Teatro La Fenice ヴェルディ 漢だらけのガラ・コンサート

今回は、フェニーチェ歌劇場で行われた、ヴェルディ作品のハイライトを集めた演奏会を紹介いたします。

 

 

この演奏会は、2021/4/27にライヴ配信されたもので、
バリトンのLuca Salsiと、バスのMichele Pertusiを中心に据えて行われたようです。

 

 

<キャスト>

Luca Salsi baritono
Michele Pertusi basso

Chiara Brunello mezzosoprano
Cristiano Olivieri tenore
Armando Gabba baritono
Matteo Ferrara basso

 

通常のコンサートのように、出演者全員がほぼ同じような曲数を歌うというのではなく、サルシとペルトゥージがアリアを歌い、他の歌手は2人に絡んだ重唱で歌うという程度なので、ガラ・コンサートと言いながらもとにかく男くさいプログラムになっています(笑)

 

サルシは現在一番勢いのあるヴェルディバリトンの一人だと思うのですが、
個人的には高音は強いが低音の線が細いイメージがどうしてもぬぐえない。

その理由としては、響きを集める。ではないですが、どうも喉が開ききっていない、所謂まだ喉が少し上がった状態で前に響きを集めにいっているように聴こえることだと思います。

響きの深い、浅いのことを言うと奥行。
つまりは唇~軟口蓋から耳の後ろの蝶番のようになっている部分にかけてのことを考える人が多くて、私も30歳を過ぎる位まではそう思っていました。

言葉では分り難いので図を入れると、下図で言う間接円板に息を通すことを、息を回すと表現して説明される方が多く、それが深い声に繋がると多くの声楽学習者は考えるようになります。

 

 

勿論それは間違っていないと思うのですが、問題はそれ以上に喉が上がっていたらどうにもならないということで、顔の筋肉では深さは本当の意味でコントロールできません。
奥行ではなくて、縦の深さと言えば良いのでしょうか?
これがあるかないかがサルシとヴァッサッロの歌唱を比較するとよくわかります。

 

 

 

FRANCO VASSALLO

あまり有名ではないかもしれませんが、近代最高のヴェルディバリトンは個人的にこのヴァッサッロだと思っています。

ゆったりした息の流れと決して当てたような硬さのない高音、
柔軟なフレージングと柔らかく豊な低音の響き。
彼と比較するとサルシの歌唱は母音によって響きの質にバラツキが出たり、それ以上顕著なのはレガートの質で、フレーズごとにブチブチ切れるようになってしまうことが多々あるサルシに比べ、ヴァッサッロはフレーズの中だけでなく、曲全体を通しても一本の線で繋がっているかのように、休符やブレスでも音楽の緊張感が切れない。

サルシは勿論素晴らしい高音のポジションをもっているバリトンですが、強い高音がでるバリトン=ヴェルディバリトンではありませんので、今後彼にはもっとレガートを兎に角磨いていって欲しいと思います。

 

一方のペルトゥージは流石と言うべきでしょうか。
太い息を細く使う。と表現すれば良いのでしょうか。

喉がしっかり開いて太く重い声を集まった細い響きで歌うことができる。
これが低声歌手の極意みたいなものだと思っているのですが、
太い声をそのまま前に発散してしまうと、芯のない声になってしまうし、
前に響きを集めようとすると、当然喉が上がって押した声になってしまう。

全ての声種に共通することではありますが、バス歌手は特にこの傾向が顕著にでます。

 

 

 

ロッシーニ セビリャの理髪師 la calunnia è un venticello

デフォルメ声を随所に使う歌手が多いこのような曲でも、ヴェルディのような声を出しながらも、言葉はしっかり前に出るところが彼の素晴らしいところ。

曲の表現として好き嫌いはあるかもしれませんし、ロッシーニを歌うには重いと感じる方もいるかもしれませんが、並のバス歌手なら何言ってるか分からなくなるような太い声を、
芯のある、所謂しっかりティンブロのある声で歌えるペルトゥージの発声技術の高さがよくわかる映像だと思います。

 

 

 

 

 

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