The winners of the 2019 International Opera Awards 評論 <女性編>

The winners of the 2019 International Opera Awards

の受賞歌手について今回は書きます。

ちなみに、この賞は大して歴史がある訳ではなく、2013年に創設されたばかりで、
歌手だけでなく、指揮者や教育機関、音楽祭、演出家といったあらゆるオペラに関わる芸術家やイベントを表彰しています。

詳細はこちらInternational Opera AwardsのWIKIを参照ください。

また、今年の受賞者の詳細についてはコチラを参照ください。

 

この賞の審査員は
Opera Magazineの編集者John Allisonを中心としたメンバーだそうですが、
詳細は不明。

パトロンとして下記の歌手の名前が書かれているので、彼等も審査に関わっていると思われます。
Sir Thomas Allen
Dame Janet Baker
Placido Domingo
ame Anne Evans
Mirella Freni
Dame Felicity Lott
Sir John Tomlinson

 

なお、よく概要を見てみると、この賞は一年前の舞台を対象に表彰しているようです。
現在行われている一般投票は、2019年の舞台を対象として、2020年1月10日に締め切られるとのこと。

 

賞についての説明はこれくらいにして、歌手の評論に移りたいと思いますが、
勿論ここで取り上げるのは女性歌手、男性歌手、若手歌手の受賞者と
その各カテゴリーにノミネートされた歌手達についてになりますのでご了承ください。

 

 

<女性歌手編>

 

Asmik Grigorian

1981年、リトアニア生まれのソプラノ歌手。
ラトヴィアやロシアのマリンスキー劇場でキャリアを積み、
ザルツブルク音楽祭や、リセウ歌劇場など に出演しているようですが、
今後はスカラ、メト、コヴェントガーデンといったところに次々デビューが決まっているようです。
2016年には、この賞のYoung Singerの部門も取っているあたり、ここの審査員の方々には以前から気に入られていたことが伺えます。

 

コルンゴルド 死の都 2幕フィナーレ(パウールとの二重唱)
テノール Klaus Florian Vogt

こちらが今年のスカラでの演奏のようです。
明らかに声と役が合ってないフォークトとは対照的に、
グリゴリアンのマリエッタはハマっていますね。
硬質で響きが籠ることなく前で響いているで、ドイツ語の作品とは相性も良さそうです。
ただ、チリメンヴィブラートが気になるところではありますし、音色が一辺倒な気もします。

 

 

 

プッチーニ マノン・レスコー Sola, perduta

なんかこの人、全体的にオポライスに似てません?

 

 

 

Kristine Opolais

硬質で強い声にどこか病的な音色は、こういうヒロイックな役を歌うと合うには合うのですが、
今ひとつ深さがない、喉から上だけが鳴っているような響きが個人的には苦手だったりします。
とは言ってもまだ40歳手前ですから、まだ伸びる可能性はあるかもしれません。

 

 

 

☆★☆ノミネート★☆★

 

Anna Caterina Antonacci

ベルリオーズ ファウストの劫罰

1961年イタリア生まれのソプラノーメゾソプラノ
大御所も普通にノミネートされるんですね。
リートは微妙ですが、イタリア物、フランス物の比較的ドラマティックな作品を歌わせれば現在トップクラスであることは疑う余地がありません。

 

 

 

 

Daniela Barcellona

ロッシーニ タンクレーディ Di tanti palpiti

 

1968年イタリア生まれのメゾソプラノ
ロッシーニのスペシャリストとしての地位を確立して久しく、
こちらも大御所で、今更表彰するような歌手ではない気がするのですが・・・。
てか、2018年が例年以上に活躍したとは思えないので、アントナッチと並んでよく分からないノミネートです。

 

 

 

 

Rosa Feola

ベッリーニ 夢遊病の女 Come per me

1986年イタリア生まれのソプラノ
急にここで20歳以上若い歌手が登場しました♪
レナータ スコットに習った経歴があり、2010年ドミンゴ主宰の国際コンクール「オペラリア」で世界的な注目を集めました。
その後はムーティのお気に入りとして、ウィーン国立歌劇場の来日公演(2016年)で来日して、フィガロの結婚のスザンナを歌ったので、日本でもそれなりに知名度はあるかもしれません。

ちなみに、若手有望演奏家を発掘するのが上手い武蔵野文化会館は2016年より2年早い、2014年に呼んでリサイタルを催しています

因みに2016年のスザンナ役はこんな感じ

 

 

 

モーツァルト フィガロの結婚 Deh! vieni non tardar

個人的にはこの人は高音じゃないと響きの乗りが悪く、スザンナは合ってないと思うのです。
更に言えば、恐らく本来はもっと軽い声で、これでも相当作った声に聴こえる。
例えば、ジルダ歌ってるの演奏を聴くとよくわかるのですが、

 

 

 

