ウィーン国立歌劇場のスター候補生ソプラノ Maria Nazarova



Maria Nazarova(マリーナ ナザロワ()ナザロヴァ)はロシアのソプラノ歌手
2016-17シーズンからアンサンブルメンバーとしてウィーン国立歌劇場で歌い始め、
現在は一部のオペラでは主役を歌うまでになっている。

今回は知人がウィーンに旅行に行って、ウィーン国立歌劇場にも行くという話を聞いたので、
気分的にこの劇場の現在の歌手の状況を取り上げてみようと思う。

 

国際的に活躍しているスター歌手は勿論沢山出演しているのだが、
今回取り上げるのは若手の歌手

若手ということで、必然的にソプラノはスーブレットソプラノの役を得意とする比較的軽めの声が中心になる。

 

 

 

声種:ソプラノ

Valentina Nafornita

【今年の出演:フィガロの結婚 スザンナ役】
モルドヴァ生まれのソプラノ歌手
高音のピアニッシモには魅力があるのだが、問題は中音域の硬さ
表情を見ていると、なぜか中音域を歌うと眉間にシワ寄る。
間違えなく変な所に力が入っているので、このクセが取れない限り飛躍は難しいかもしれない。

 

 

 

声種:メゾソプラノ

Virginie Verrez

【今年の出演:フィガロの結婚 ケルビーノ役】
フランスのメゾソプラノで、フランスの歌手らしく端正な歌唱を聴かせるが、
問題は響きや声そのものより上体だけで歌っているところ。

 

 

 

フォルテで高音を出しているところの写真だが、
こんな姿勢で高音を出してる地点で良い声出てなさそうに見える。
アマチュア合唱団員が歌ってるみたいな前傾姿勢で、下半身が使えてない歌い方になるのも当然。
彼女の指導者はこんな基本的なことも指摘しなかったのか?

 

 

 

声種:テノール

Jinxu Xiahou

【今年の出演:ドン・ジョヴァンニ ドン・オッターヴィオ役】
軽い声のはずなのにやたら重く感じる。
それは響きのポジションが鼻だから。
もっと芯が通った、軽くて解像度の高い響きは鼻に入れてる限りつかめない。

 

 

 

声種:ソプラノ

Andrea Carroll

 

【今年の出演:愛の妙薬 アディーナ役】
キャロルは米国のソプラノ歌手で、昨年の同劇場でのドン・パスクワーレ。
ノリーナ役をやっている映像がありましたが現在は削除されてしまっているようです。
重唱なんかで声が重なると、明らかにキャロルの響きは奥まっていて言葉も引っ込んでしまっているのがわかる。
演技も重要ではあるが、声だけで演技を想像させられる程の表現が出来てこそ一流の歌手である。

 

 

 

声種:ソプラノ

Olga Bezsmertna

【今年の出演:ラ・ボエーム ミミ役】
ウクライナのソプラノ歌手で、
ザルツブルク音楽祭の若手発掘プロジェクトにより2011年からオーストリアで歌っているようだ
今まで紹介してきたソプラノより太めの声質ではあるが響きの高さは持っている。
だが、東欧の歌手に多い中低音で飲んでしまうような響きなってしまうことと、
やや強めヴィブラートは気になるところ。
やはりどこかパワーで持って行っている部分があるので、最高音なんかも、もっと綺麗にだせそうなのに、
自らブレーキを踏みながら声を絞っているようで非常に勿体ない。
今後は、癖が取れれば素晴らしいリリックソプラノになる可能性もあるし、
ヴィブラートが更に強くなって残念なことになってしまう可能性もある。
持っている声は素晴らしいので、是非とも活躍して欲しいものだが・・・。

 

 

 

 

上記と比較してナザロワはどうか?

Maria Nazarova

【今年の出演:ラ・ボエーム ムゼッタ役】
いかがだろうか?
上記に挙げた他の歌手と明らかに響きのポイントが違う。
高音から低音までしっかり同じポイントで芯の通った響

 



 

Jシュトラウス こうもり piel ich die Unschuld vom Lande

こちらは昨年の同劇場でのアデーレ役。
実に見事である。
このレベルで歌える歌手はそういない。
他の若手歌手と比較して、この人はレベルが頭一つ抜けている印象を受けた。
そんな訳で今回はマリア ナザロヴァをスター候補生最有力として押したい。

 

 

 

2018年のデュオリサイタル
バリトン Igor Onishchenko

ピアニストとも息が合って、色々遊び心に満ちた演奏会で非常に面白い
ナザロヴァの声は多少鋭過ぎて、もう少しマイルドな響き、
深い響きにもっていきたいと感じる人もいるかもしれないが、
深さや音色の暗さは歳を重ねて備わってくる部分もある。
といより、若い内に深追いすると大けがする部分でもある。
特に軽い声の歌手は楽器が出来上がっていない時に変に声を被せたりすると、
本来の高音を失い、声が揺れるという大惨事になってしまう。
その辺り、ナサロヴァは自然に出るままに声を出している印象で、
小細工をしないところに好感が持てる。
若い歌手はこうあって欲しい、という姿を聴かせてくれているように思う。

 

 

 

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