Sylvia Schwartzの歌唱から学ぶ、上の前歯を見せて歌ってはいけない理由

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Sylvia Schwartz(シルヴィア シュヴァルツ)は1983年スペイン生まれのソプラノ歌手。

 

名前からしてドイツ人かと思ったら、スペイン生まれで、大学でベルリンに渡っているようです。
習っていたのが、名伴奏ピアニストのヴォルフラム・リーガー(Wolfram Rieger)、コンサート歌手として有名なバス、トーマス・クヴァストホフ( Thomas Quasthoff),ディースカウの奥さんとして有名なソプラノ、ユリア・ヴァラディ(  Julia Varady)と大御所とも言える顔ぶれが並び、
極めつけは、ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)に気に入られてベルリンドイツオペラに引っ張って貰うという、絵に描いたような出世コースを歩んだのがこのシュヴァルツです。

ですがこの人
はっきり言って上手くないです(爆)

今回タイトルにも書いている通り、ず~~~~っと上の前歯を見せて歌っているのですが、シュヴァルツの歌唱は、その行為がいかに問題かをよく示してくれていると思いますので、反面教師として紹介したいと思います。

 

 

 

シューベルト Du bist die Ruh

 

【歌詞】

Du bist die Ruh,der Friede mild,
die Sehnsucht du,und was sie stillt.
Ich weihe dir voll Lust und Schmerz
zur Wohnung hier mein Aug und Herz.

Kehr ein bei mir,und schließe du
still hinter dir die Pforten zu.
Treib andern Schmerz aus dieser Brust.
Voll sei dies Herz von deiner Lust.

Dies Augenzelt,von deinem Glanz
allein erhellt,o füll es ganz.

 

【日本語訳】

君は憩い、穏やかな安らぎ、
君は憧れ、そして憧れを静めるもの。
僕はすべての喜びと痛みに満ちて
ここ、僕の目と心を住処として捧げよう。

僕のところにおいで、
君の後ろの扉は全部閉めて。
他の痛みをこの胸から締め出しておくれ。
この心を君の喜びでいっぱいにしておくれ。

この目の住処を照らすのは君の輝きだけなのだ、
おお、住処に輝きを満たしておくれ。

 

ドイツリートを勉強すると、比較的初期に歌うことが多い曲なのですが、
粗を画すことができない、実際はとても難しい曲です。
シュヴァルツの演奏の場合、まず出だしからヨロシくないので、順を追って説明していきます。

まず”du”の”u”母音が浅く、”bist”の”i”母音は完全に喉に掛かった貧しい響きで、続く「der Friede」という歌詞ですが、「Frieden」のように、語尾に”n”が付いているように聴こえますし、この歌詞の”den”の”e”母音で詰まった声になります。

音域的に、歌い始めの音はBで、ちょうどこの音の辺りが、特に下降音型で詰まる傾向があります。

例えば、
0:44~0:46の「Ich weihe dir」という歌詞の”dir”
0:52~0:56の「zur Wohnung hier 」という歌詞の”hier”
といった感じです。

他には”o”母音がことごとく”a”母音に近く明る過ぎたり、
高音が得意そうな声なのですが、高々最高音がAsでも硬くなっています。
同じスペインのソプラノフラドと比較しても、全体的に浅く深さの足りない声であることがよくわかります。

 

 

Pilar Jurado

この人は、歌い始めの音をズリ上げることがあるのが勿体ないのですが、
響きは理想的と言えるのではないかと思います。

ただ
0:46~0:52「voll Lust und Schmerz」という歌詞の”Schmerz”のような中音域の”e”母音で横に開いてしまうため、他の母音とは響きの質が変わってしまっていることがわかります。
逆に、シュヴァルツは終始横に開いた響きなので、統一して浅い響きであることに多くの人は気づかないのか、何故かこの演奏を高く評価してる人が多いことには正直驚きます。

 

 

 

