2020年3月 アン・デア・ウィーン劇場 フィデリオ 

今年はベートーヴェン祝祭年のはずでしたが、生誕を祝う催しはことごとく中止を余儀なくされています。

その中で、アンデアウィーン劇場 で3月19日、20日に無観客でインターネット放送された演奏がYOUTUBEに上がっていました。

 

 

“Fidelio” aus Theater an der Wien im Internet

によれば、medici.tvというところで配信されたようで、
これは日本語サイトもあります。

 

 

<キャスト>

Manfred Honeck Dirigent
Nicole Chevalier als Leonore ( Fidelio),
Eric Cutler als Florestan,
Gábor Bretz als Don Pizarro
Christof Fischesser als Rocco
Mélissa Petit als Marzelline
Benjamin Hulett als Jaquino
Károly Szemerédy als Don Fernando

 

 

 

Fidelio, Honneck, 2019/2020

https://www.youtube.com/watch?v=n_FwKdpjViI

 

珍しく?私が一度も記事にしていない歌手が集っての演奏なので、
簡潔に主要歌手については書いておきます。

 

 

◆Nicole Chevalier

米国のソプラノ歌手で、年齢はWikiにも書かれていませんが、1998年に Indiana University Bloomingtonというところを卒業しているようなので、現在40代半ばといったところでしょうか。
ドイツを中心に歌っているようで、レパートリーは中々不思議です。
と言うのも、セビリャの理髪師のロジーナやコシ・ファン・トゥッテのデスピーナを歌うかと思ったら、イドメネオのエレットラを歌ったり、椿姫のヴィオレッタを歌ったり、更にはプッチーニのマノン・レスコーのマノンまで手を出していて、軽い役から相当ドラマティックで強い高音が必要な役まで歌っています。
ここでの演奏を聴く限り、声は強いながらも中低音の鳴りは今ひとつで、高音が得意というタイプにも聴こえません。
50:50~のアリアを聴けばよくわかりますが、
一生懸命言葉をしっかり喋ることに意識があるのはわかるのですが、兎に角勢いで歌っている感が強く、音域によって響きの質も随分と変化してしまっています。

 

 

やっぱりイタリア物を聴いてみると、こういうことになっていました。

 

 

 

 

◆Eric Cutler

こちらも米国のテノール歌手。
Metropolitan Opera National Council Auditionsを1998年に受賞
キャリア初期はリリックテノールとして、モーツァルト作品やフランスリリック作品を得意としていたようですが、ここ数年はヘルデンテノールとしてのレパートリーが中心になっているようです。
フィデリオのフロレンスタンをはじめ、ローエングリン、ナクソス島のアリアドネのバッカス、ダフネのアポロ。来年にはベルリンで影のない女の皇帝をやる予定のようです。

この歌唱を聴いても若い時にリリックテノールだったという痕跡が全くみられないですね。
でも、昔はネトレプコとベッリーニの清教徒で共演したりしてました。
この演奏を見たら、カトラーの歌唱より、ネトレプコの昔の姿の方に感慨を覚える方が多いかもしれませんが・・・。

 

 

 

 

 

 

◆Gábor Bretz

ハンガリーのバス歌手。
米国とハンガリーで声楽を学び、2017年には新国でもカルメンのエスカミーリョを歌っています。

現在はヨーロッパを中心にあらゆる所で、イタリア、ドイツ、フランス物のドラマティックな役柄を歌っています。
今回のフィデリオで個人的に一番良いと思ったのがこの人ですね。
深さと温かさがあり、それでも響きは決して重くなり過ぎずに柔軟さがあり、音色をコントロールできる。
他のキャストとは明らかいに上の実力を持っているのではないかと思いました。

 

 

 

 

 

◆Mélissa Petit 

フランスのソプラノ歌手。
14歳で Music School of Saint-Raphaёlにて声楽を学びはじめ、
2009年にUniversity of Musicology in Niceへ入学しているということは、
恐らく1990年頃の生まれでしょう。
その後は、2010年からハンブルクオペラスタジオで学び、2015年にバスティーユでオペラデビューして、現在はチューリヒを中心に活動しているようです。

容姿も含めて今後人気が出そうな歌手ではありますが、
日本人に多いソプラノタイプで、頭から上だけの響きで歌っている印象はぬぐえません。
勿論まだ若手なので今後大きな成長を遂げる可能性はありますが、音色が常に一色なのは個人的には歌を聴いてて面白くないですね。

 

 

 

 

◆Christof Fischesser

ドイツのバス歌手。
音楽一家に生まれ、ドイツ国内の様々なアンサンブルメンバーとして活動した後、オペラ歌手としてはワーグナー作品で主に評価されているようです。
特にパルシファルのグルネマツ役が当たり役とのこと。

 

 

 

Kàroly Szemerédy

この人もハンガリーの歌手で1979年生まれ。
11歳からハンガリーの歌劇場で児童合唱団員として歌ており、
Teresa Berganza, Roberto Scandiuzzi, Raul Jimenezといった名だたる歌手に指導を受けています。

今回の公演でも明るく強い声は印象に残りった方が多いかもしれません。
少々チリメンヴィブラートがかかってしまうのが残念ではありますが、
リリックで強い声は、特にドイツ物のレパートリーを歌うバリトンとしてはとても重宝されるタイプではないかと思います。

 

 

持っている声だけならヘルマン プライのようですが、もっと柔らかさが欲しいですね。

 

 

 

 

今回のフィデリオは一般的に演奏されるのとは違うバージョンで、
大体は1814年版、三回目の改定版で演奏されるのですが、こちらは1806年版ということで、
テノールアリアが盛り上がりに欠けるちょっと残念な感じだったり、重唱もちょっと違ったり、何より序曲がレオノーレ序曲(ここでは3番)だったりと、聴き慣れない部分があるかもしれません。

 

 

 

 

CD

 

 

 

 

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