがあって、
ついつい見かけるとチェックしてしまいます。
他にこういう映像をアップしているところとしては、米国で言えば
niversity of Michigan School of Music, Theatre & Dance
なんかがありますので、
もし引きこもり生活で特にやることもない・・・
という場合には、こういうところから注目の歌手を探してみるのも一興かもしれません。
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