2019/10/13 Teatro Comunale Modena LA BOHÈME

世界各国の劇場が封鎖されてしまっているために、最近の演奏を取り上げることができないということもあり、行く予定だった演奏会も
YOUTUBEにアップされた昨年~今年にかけて行われた公演を探して聴いている中で、お勧めのものを紹介していこうかと思います。

今回はTeatro Comunale Modenaで2019年10月19日に行われた、
プッチーニーのラ・ボエームです。

 

 

 

<キャスト>

Mimì: Maria Teresa Leva
Musetta: Lucrezia Drei
Rodolfo, poeta: Matteo Desole
Marcello, pittore: Carlo Seo
Schaunard, musicista: Fellipe Oliveira
Colline, filosofo: Maharram Huseynov
Parpignol, venditore ambulante: Roberto Carli
Benoît, padrone di casa / Alcindoro, consigliere di Stato: Gianluca Lentini
Sergente dei doganieri: Paolo Marchini
Doganiere: Stefano Cescatti

Conductor: Aldo Sisillo
Director: Leo Nucci

 

80年代生まれの若手歌手達による実に活気のあるボエーム。
89年生まれのカゾーレ、87年生まれのテレザ レーヴァを中心に、
89年生まれのドレイ等の実力派が固めた主要キャストは実に魅力的。

ディレクターをヌッチがやっているというちょっと変わったプロダクションで、演出も無駄がなく無難、と言えば良いのか、演出が気になって演奏に集中できないような部分は一切なく、台本通りといった感じで初心者でも楽しめるのではないかと思います。

 

このオペラって改めてちゃんと聴いてみると、ミミだけが別の時間が流れているような感じに聴こえてしまう。

カゾーレの歌唱が常にミミに振り回されてる感じだったのが典型的で、
一幕のミミが来る前までと、四幕の冒頭の中二病男子の戯れ時に聴かせる歌唱は、実に生き生きしていて、軽やかさと力強さがありながら、しっかり言葉の推進力があるのですが、

ミミが絡む、一幕後半と三幕、四幕後半(二幕は合唱やムゼッタが主導権を持ってるのでちょっと性格が違う)での歌唱は、どうもミミに引きずられるかのように重くなり、アリアを含めて一々高音の出し方が大げさになり、もっと楽に出せるはずなのに、常にフルパワーで張っている感じになってしまったのが勿体ない。

 

テレザ レーヴァは、ちょっと変わった声ですね。
中低音でもちゃんと鳴りますし、高音のピアニッシモもできるのですが、
滑舌が悪いと言えば良いのか、音の歌い出しの言葉と声がピッタリ当たらない。
声の揺れも気になりますし、
一番の問題はやはりレガートの甘さでしょうか。
とにかく言葉が繋がらないし、変に途中の音を膨らませたりするので自然な言葉のリズム感が出てこない。
もっと素直に歌えば良いのに・・・。と思えてしまう。

 

マルチェッロのセーオは良いですね。
バリバリ強い鳴りで押す訳ではなく、端正な音楽作りで、
歌う場面の多くが早口な上に音域も比較的高いので、どうしても勢いで歌ってしまいそうなものですが、三幕のミミとの重唱からロドルフォへの切り替えなんかも見事ですし、
声的にも、深さがありながら、発音がしっかり前でサバけているので、母音がとても明確に聴こえます。

 

ムゼッタを歌ったドレイが良い歌手なのは良く分かっていますが、
ムゼッタという役柄にしては歌い回しが上品過ぎないか?と思わなくもありません。
マルチェッロを歌ったセーオもそうなんですが、三幕のフィナーレで二人の罵り合いが全然上品過ぎて喧嘩しているように聴こえない。
四幕とのコントラストが明確であればあるほど、四幕での「ムゼッタは良い人よ」というミミのセリフの意味が重くなる気がするんですよね。個人的には・・・。

とは言え、全体を通して聴いたら、そこまで気になるようなことはないのではないかと思います。
少なくとも、上記に書いたような点を考慮しても余りある、良い意味で若さと勢いが彼等の演奏にはあって、鬱屈とした今現在の空気を和らげるにはうってつけの演奏ではないかと思いますので、今回紹介することにしました。

 

1件のコメント

  • 矢口 より:

    この公演結構好きなのですが、先日ロドルフォ役のMatteo Desoleさんがボローニャ歌劇場のトスカの引越公演でなぜかカヴァラドッシの代役で来日されてました。主要レパートリーというわけでもなさそうですが謎です。当初の主役2人が急遽降板という、オペラ公演当日まで何が起こるか油断できないなという感じでしたが、彼の歌を聴けたのはよかったです。

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