Sierraと言えばNadine Sierraというソプラノ歌手が有名ですが、
実力に見合わない人気を獲得してしまった歌手として、度々彼女の歌唱については触れてきたのですが、Sierraという名前で、大変素晴らしい気鋭の若手メゾソプラノを発見したので、今日はメゾソプラノのSierraについて紹介しようと思います!
彼女の名前は、Emily Sierra
キューバ系米国人で、ジュリアード音楽院を卒業後、メトのオーディションで優勝という絵にかいたようなエリート街道を突き進み、21-22シーズンからバイエルン国立歌劇場のメンバーになっています。
Emily Sierra, final recital
<プログラム>
BIZET
Habanera – Carmen (0:11)
MORRIS
Heigh-ho – Traditional Welsh Folk Song (4:41)
C. SCHUMANN
Die Lorelei (7:42)
MASCAGNI
Povero amico… O pallida che un giorno – L’Amico Fritz (10:34)
HANDEL
Sta nell’Ircana, pietrosa tana – Alcina (13:00)
HEGGIE
Animal Passion (19:15)
DRING
Song of a Nightclub Proprietress (22:50)
SAINT-SAENS
Mon coeur s’ouvre à ta voix – Samson et Dalila (26:09)
カルメンとサムソンとダリラのアリアは、メゾであれば声に合っているかどうかに関わらず、ほぼ必ず歌う曲だと思ういますが、だからこそ、自分の声で表現できる範囲を理解して、往年の名歌手の演奏に捕らわれない、独自のスタイルで歌う歌手も大勢いるのですが、シエラもその一人と言えるでしょう。
カルメンの演奏は、清潔感のある語り口と、本来アクの強さが強調される低音でも、丁寧な歌い方をしていて、世間一般のカルメン像とは異なるのではないかと思いますが、若い歌手がこの曲を歌うスタイルとしては個人的にとても好感が持てます。
次に歌っているウェールズのフォークソングは、この演奏だけを聴くとソプラノかな?
と思える高音の強さを聴かせています。
その分、まだ上半身で歌っている部分があって、中音域をフォルテで歌っている時なんかはちょっと押してる感じがあるのは仕方ないことなのかもしれません。
これも、年齢を重ねて身体がもっとできてくれば、メゾらしい深さがでてくることでしょう。
続くクララ・シューマンの歌曲
カルメンでも語り口が実に素晴らしかったのですが、ドイツ語だと尚更、唇の使い方の上手さがよくわかりますね。
続くイタリア語の作品の演奏は、上手いとは思うのですが、
他の作品ほど印象に残りませんでした。
技巧を聴かせるヘンデルの作品は、どうしても低音が鳴らないと今一つ恰好良さが出ないところがあるのか、シエラもちょっと落ちたポジションで押し気味な声を出してしまっている感じでした。
シエラはソプラノっぽい声で中低音も出る歌手といった感じなのですが、その逆で、メゾの音質ながらソプラノっぽい軽やかさを備えた声でうたうコノリーのようなタイプの方が、ヘンデルの演奏のイメージに合っているのですが、まぁ、これは私の好みなのかもしれません。
Sarah Connolly
間の曲を飛ばして、最後のダリラが何と言っても素晴らし!
こういう緩やかなテンポの歌だとシエラは低音でも押さないので、兎に角レガートが絶品。
レガートで低音と高音がしっかりつながっているために、高音も重心が浮いた感じにならず、深さを失わないメゾの音色で出すことができているのが、他の曲の演奏と比較して個人的に素晴らしいと感じたところです、
若い頃のガランチャと比較しても、シエラの方が上なんじゃないかなと私は思うんですが、皆様はどう感じましたでしょうか?
Elīna Garanča(2007)
ガランチャは”e”母音が横に開かないようにとにかく注意してる感じがして、
ちょっと暗い音色に作り過ぎてる気がするのですが、シエラの”e”母音はとても自然なんですよね。
節村美穂子氏ですら、このアリアの”e”母音は崩れていたのに・・・、というちょっとマニアックな視点からもシエラのダリラの演奏を評価していたりします♪
今後ばバイエルンで活躍すると思うので、要注目の歌手です!
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