チリの若手ソプラノYaritza Vélizは正統派リリックソプラノ期待の星!

Yaritza Véliz(ヤリッツァ ヴェリス)はチリのソプラノ歌手。

 

チリで声楽を学び、米国の Castleton Artist Training Seminarに参加するなど研鑽を積んだ後、英国ロイヤルオペラのJette Parker Young Artist(JPYA)に2018年からなっています。

JPYAの公式HPはコチラ

ロイヤルオペラには、フィガロの結婚のバルバリーナや、魔笛のパパゲーナといった役で出演しており、チリではドン・ジョヴァンニのツェルリーナや、ラ・ボエームのムゼッタなど、若手ソプラノがよく歌う役を得意としている典型的なタイプで、
今後さらなる飛躍が期待されている正統派リリコレッジェーロの声を持ったソプラノ歌手です。

 

 

 

 

グノー ファウスト Air des bijoux

 

古い演奏を探したところ、2014年の演奏があったので、まずはこちらから。
まだ全体的に粗削りで、特にまだまだ響きが乗りきってはおらず、声その物はリリックなのですが、
どこか重りを付けているかのような、無駄な太さと言えば良いのか、暗さと言えば良いのか、良質な響きの純度をまだまだ上げていかなければいけない声ではありますが、
それでも声に任せた歌い方をするのではなく、
自分の歌の世界観を持っていて、演奏自体には共感を覚えます。

プロフィールを調べても大学や研修所に入った年代がわからないので、この演奏が何歳くらいかはわからないのですが、20~25歳の演奏ではないかと推測しています。

 

 

 

 

 

プッチーニ ラ・ボエーム quando me’n vo

 

このアリアは本当に若手~中堅まで、軽い声~強めの声まで、実に様々なソプラノ歌手が歌っているのを聴きますが、例え若手歌手が歌っても、ただ可愛い小娘というのは違う。
だからといって、変に色気を前面に出されても曲の雰囲気とは乖離してしまう。

技術的にも、比較的五線内の中音域を行ったり来たりするので、そこがスカスカな歌手では高音だけ突出してしまって曲として成立しない。

そんな訳で、曲の雰囲気を壊さない声の軽さと、
それでいて間を持たせられるだけのしっかりしたフレージングで歌えることが求められるので、
案外上手く歌える歌手は少ないのですが、ヴェリスの演奏はかなり理想的なのではないかと思います。

歌っている姿勢もしっかりしていて、
くねらせて色気アピール演技をしているように見えて、軸は決してブレていない。
下半身は勿論のこと、肩が開いていて、首も前に倒れることがなく、
それでいて無駄な力みがない。

声には余分なヴィブラートが多少ないでもありませんが、軽い声でありながらも深さがしっかりあって、音域によっても響きの質に誤差がない。
勿論、もっと技巧的に上手い演奏は沢山あるとは思いますが、これほど真っすぐに良い意味で若さをぶつけたこのアリアの演奏は滅多にないのではないかと思います。

 

 

 

 

株式会社 アズ企画設計

 

 

 

 

プッチーニ ラ・ボエーム Si, mi chiamano Mimi.

 

ムゼッタのワルツが何年の演奏かわからないのが残念ですが、
こちらのミミのアリアは今年の1月のようです。
録音状態があまりよくないこともあるのかもしれませんが、
個人的には、やっぱりミミよりムゼッタが合っているな~と思ってしまいます。

声はミミを歌うのに申し分ないと思うのですが、
丁寧に歌い過ぎているのか、ムゼッタの演奏に比べてスケールが小さいと言えば良いのか、
大きなフレーズ感が見えない。
声だけ取り出せば良い声なのですが、下行音型で緊張感が減衰してしまうのは致命的。

3:00~3:48の一番盛り上がる場面

「ma quando vien lo sgelo
il primo sole è mio…
il primo bacio dell’aprile è mio」
という歌詞のところですが、
実は最高音が言葉のアクセントや大事な言葉にことごとくきてないので、
そこに頂点をもっていくと凄く不自然な音楽になってしまうのです。
大事なのは最高音の前後!

そんな訳で、これ見よがしにこの場面のAの音を強調する歌手がいたら残念な歌手だと思って頂いた方が良いと思います(爆)

ヴェリスもまだまだこのフレーズの歌い方は下手・・・と言う訳ではないのですが、
方向性が違う。
下行音型でディミヌエンドするのではなく、逆に高音を小さいところから歌い出して膨らませていかないとね。

とは言っても、自分の音楽をしっかり持っていて、声も持っている

正統派リリックソプラノとして大成できるか、ヴェリスには要注目です!

 

 

 

ちなみに、この曲を指揮者のパッパーノが指導している映像があります。

やっぱり、「喋れ」という指示が多いですね。
まだまだ声で歌い過ぎなので、そこも注意されています。
この指導を見れば、日本でミミ歌いとして一部から熱狂的に支持されているS.R氏の演奏がそれほど素晴らしいミミなのか?
となる訳ですが・・・それはまた別のお話。

言葉をしっかり喋るのは基本ですが、それをできる歌手が中々いないし、残念ながら音大でそれを執拗に指摘する教師は見たことがない。

そして、残念ながら日本では声にばかり注目が集まってしまう・・・。
パッパーノの指導の意図が少しでも分かる耳を日本の聴衆が持てば、自然と日本人キャストでも演奏の質は上がっていくと思うんですけどね。

「マスタークラスなんて見てもわからない。」
と思わず、是非こちらは聴いてみてください。
きっとご自身で演奏されない、聴くオンリーのオペラファンの方も、一流のオペラ指揮者がどういう音楽を求めているのかがわかる参考になりますので、きっと楽しめると思います。
このアリアの歌詞を見ながらマスタークラスの映像を視聴されたい方は、

最初のアリアはコチラ

後半のアリアはコチラの対訳をそれぞれ参照ください。

 

 

リネットジャパングループ株式会社

 

 

3件のコメント

  • めぐみ より:

     quando me’n vo
    本当に素晴らしいです!
    中音域と高音がしっかり繋がっていて、
    音楽が勢いをもって流れている感じがします!

    しっかりした声に聴こえますが、
    リリコレッジェーロなのですね!

    • Yuya より:

      めぐみさん

      彼女は上行音型の時の推進力は実に素晴らしいですね。
      こういう真っすぐな表現では良さが存分に発揮されるんですけど、
      下行音型では緊張感をまだ維持しきれていないので、そこが今後の課題でしょうね。

      声に関しては、パッパーノが指摘している通り、まだ声で歌い過ぎているので、
      もっと喋るという方向性で音楽作りが出来ると自然と軽くても広がりのある柔らかい響きになっていくのではないかと思います。
      そういう意味でも、今でもそれなりに歌えるとは思いますが、トロヴァトーレのレオノーラみたいな役はまだ歌ってほしくないですね。

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