モーツァルト フィガロの結婚 Giunse alfin il momento . . . deh, vieni

こちらはベルリン国立歌劇場のガラコンサートでの演奏。
この人、本当にどこを切って上の前歯を見せて歌っているので、
この行為が声にどのような影響を及ぼしているかが非常に分かり易いです。

そういう私も高校生の時に習っていた先生に、シュヴァルツのように歌うことを推奨されました。
これをすると、響きが明るくなるので、籠る癖のある人には手っ取り早い解決策になるようにも見えるのですが、実は明るくなるのではなく、喉が上がって浅い響きになります。

よって、元々明るい母音の”i”や”e”母音は豊かさが失われ易く、
特に”e”はちゃんと発音できていない部分があります。
一番分かり易いのは、3:59~4:10の「vieni」という言葉で、
どうきいても”ヴィアーニ”に聴こえます。

先日紹介したジョルダーノの演奏なんかと比較すればよくわかりますが、
ジョルダーノも声だけ聴けば浅く聴こえるかもしれませんが、
シュヴァルツとは全く質が違います。

 

 

 

Laura Giordano

ジョルダーノは全く上の前歯を見せて歌っていません。
これによって唇の先を柔軟に使って発音したり、口内の響きを助ける役割としても使えている訳です。
さらに、前述の通り、上の前歯を見せて歌うと必然的に喉が上がるので、低音が全然響きません。
ジョルダーノの声は、とても軽く、浅く感じられるかもしれませんが、低音~高音まで響きの質が均等です。

勿論、ジョルダーノとシュヴァルツの違いについては口のフォームだけが全てではありませんが、声への影響が確実にでる部分であるのは確かです。

 

 

 

 

 

ロッシーニ イタリアのトルコ人 Non si da follia maggiore

こちらは2017年の演奏。
細い声なのですが、非常の重い声になって、全く何を言っているか分からなくなってしまっています。
これまではスーブレットソプラノの役を中心に歌っていたのですが、
2019年からは、急にドン・ジョヴァンニのドンナ・アンナなどの役を歌うようになったことからもわかるように、40歳手前で既に声が重くなってしまっている訳ですが、だからと言って低音が鳴るようになってきた訳ではありませんから、控えめに言っても既に全盛期を過ぎてしまったと言えます。

では、似たような声と歌い方をしていたマチャイーゼで比較してみましょう。

 

 

 

Nino Machaidze

おなじイタリアのトルコ人のアリアです。
ちなみにマチャイーゼもシュヴァルツと同じ1983年生まれ。
ということで、こちらの演奏が同じ曲とは言っても演奏が2010年頃なので正確な比較にはなりません。
では2017年にどうなったか?

 

 

 

歌っている曲はレッジェーロからリリコになってはいますが、
口のフォームは、上の前歯を見せずに歌うようになったことで唇がしっりと、それでいて柔軟に使えるようになったことで、発音、響きの質が整ってきました。
上の演奏では、曲がロッシーニということもあるでしょうが、勢いに任せて歌っていた部分があり、音域や言葉によって響きの質がブレてしまっていました。

そして2020年

 

 

 

声の軽さは若い時のものを保ったままで、響きの質が聞き違えるほど豊で柔軟になっています。

 

この通り、同年代生まれで、声質的にも似ているシュヴァルツとマチェイーゼで、片方は既にフォームが崩れ始め、もう片方は着実に成長を続けている。

しかも、オペラを中心に歌っているマチャイーゼの方が、本来リートなどのコンサート歌手としても活動しているシュヴァルツより声の消耗は激しいはずですから、これは身体的な個人差の問題ではなく、シュヴァルツの歌唱に問題があると結論付けるのが妥当でしょう。

そして、その最も分かり易い決定的な要因が、前歯を見せて歌うことなのです。
ソプラノに限らず、演奏会ではこういう歌い方をする人を時々見かけますし、アマチュアでは絶対にこういうフォームの人がいて、それを推奨する指導者がいますので、私の記事を見て下さっている方は、どうかシュヴァルツのような口のフォームで歌わないよう注意してみてください。

 

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