ヴェルディ リゴレット Si vendetta
バリトン George Gagnidze

オクターヴのアルペッジョを歌うような音型は響きが落ちるとよくわかる。
フェオーラの低音がいかに籠って響きが落ちてるかが、こういう演奏を聴くとすぐに分ると思います。
とは言っても、30代前半でこれだけ活躍しているのですから、ノミネートは頷けますね。

 

 

 

 

Pretty Yende

ヴェルディ 椿姫  Follie! Sempre Libera

まさに目覚ましい活躍をしている1985年生まれの南アフリカのソプラノ歌手
この人については過去記事で書いているので、興味のある方はそちらもご覧ください。

 

◆関連記事

21世紀のキャスリーン バトルとなれるか!?Pretty Yende

 

 

 

 

 

 

Sabine Devieilhe

Rシュトラウス ナクソス島のアリアドネ(全曲)

なんと昨年のエクサンプロヴァンス音楽祭の全曲映像がアップされています。
これは消される可能性が高いので、その前に手を打つことをお勧めします。
私の記事をご覧頂いている方は、私がドゥヴィエルに心酔していることはご存じかもしれませんので、もうここでは何も書きません(笑)
一応直近にアップされた演奏だけ紹介しておきます。

 

 

 

ラモー 優雅なインドの国々 Viens, Hymen

 

 

 

◆関連記事

フランスが誇るコロラトゥーラの申し娘 Sabine Devielhe

 

 

 

 

以上が女性歌手の受賞歌手とノミネート歌手でした。
イタリア人歌手が優遇されているような気がしなくもありませんし、
オペラ アワードなのでコンサート歌手としての活動は評価対象にならないのかもしれませんが、もう少し歌手のタイプにバラエティーがあってもよかったようには感じます。
ついでなので、Young Singer部門の女性歌手も紹介しておきましょう。

 

 

 

Marina Viotti

ロッシーニ 湖上の美人 Tanti affetti in tal momento

こちらはドミンゴ主宰のオペラリア2018ファイナル
ここでも『オペラリア』が出てきました。
ここまでくると、ドミンゴの覚えがめでたいことは評価に直結してるんじゃないかと考えたくなってしまいます。

ヴィオッティはスイスのメゾソプラノ歌手で、来年スカラにデビュー予定のようです。
ドミンゴとかフレーニの声の特徴とも言える、前の響きが強くて硬い声の歌手ばっかですね。
もちろんヴィオッティは素晴らしい声を持っていると思いますし、太い声ながら高音も出るし、低音の鳴りも申し分ありません。

ただ、どうしても押してるような気がして柔軟な表現や、音色の変化に貧しさを感じてしまう。
ドミンゴに気に入られている歌手や、フレーニに師事した歌手が一流のオペラ歌手として認知されるに至らない理由はそこなのではないかと思わずにはいられません。
要するに、ヴィオッティがこの演奏から伸びしろがあるかどうかと考えると、この声で歌う限りは、更に上の演奏というのは中々想像できないのですね。

 

 

 

 

Jodie Devos

ドニゼッティ 連隊の娘 Salut A La France

 

ベルギーのソプラノ歌手で2014年にエリザベート王妃国際コンクールで2位入賞、
2015年にはInternational Classical Music AwardsのYoung Artistic Talent 2015に選ばれています。

エリザベートはそれこそ超絶技巧や大音量といった歌唱では入選できないコンクールなので、
今回選ばれている歌手の中ではタイプが少し異なっているように聴こえます。
線が細く、まだまだ声そのものには未成熟なところが聴かれますが、綿密な音楽作りと、決して絶叫にならない声と明瞭な発音。
こういう素直で誠実な歌唱をする人は個人的に応援したくなりますね♪

 

 

 

 

Soraya Mafi

ヴェルディ ファルスタッフ Sul fil d’un soffio etesio

英国のソプラノ歌手です。
まだちゃんと歌を聴ける音源がないので、何とも言えませんが、そこまで沢山のオペラには出ていなそうです。
比較的コンサート歌手としても活動しているようで、今回のノミネートはお膝元の英国若手有望歌手だからでしょうか?
とは言え、聴いた限り癖がなく素直にこのまま伸びていきそうな感じはありますね。

 

 

 

Amanda Woodbury

ベッリーニ 異国の女 Sono all’ara

米国のソプラノで2014年にメトのオーディションで合格して、
現在は米国内の劇場を中心に活躍している方ですが、
やっぱり米国の歌手は大声自慢の押して歌う人が多くて苦手です。
この人も・・・ベルカントオペラを歌って良い歌い方ではないと思うんですけどね。

 

 

こんな感じですが、皆様はこの歌手を見てどう感じられたでしょうか?
個人的には、ドゥヴィエルを除けばジョディ デヴォスは気に入りました。

次回は男性編をお送りします。

感想などがあれば

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