圧倒的な美声を持ったバス歌手Maxim Kuzmin-Karavaev

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Maxim Kuzmin-Karavaev(マキシム クズミン=カラワエフ)はロシアのバス歌手。

2007年からモスクワのNovaya Opera Theatre というところでソリストを務めており、主にロシア国内での活動のようですが、ヨーロッパでも時々歌っており、2017年にはバイエルンでボリス・ゴドノフを歌っています。
コンサート歌手としては、バロックや古典の宗教曲のソリストをよく歌っているようで、
声だけ聴くと、いかにもヴェルディを歌うために生まれてきたような立派過ぎる声だけに少し驚きを覚えます。

習っている歌手も、Vladimir ChernovやMirella Freniといったヴェルディ作品~ヴェリズモオペラを得意とした歌手で、クズミン=カラワエフの声が指導者の影響を多分に受けていることは間違えないでしょう。

 

 

 

ベッリーニ 夢遊病の女 Vi ravviso,o luoghi ameni

 

こちらは2011年の演奏。
個人的なイメージとして、このアリアはあまりギラギラした声で歌われることはないように思うのですが、
クズミン=カラワエフが歌うと、バスアリアと言うよりバリトンアリアであるかのように聴こえますね。

この兎に角前に強い響きがあるところなんてフレーニの発声にそっくりですね。
私見ではすでにフレーニの夫ギャウロフより全然良い声なんじゃないかと思ってしまう訳ですがいかがでしょうか。

 

 

 

チャイコフスキー Благославляю Вас

 

チャイコフスキーが低声用に書いた歌曲だけあって、やっぱりロシア人の素晴らしい声のバスが歌うとしっくりきますね。
イタリア語では、特に”i”母音が硬く響き過ぎてしまう感があるのですが、
ロシア語では母音の響きが整って良い意味で前過ぎないところに落ち着いています。
ホロストフスキーの演奏と比較しても、やはりバリトンよりバスが歌った方が合っている曲だなと思えます。

 

 

Дмитрий Хворостовский

二人とも包み込むような広がりのある声というよりは、直線的な声なので、
タイプ的には似ているのではないかと思います。
主観ですが、ホロストフスキーよりもクズミン=カラワエフの方が作った感じというか、力技的ではない声に聴こえます。

 

 

 

 

ブラームス Vier Ernste Gesange(全曲)

 

ブラームスの4つの厳粛な歌全曲です。
録音状態の残響が強すぎることもあって、発音についてはよくわかりませんが、声は凄いの一言につきますね。
リートを歌うには重過ぎるし、殆どがフォルテの表現というのもリートとしては味わいに欠けるし、2曲目なんかは全然曲のフレーズ感が見えず、音に声を当てているだけのようにすら聴こえなくもありません。

3曲目は予想通り良い声で歌われると無茶苦茶恰好良いけど、好きな演奏かと聞かれたら一歩引いてしまう感じと言えば良いでしょうか。
やっぱり、高い音になったら全部パワー全開で解放するような歌い方をされるとリートを聴いている気分にはなれませんね。

 

 

 

 

バッハ ロ短調ミサ  Quoniam

 

不思議なことに、バッハを歌うと吠えることなく、しっかりピンとの合った響きで、軽さと強さを備えたメリスマをしっかり決めることが出来ているのです。
この演奏は個人的に衝撃的でした。
ただ声が素晴らしいだけでなく、メリスマも粒がしっかり立っていて、発音も前に出ていて、勿論響きも全てピントが合っていて素晴らしい声。
ブラームスもこういう声で歌ってくれればもっとリートっぽくなるんだろうにねぇ。
なんて思ってしまいました。
とにかく、こういう人は何もしなくても喉が鳴ってしまうんでしょうね。
バス版のデル・モナコみたい。

 

 

 

 

 

ドニゼッティ ランメルモールのルチア Cessi… Dalle stanze

 

なぜか、バスの有名アリア。
例えばドン・カルロとかマクベス、あるいはファウストといったところは歌ってなくて、なぜかコレが得意みたいです(笑)
ルチア全曲では全然印象に残らないのですが、こうやって存在感のあるバスが歌うと立派に盛り上げることができるんですね~。

 

 

 

 

ヴェルディ レクイエム Confutatis maledictis

 

声量があって声が良いタイプの歌手はヴェルディとかベリズモ、あるいはワーグナー以外はあまり上手くない。
ということが往々にしてあるのですが、クズミン=カラワエフの場合は宗教曲が一番彼の感性に合っているような気がします。

声がそもそもドラマティックなだけに、劇的な表現をしてしまうと重くなり過ぎてしまって、1曲ならばまだ良いですが、2・3曲聴いていると飽きて疲れてしまう部分があるのですが、
宗教曲ですと端正に歌われるので、声も十分コントロールできていて、発音もフレージングもオペラアリアを歌うより洗練されて聴こえます。

因みにこちらは2018年の演奏で、ちゃんとした音源がYOUTUBEにある中では一番新しそうです。

ブラームスが2016年ということなので、その時と比較すると随分とディナーミクが自然になってきて、無駄に鳴り過ぎていた響きがスマートになっています。
まだレガートには改善の余地がありますし、言葉の音色や子音のスピード感といったアプローチは磨いていかなければならないと思いますが、これだけの声がある歌手はそうそういるものではありませんし、バッハで聴かせるアジリタの完成度から考えると技術は十分あると思いますので、これからどんなレパートリーを歌うにしても期待が持てますね。

ヴェルディやワーグナーは勿論聴いてみたいですが、意外とロッシーニやモーツァルトを肩の力を抜いて歌ったら良いのではないか?
なんて思わなくもありません。

ただ、調べても2019年までのスケジュールしか見つからないのが心配・・・。

 

 

 

 

 

 

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