正統派リリコレッジェーロソプラノKatharina Konradi

Katharina Konradi(カタリーナ コンラーディ)は1988年、キルギス共和国生まれのソプラノ歌手。

2009年から2013年までベルリン芸術大学で学び、2014年からミュンヘン音楽舞台大学で学ぶ。
2015年からヴィースバーデン・ヘッセン州立劇場に所属し、最近はハンブルクでもよく歌っているようです。
本来であれば、昨年バイロイトのタンホイザーに乙女役でデビュー予定でしたが残念ながらキャンセル。
今年の10月に東京交響楽団のモツレクで来日してソロを歌う予定になっています。

 

コンラーディは正統派リリコレッジェーロソプラノという言葉がぴったりくる、新年一発目に紹介するのに相応しい、透明感のある声で癖のない歌唱をする歌手です。

 

 

 

ベートーヴェン 劇音楽エグモント Die Trommel gerühret

若い時から、前で発音する。
ということがしっかりできているソプラノ歌手は珍しいですね。
言葉がしっかり前で喋れると、軽い声でもドラマを表現できるので、
それこそBニルソンのようなドラマティックソプラノが歌うこともある音楽ですが、
決して物足りなさを感じないですね。

何より素晴らしいのは、”o”母音や”u”母音といった、奥で発音する暗めな音色の母音の深さがあること。

似たようなタイプのソプラノで、Chen Reissという人がいますが、
レイスの方が硬めで、少し詰まった感じの声に聴こえます。

 

 

 

こうして比べると、コンラーディの音色の豊かさが分かるのではないかと思います。

 

 

 

Jシュトラウス こうもり Spiel ich die Unschuld vom Lande

コンラーディはアデーレを得意役にしているようで、兎に角生き生きした演奏をするんですね。
数ある演奏の中でも私は特に名演奏だと思います。

この演奏会の全曲映像も以前はYOUTUBEにあったのですが、残念ながら今は削除されてしまっているようです。

 

【歌詞】

Spiel ich die Unschuld vom Lande,
Natürlich im kurzen Gewande,
So hüpf’ ich ganz neckisch umher,
Als ob ich ein Eichkatzerl wär;

Und kommt ein saub’rer junger Mann,
So blinzle ich lächelnd ihn an,
Durch die Finger zwar nur
Als ein Kind der Natur,
Und zupf’ an meinem Schürzenband –
So fängt man Spatzen auf dem Land.

Und folgt er mir, wohin ich geh’,
Sag ich naiv: Sie Schlimmer, Sie,
Setz’ mich zu ihm ins Gras sodann
Und fang’ auf d’Letzt zu singen an;
Lalalalalala…

Wenn Sie das gesehn,
Müssen Sie gestehn,
Es wär der Schaden nicht gering,
Wenn mit dem Talent, mit dem Talent
Ich nicht zum Theater ging’!

Spiel’ ich eine Königin,
Schreit’ ich majestätisch hin,
Nicke hier und nicke da,
Ja ganz, ja in meiner Gloria!

Alles macht voll Ehrfurcht mir Spalier;
Lauscht den Tönen meines Sangs,
Lächelnd ich das Reich und Volk regier’
Königin par excellence!
Lalalalalala…

Wenn Sie das gesehn,
Müssen Sie gestehn,
Es wär der Schaden nicht gering,
Wenn mit dem Talent, mit dem Talent
Ich nicht zum Theater ging’!

Spiel ich ‘ne Dame von Paris, jah,
Die Gattin eines Herrn Marquis, jah,
Da kommt ein junger Graf ins Haus, jah,
Der geht auf meine Tugend aus, jah!

Zwei Akt hindurch geb’ich nicht nach,
Doch ach, im dritten werd’ ich schwach;
Da öffnet plötzlich sich die Tür,
O weh, mein Mann,
Was wird aus mir, ach!

