中国交响乐团 2020.10 La traviata

中国での中国人キャストによる演奏レベルはどれほどのものか?

アルフレードを歌っているYijie Shi (石倚洁)は過去の記事でも紹介しました通り、日本にも留学していたこともあって、注目している歌手なので、今回はこちらの椿姫から中国人歌手の現状を見ていきたいと思います。

 

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この演奏は2020年10月。
中国は感染対策上手くやってるとよく言いますが、その中国が10月にこれだけお客さん入れて、普通に歓声飛ばしてる上に、団員だけでなく聴衆にもマスクを着けてない方がいる訳ですから、いかにこれらの行為が感染防止対策としては意味をなしてないかがわかるというもの。

それはともかく、
やっぱり石倚洁は飛び抜けて上手い。
明るく軽く言葉が真っすぐ飛んでアジリタも上手い。
本当に穴のないテノールで、
アジア系の歌手から見て体格に勝るゲルマンやスラヴ系の歌手に太刀打ちするには、よっぽど特別な楽器を持ってる人意外は彼の歌唱をお手本とすべきだとさえ思えてしまう。

以下は石倚洁による中国歌曲のリサイタル映像。

 

 

常に上の歯が鳴ってる感じなんですよね。
凄く薄い息で丁寧に発音していて、決して喉を押さないので、ディナーミクのコントロールが変幻自在。
東邦出てるんだから、大学はなんとしてもこういう人を先生に引っ張ってこないといけないと思う。
この人講師にいたら、金銭的な部分はあるにせよ、テノールは特に他の音大より東邦選ぶと思うけど・・・。

 

ヴィオレッタを歌っているソプラノ、Erica WenMeng Guは、
特に前半は良くも悪くも安全運転。
必要以上にドラマティックな表現をせず、世間一般のヴィオレッタの声のイメージ。
つまりはレッジェーロではいけない。というものに影響されず、事故らない歌い方、
コントロールできる声の範囲内で表現している。

これは結構難しくて、聴衆が劇的な表現を求めていることをわかった上で、特に最初のアリアで自分のスタイルを貫いて歌うというのは中々できることではないので、常に理性的な歌唱をする人なのでしょう。

終幕でやや声の使い方のバリエーションを増やして対応していましたが、それでも透明感のある響きを失わず、決してヴェリズモ的にはならないで歌っていたのは好感が持てました。

ただ、苦手な音域があるのか、抜けきらない部分、やや音程が低くなる部分が時々あって、軽い声の割にはあまりピアノの表現が得意という訳ではなさそう。
それでも、中低音も響きが乗って籠らない。これが大多数の日本人ソプラノにできないんですよねぇ。

 

ジェルモンを歌ったバリトンのChen-Ye Yuanは・・・
この演奏会で一人だけ喉声でした。
響きの質が根本的に2人と違う。
こういう吠えてる歌手は完全にヴェルディバリトンをデカい声で歌えば良いと勘違いしているのではないかと思えてしまう。

 

こんな感じで、
発声的に本物と偽物の違いがよく分かる演奏会だったと思いますが、
主役テノールとソプラノの声に変な癖がないと聴いてて心地よいですね。

ドラマ的に引き込まれるかと言われれば、演奏会形式だし、もっと総合的に見て良い演奏は沢山あるでしょうが、ヴェルディの椿姫という作品を、ベルカント物寄りにとるか、ヴェリズモ寄りにとるかで考えた時、現在はかなりヴェリズモ寄りな演奏スタイルが好まれる気がするのですが、
私はこういうスッキリめで伸びやかな声を前面出して、テンポよく演奏されるのも聴き易くて好きでした。

 

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