リリックメゾとして売れてるPAOLA GARDINAの良さとは何なのか?

PAOLA GARDINA(パオラ ガルディーナ)1976年、イタリア生まれのメゾソプラノ歌手。

 

ヘンデル、モーツァルト、ドニゼッティ作品を中心に、フランス物でも活躍しているガルディーナは、ヨーロッパだけでなく、米国やロシアでも歌っており、まさに世界的な活動をしているメゾソプラノと言えます。

今年の予定は、3月にトリノ王立劇場でコジ・ファン・トゥッテのドラベッラを歌う予定となっています。

 

 

 

モーツァルト フィガロの結婚 Voi che sapete

出だしから「え!?」と思わされる声を出しているために、良い部分もあるのですが、
どうしても癖が目立ってしまう印象です。

まず、イタリア人歌手なのに、なぜこんな子音に力みがあるのかが不思議なのですが、
考えてみれば、モーツァルト作品のメゾ役って、あまりイタリア人歌手で得意にしている人が案外思い当たらない・・・。

とは言え、同じ80年代生まれにコンパラートというちょうど良い比較対象となる歌手がいました。

 

 

 

Marina Comparato

コンパラートは本当に癖のない歌唱をするので、ガルディーナの子音が如何に不自然かがわかります。

簡単に例を挙げると、出だしの「Voi」の”v”

半拍くらい唇を噛んでいる音が聴こえます。
これが伯爵夫人に呪いの手紙を読み聞かせるとかいう場面なら良いでしょうが、
その真逆で、音楽や場面と合っていません。
これが彼女なりに考えた表現として行っているならまだしも、そうではなくのが問題でしょう。

続く歌詞の「donne」の”d”
ご婦人方。という意味の頭の”d”をこんな強く立てる意味がわかりません。
リゴレットの公爵のアリアで、La donna e mobile(女心の歌)というのがありますが、
出だしで”d”を立てる歌手なんてまずいないですよね。

その他にも、
「Quello」や、「pien 」のような1音節で素早く2つの母音を発音する、二重母音の処理がもたつく。
二重母音について詳しく発音を知りたい方は、英語ですが以下のような動画を発見しましたので参考にしてみてください。

 

 

 

「S」の子音が一々硬い。

「Gelo」の”ge”がフランス語の”ʒ”みたいな発音になっている。
これ、フランス物とイタリア物を平行して勉強してた時に私もやらかして、イタリア人に怒られたことあるんですが、なぜイタリア人のガルディーナに変な癖があるのか謎です。

 

こんな感じで、私がぱっと聴いただけでもこんだけ発音の癖が挙げられます。

 

なお、コンパラートについては過去に記事を書きましたので、そちらも参照頂ければと思います。

 

 

◆関連記事

言葉で歌うモーツァルトを得意とするメゾソプラノMarina Comparato

 

 

声については、
響きその物は決して悪くないと思うのです。
ですが、時々”o”とか”e”母音が特に崩れる・・・?
いゃ、崩れるという言い方も正しくないかもしれませんが、
特に下降音型で作ったような響きになったり、響きのポジションが全く変わってしまったり、
一番気になるのは伸ばしている音が常に揺れていたりすること。

だからと言って、常に奥まった声な訳でも、前に当て過ぎる感じで鋭くなってしまう訳でもない。
何か彼女の中で表現としてやろうとした結果、声には良くない影響が出ていると考えられるのですが、ここまで短い曲の中で良い部分と悪い部分が混在していると、どこに課題があるのかも判断が難しいですね。

 

 

 

モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ(全曲)

1幕

 

 

2幕

 

これを聴く限りでは、録音状況などもあると思いますが、ケルビーノほど子音に癖は感じられないですね。
その一方で、とにかくレガートが甘い。

ガルディーナだけでなく、女声陣全員の音楽がブツブツ切れて聴こえます。
そんな中で、アルフォンソを歌った英国人バリトン、シメル は線こそ細いですが、レガートの技術は見事なものです。

 

 

 

William Shimell

 

 

 

 

 

 

ロッシーニ チェネレントラ(全曲)

ガルディーナの演奏をとりあえず聴きたい方は、フィナーレが有名なアリアなので、最後の10分位を聴いて頂くのが良いと思います。

今まで紹介してきた演奏は数年前のものですが、こちらは昨年12月のもの。
この演奏を聴いた時は、正直ソプラノが無理にメゾをやっているように聴こえました。

高音はノビがあって、多少絶叫気味になってしまう部分もありますが、
ノビがあって、低音のように響きが乗っていない感じではありません。

ラミーロ役を歌ったシラグーザの演奏と比較すると、完全にカーテン一枚隔てたような演奏です。
なおシラグーザのアリアは1:49:50~

 

こんな感じなので、正直世界中の劇場で歌っているという現状と実力にはどうしても乖離があるように見えてしまいます。

あまりYOUTUBEに演奏がアップされていないので、もしかしたら舞台では素晴らしい演奏をしているのかもしれませんが、オペラ全曲の中で他のキャストと比較しても、特にガルディーナが上手いと思える部分がないことからも私には引っかかるところです。

皆様はガルディーナの演奏をどのように評価されますでしょうか。

もしよかったら感想など頂ければ幸いです。

 

 

CD

 

 

 

1件のコメント

  • tamura_kazuhisa より:

    ヴィヴァルディの”Juditha Thriumphans RV 644″はオペラではなくオラトリオですが、 Paola Gardinaが Vagaus役で出演している動画があります…ほぼラストで歌われる”Armatae face et anguibus”の歌唱はどうでしょうか…https://youtu.be/g2VlmgIRFlQ @YouTubeより

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