Anna Delfinoの歌唱が若手イタリア人ソプラノの希望に聴こえる!

Anna Delfino(アンナ デルフィーノ)はイタリアのソプラノ歌手。

9歳の頃から声楽とオーボエを一緒に勉強していたというちょっと変わった経歴の持ち主。
2010年前後に大学を出ているようなので、現在30代半ばくらいではないかと思います。

活動範囲はイタリア国内のようでオペラと宗教曲のソリストをやっているようで、キャリアだけ見ればもっと大きな劇場や、世界各地の劇場を飛び回っている同じような年代のイタリア人歌手は沢山いると思うのですが、色々なイタリア人ソプラノを聴いた結果として、デルフィーノの歌唱に私は一番希望感じました。
と言うより、極端な言い方をすれば、絶望的な気分になる程に喉を押してるソプラノがイタリア人に多いこと。
何人かここで紹介してみますので、是非皆様も聴き比べてみてください。

 

 

 

Regina Grimaldi

モーツァルト コジ・ファン・トゥッテ Come Scoglio

 

 

 

Arianna Vendittelli

ヘンデル セルセ Ombra mai fu

 

 

 

 

 

Nicola Pascoli

ドニゼッティ ドン・パスクワーレ Quel guardo il cavaliere

 

 

 

 

 

Francesca Tassinari

モーツァルト フィガロの結婚 Giunse alfin il momento..Deh vieni non tardar

 

 

 

 

Camila Titinger

モーツァルト フィガロの結婚 Porgi amor

 

 

 

 

Federica Vitali

レオンカヴァッロ 道化師 Qual fiamma avea nel guardo

 

 

 

 

Angela Nisi Traviata

ヴェルディ 椿姫 E’ strano… Sempre libera

 

 

 

 

Luciana Distante

プッチーニ トスカ Vissi D’arte

 

 

 

 

Gilda Fiume

モーツァルト ドン・ジョヴァンニ Non mi dir

 

 

 

 

 

 

Anna Delfino

ベッリーニ 夢遊病の女 Care compagne

 

上に紹介した方々は全員活躍しているイタリア人のソプラノ歌手です。
ですが、程度の差はありますが、このデルフィーノだけが喉を押さない歌い方をしていると思うのですが、皆様にはどう聴こえるでしょうか。

喉を押すと、どうしても硬くて鋭い声になってしまうし、ピアノの表現で広がりがなくなる。
こういう声はイタリアに留学した日本人歌手、具体的に名前を出すとフレーニの弟子を豪語している宮本 史利氏なんかもやっぱりこういう声なんですよね。

特徴としては、鼻声の人はいないのですが、逆に音圧で無理やり前に響きを集めたような声になるので、どうしても音色に変化がつけられず、表情の貧しい歌になり易いんですよね。

どうやらイタリアの名ソプラノ、Barbara Frittoliも、レッスンを受けた事がある人曰く、イタリア国内の若手歌手に喉を押している人が多いことを嘆いていらっしゃるということなので、
イタリア人だから発声良いなんてことは全然ないことは改めて書かせて頂きたいと思います。

 

 

 

 

ドニゼッティ ランメルモールのルチア Quando rapito in estasi

 

こちらが2015年の演奏。
高音が圧倒的に素晴らしい訳ではないのですが、
とにかく中音域に暖かみがあって、決して太い声ではなく、それどころか細い響きで低音をしっかり響かせることができるために、多くの歌手がこのアリアを歌っても高音や技巧にしか耳がいかないところが、デルフィーノの場合は聴かせ処ではないところで旋律美をしっかり聴かせることができる。

 

 

 

 

Jシュトラウス こうもり Mein Herr Marquis

 

 

 

 

 

Catalina Bertucci

カタリーナ ベルトゥッチは名前からしてイタリア人のようですが、
チリ系のイタリア人で、声楽はチリで始めた後、ケルンの音楽大学を出ているので純粋なイタリアーナソプラノとは違うと私は考えています。
その理由は、彼女のレパートリーの中心はドイツ物なのです。

勿論イタリア語のオペラも歌ってはいますが、ドイツ物の宗教曲のソリストやベルクの歌曲なんかも歌っているほどです。

さて、イタリアはベルカントでドイツ物はドイツ式の発声。
なるものがもし本当に存在するのであれば、ベルトゥッチのような歌手をどう定義づけるのか、秋山隆典氏のような方に意見を聞いてみたいものです。

それはともかく、デルフィーノは経歴を見た限りイタリア国内でしか活動していないのですが、ドイツ語が中々美しいので驚きました。
ドイツを中心に活躍しているベルトゥッチと比較しても、ちょっと歌詞間違えてるところはあるようですが違和感は感じません。
それどころか、こんな美しいレガートでアデーレ歌える歌手はそういないのではないかと思います。

 

 

 

ヴェルディ リゴレット Caro nome

 

こちらが2016年の演奏。
この人の歌唱では、ほとんど上の前歯を見せずに歌っています。
ソプラノには特に、上唇を横に引っ張って前歯を見せて歌う人が多いのですが、
そうすると確実にと言って良いほど鋭い響きになってしまいます。

デルフィーノの歌唱フォームは若いソプラノの方には本当に良いお手本になると思います。
とにかくどこを取っても変な癖がない。
どの音域の声も響きが安定し、イタリア語でもドイツ語でも発音がしっかり前に出ていながら声質に影響を及ぼさない。
申し訳ないけど今売れまくってるNadine Sierraとは全然別次元の歌です。

 

 

Nadine Sierra

今年の演奏は数年前よりかなり上手くなっていますが、中低音で押した声になっているのが、デルフィーノの歌唱と比較するとよくわかると思います。
デルフィーノの課題を挙げるとすれば、”e”母音が浅くなり易い部分で、
それ以外にも時々ちょっとすっぽ抜けたようなと言えば良いのか、緊張感の抜けた声が出てしまうことがあるのが勿体ない感じはします。

 

 

 

 

 

ドニゼッティ ドン・パスクワーレ Quel guardo il cavaliere

 

こちらが2019年4月の演奏
最初は、おや?と思うのですが、後半で持ち直します。
登場していきなり歌うアリア故に、オペラ全曲を聴くとこのアリアでは声がまだ出ていないことは全然あることなんですよね。

あまり録音状況の良い音源がないので、YOUTUBEに挙がっている演奏だけでデルフィーノを持ち上げるのは流石に勇み足な気もしますが、
それでも確実に喉を押さない歌唱をしていて、声量や技巧ありきの歌唱ではなく、
喋っているかのように歌える自然さが彼女にはあります。

前述の通り、まだ集中力が切れるような部分が曲の中であったり、特定の母音が苦手そうに聴こえたり、全体的に線の細さはありますが、このままの歌唱を続けていけば、きっと40代になってから全盛期を迎えることができるでしょう。
是非とも、こういう歌唱がイタリア的なソプラノのスタンダードになって欲しいし、
日本でもそうあって欲しいと願うばかりです。

 

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