Verzeihung!
Flöt ich, er verzeiht , ah,
Zum Schluss-Tableau, da weinen d’Leut;
Ja, ach, ja!
https://lyricstranslate.com

 

 

日本語訳は、ちょうどシュトライヒの演奏に日本語訳を付けた動画が見つかったので、
こちらを参照に比較して頂けると、シュトライヒの演奏すらも凌駕しているとさえ思えるコンラーディの演技、歌唱表現、発声技術の高さを実感できます。

 

 

Rita Streich

コンラーディもシュトライヒも響きが前にあることは同じなのですが、
コンラーディはそれより更に一歩言葉のさばきも前で、子音の出し方のバリエーションが実に多彩。
母音の音色もそうなのですが、言葉のスピード感を、田舎娘、女王様、パリのマダムという役に応じて使い分けていて、

中でも女王様の演技ではシュトライヒとコンラーディに大きな差がでます。
シュトライヒは比較的自然に歌うのに対して、コンラーディは声を重めに作って女王様を演じているように聴こえるかもしれませんが、これは響きを少し奥気味に調整して(発音のポジションは前のまま)ずっと前歯から鼻付近の響きで歌っていたものを、軟口蓋から頬骨辺りに変えています。

大抵の歌手ならそのままの声で通すか、作った感じの声になるかです。
自然なリリコレッジェーロな声でも、よりリリコ気味な声でも、響きのポイントを変えることでフォームを崩さずに調整できるのがコンラーディの最大の魅力ではないかと私は思います。

 

 

 

 

Rシューマン Abendlied

コンラーディはリートの名手でもあります。
インタビューではリートとオペレッタが得意ということを言っていたのですが、
本当にその通りでなんて洗練された歌唱をするのでしょうか?

ただ、個人的には、アデーレの演奏を聴いてしまうとちょっと物足りない。

 

 

 

Rシュトラウス Mohnblumen

ダムラウと比較すると、やっぱりシュトラウスのこういう曲の破天荒さをもっと出して欲しいなと思う訳ですね。

 

 

 

Diana Damrau

コンラーディは響きが常に前にあるのは良いのですが、常に明るいために、色彩感があまり出ない。
その辺り、ダムラウは流石で、カンカン良い響きに当てるだけではなく陰影を上手く付けています。

過去の記事などをお読みの方は、もしかしたら私がダムラウを非難しているのをご覧になっているかもしれませんが、彼女は椿姫さへ歌わなければ・・・更に言えばリート歌手としてはとても素晴らしいと思っております。

そんな訳でコンラーディの課題は、もっと母音の音色の種類を増やすことではないかと思います。
以下の演奏会なんかも大変素晴らしいのですが、聴いているとどうしても途中で飽きてしまう。
それは、前衛的な作品はちょっとわかりませんが、リートは頻繁に一人で複数の登場人物を歌うことがあるのですが、その歌い分けが、独り言なのか、誰かに向かって語り掛けているのかなども含めてあまりわからない。
分かり易く言えば、シューベルトの魔王を、ナレーション、魔王、子供、父親、の4役を全て同じような歌い回しで歌っている感じと言えば良いのでしょうか。
今ひとつ血の通っている感じがしないのはなぜダロウ・・・。

なぜアデーレであれだけ素晴らしい演技ができてリートでは踏み込んだ声の演技ができないのかちょと不思議なんですが、今後声が成熟していってどのような演奏をしてくれるかは大いに楽しみです。

 

 

 

 

Elbphilharmonie at Home | Katharina Konradi & Roland Vieweg

 

 

今秋来日するけがモツレクのソロかぁ・・・
こんな歌手なら、こうもり、で呼ばないといかんでしょ!

 

 

CD

 

 

 

2件のコメント

  • めぐ より:

    コンラーディさん…
    スゴい歌手ですね‼️驚愕です!
    前の方で出す発声も、低音もしっかり出て聞こえるし、表現力もすごいし、『こうもり』の演技と歌、とにかく楽しそう!

    それにしても、この『こうもり』の曲、
    超絶難しいですね!!
    コロラトゥーラ技術+幅のものすごい広い表現力が
    必要ですね!
    こわい曲!!

    • Yuya より:

      めぐさん

      今年もよろしくお願いします。

      コンラーディのアデーレは本当に驚くべき演奏です。
      初めて見つけた時は思わずリピートで聴いてしまいました(笑)

      この曲は演劇的になり過ぎて、声楽的な声を捨てたような演奏をする人がいる一方で、
      とりあえず可愛く歌えば良いんでしょ?的な演奏も多くて、
      発声技術や発音を崩さずにこれだけ演技ができる歌手を聴いたのはコンラーディが初めてです!

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