Francesco Pio Galassoの歌唱はイタリアンテノールの希望だ!

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Francesco Pio Galasso(フランチェスコ ピオ ガラッソ)はイタリアのテノール歌手。

名伴奏ピアニストのVincenzo Scalera,
偉大なソプラノ歌手Montserrat Caballé
近代最高のドラマティックテノールの一人Giuseppe Giacomini
といった錚々たる音楽家から指導を受けたところを見ても期待感が高まりますね。

スペイン、ハンガリーやロシアでも歌っているようですが、やはり中心はイタリアで、
現在はジェノヴァのカルロ・フェリーチェで歌っていることになっています。

とはいえ、現在イタリアは最短でも4月3日までは全劇場が閉鎖しているという話をイタリアにいる方から聞きました。
こういう時だからこそ、いかにもイタリアっぽい声の歌手を紹介したいと思います。

得意としている役は、カルメンのドン・ホセやトゥーランドットのカラフといったスピントな役ですが、ロドルフォもよく歌っているようです。

 

 

 

サルスエラ No puede ser

音源が残っている中で一番古いのがこちら、
2008年以前ということで、見た目からも20代ではないかと思うのですが、
ただただイイ声してますね。
映像がある中で極端に年代が古いので、声についての詳細は次の映像で

 

 

 

プッチーニ ラ・ボエーム Che gelida manina

2015年頃の演奏。
高音も確かに素晴らしいのですが、特筆すべきは中音域の輝きではないかと思います。
高音がいくら出ても、一般的にパッサージョと言われるF~Gよりしたの音、C~Es辺りの音でも輝きがある声で歌えるテノールというのはなかなかいないのではないでしょうか。

本来はカヴァラドッシやカラフが合う声なので、ロドルフォにしては強い過ぎるかもしれませんが、決して声が重い訳でなく、明るくて強い。
その上ディナーミクも至って自然で、過剰なポルタメントも使わない。
まぁポルタメントについては、プッチーニ自身が随分意図的に使うのを好んだという説もあるのですが、使うにしても品がないように聴こえてしまったらそれまでですから、やっぱり多用するのは無理があるというのが個人的な考え方です。

 

 

 

 

プッチーニ トスカ E Lucevan le stelle

 

 

 

Vittorio Grigolo

現在トップクラスの知名度を誇るイタリア人テノールのグリゴーロと比較して頂ければ、

知名度=実力

ではないことは明らかですね。

例えば

ピオ ガラッソ(1:45~2:06)
グリゴーロ(1」49~2:10)

一番分かり易いのは高音のピアニッシモの質でしょうか。
グリゴーロのピアニッシモはファルセットですが、ピオ ガラッソはフォルテと同じポジションからブレずにコントロールしています。
グリゴーロのは、ファルセットと言っても流石に声の質は維持したままで上手く処理はしていますが、声のポイントがピオ ガラッソとは全然違いますよね。

他には、
グリゴーロはカヴァラドッシを歌うには軽い声なので、重く作っている分、響きが落ちて声も揺れ気味ですよね。
特に低音はマイクじゃないと舞台の後ろまで届かないんじゃないか?と思われるゆおな声です。
それに比べてピオ ガラッソは低音でもピントが合って、声に輝きがあるんですよね。

別にグリゴーロをディスっている訳ではなく、ピオ ガラッソの中低音の発声技術がどれだけ高いかという方を私は強調したいのですね。

 

 

 

 

ビゼー カルメン フィナーレの二重唱C’est Toi? C’est moi!
メゾソプラノ Veronica Simeoni

個人的に、現在の若手イタリア人メゾとテノールでこれほど熱いデュエットはないんじゃないかと思います。キャスティングセンスが素晴らしいですね!

こんな演奏聴いたら、

やっぱりイタリア人歌手の底力スゲー!

っと私はなりましたが、皆様はいかがでしょうか!?
一刻も早く彼等が活躍できるように劇場が再開されることを願うばかりです。

ピオ ガラッソのここでの歌唱は、個人的にはガツガツ歌い過ぎな気がする一方、
シメオーニは怖いくらい冷静でありながらも、ここぞという時の爆発力には若手ながら貫録すら感じます。
不思議なもので、凄い声でも歌い回しが一本調子だと、声に慣れて来てしまって、凄いとは思えても面白さはあまり感じない。

今後はこうした全部クライマックスみたいな歌唱ではなく、
ドラマを自分で構築していき、聴衆の期待値を誘発さることで会場全体の集中力を高めていく。自分だけが良い声で歌うところから、全体を乗せていくような歌唱を期待したいですね。
技術も声もあって若い彼ならばそんなレベルに到達できるのではないかと思えてしまいます。

 

 

 

 

プッチーニ トゥーランドット  Non piangere liù

カラフのアリアと言えば、もう一方が有名過ぎてこちらのアリアは地味な印象を受けますが、
一本の線で真っすぐに、強い声でも静寂を内包した表現を要求される、実は発声技術の良し悪しが丸裸になるアリアでもあります。

ピア ガラッソの場合、
カルメンでの演奏に比べればよっぽど落ち着いた歌唱で、ほぼ乱れることなく歌えていて、やっぱりフランス語よりイタリア語の方が良い演奏ができるなと思います。

因みに乱れる部分と言うのは
(0:53~1:05)

「Non lo lasciare,portalo via con te!」という歌詞の部分の

portaloの”ta”だけアペルトな方向へ脱線してしまっています。

それ以外は、時々アクセントじゃない語尾が強い感じがしなくもありませんが、
曲の最後

「chiede colui che non sorride più」の部分は、最高音も含めて完璧と言っても良い出来だと思います。
多くのテノールは最後のBの音をズリ上げたり、過剰に泣きを入れたり、あるは絶叫したりしてしまうのですが、ここまでハマった演奏はそうありません。

 

 

Placido Domingo

 

 

 

 

Jose Carreras

 

 

 

Franco Corelli

 

こういった超有名テノールの良い時期の演奏と比較しても、
劣らないどころか勝ってると思うのですがいかがでしょうか。
確かにコレッリの声は凄まじいですが、これはコレッリにしかできない歌い方です。
一方ピオ ガラッソは癖が全くない。
勿論持っている声は素晴らしいですが、声だけでなくて、フレージングも乱れた一か所を除いて注文を付けるのも難しい位整っています。
こんなイタリア人テノールを待っていた!という方はきっと私だけではないでしょう。

ということで、今回はイタリアンテノールの希望であるFrancesco Pio Galassoの紹介でした。

 

 

 

 

オマケ

恐らくロシアでの演奏会でレンスキーのアリアを歌ったのでしょうが、
途中で歌詞を間違えてしまうのですが、会場から喝采が起こる。こういうのは微笑ましい光景でなんか好きですね。
そして、こういうのを見ると親近感が湧いてしまうのはなぜでしょうか。

 

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