本来オーケストラ伴奏によって演奏される、マーラーの大地の歌ですが、
時々ピアノ伴奏で演奏されることもあります。
とは言え、大指揮者がピアノ伴奏を務め、一流歌手がソリストとして出演した演奏会が、
まさか日本で行われていたとは知りませんでした。
マーラー 大地の歌(ピアノ伴奏版 全曲)
ピアノ Wolfgang Sawallisch
アルト Marjana Lipovšek
テノール Gösta Winbergh
調べてみると、この演奏会は
とてつもなく貴重な映像であることは間違えありません。
バレンボイムやエッシェンバッハのようにピアニストとしても有名な指揮者ならば驚くことはありませんが、サヴァリッシュは著名なピアニストだった訳ではなくてもここでは見事な伴奏を聴かせています。
ピアノを弾いても指揮同様に誇張がなく、カッチリ、スッキリした演奏で、本来は不思議な色気のある2曲目 Der Einsame im Herbst(秋に寂しき者)の透明感は、オケで聴くのとは随分イメージが違って新鮮です。
独特なポルタメントを所々駆使したり、
好き嫌いは分かれるかもしれませんが、低音ではやや作ったような胸声を強めに使ってみたりと、マーラーの描く旋律線を効果的に浮かび上がらせる演奏をしているように感じました。
1946年 スロヴェニア生まれなので50歳の時の演奏
冒頭に紹介した大地の歌のようにドイツ物を主に歌っているイメージがあったのですが、
この演奏会ではイタリア古典作品からフランスオペラのアリアまで歌っていて、大地の歌で聴かせるのとは全然違う歌い回しを聞くことができます。
実はアグネス バルツァみたいな、とんでもなく多彩な声の使い分けができる歌手だったんですね。
リポヴシェクのように一流歌手としての認知度はそれほどされていないのではないかと思います。
ですが、私は個人的に現代的なヘルデンテノールとして高く評価しています。
モーツァルトを歌いながらワーグナーを歌える強さと柔軟さがあり、
Rシュトラウスの歌曲でも素晴らしい録音を残しています。
これは生で聴きたかったな~。
魔笛のタミーノ、後宮からの誘拐のベルモンテ、ドン・ジョヴァンニのオッターヴィオの演奏は知っていましたが、フェッランドを歌っている映像もあったのは今日初めて知りました。
決して美声ではありませんが、歌唱技術は間違えなく一流です。
ディナーミクも、アジリタも自然で無理がない。
高音のピアノの表現はファルセットを駆使していますが、決して違和感はありません。
ワーグナー ニュルンベルクのマイスタージンガー Morgenlich leuchtend im rosigen Schein
この演奏より大地の歌の演奏の方が声にノビがありますね。
こちらはやや勢いで歌っている感じで、声がハスキーになってしまっている感がありますが、
大地の歌の演奏は圧巻と言えるような素晴らしい出来栄えです。
こうして聴いてみると、ピアノ伴奏版の大地の歌、日本初演はテノールのソリストに絶好調のヴィンベルクを呼んでくることができたことがわかります。
このところ日本で行われた演奏会の映像が色々アップされているので、
書くネタが無くならずに済んでおります・・・
と思っていた矢先に、名ベリトン ガブリエル バキエが亡くなったというニュースが飛び込んできましたので、次回はバキエに関して記事を書きたいと思います。
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