デンマークにメロッキ派の発声が伝わっていたことが判明!!

先日紹介したデンマークのテノール歌手
Stig Fogh Andersenの記事でなんとなく書いたのですが、

やっぱりデンマークの声楽レベルが気になり調べてみることにしました。

 

デンマークの声楽事情について調べるにあたり、
まずはデンマーク王立歌劇場(The Royal Danish Opera)の所属歌手を色々聴いてみることにしたのですが、そこから思わぬかたちでマルチェッロ・デルモナコの弟子であったフィンランド人テノール、ペーター・リンドロス(Peter Lindroos )という人にたどり着きました。

この人、Wikiによればフィンランドとデンマークで活躍しているのですが、
現在のイタリア人スピント~ドラマティックテノールに多大な影響を与えたマルチェッロ・デル=モナコの弟子の一人でした。

彼等のことを、通称メロッキ派と呼ぶのですが、そのことについてここでは説明を割愛いたします。
ここでそのことを書くとデンマークとは全く関係ない方に脱線して戻ってこれなくなりますので、興味のある方は調べてみると声の系譜みたいなのもわかるかと思います。

ここで興味深いのは、モナコに習って有名になっているイタリア人以外の唯一の歌手がリンドロスだと思われることで、参考記事はコチラになります。

この情報が、基本的にはイタリア人しかモナコのような歌唱はできない、
という意味に捉えられて、イタリア人テノールがブランド化している要因の一つとなっているように私は思うのですが、では実際リンドロスの歌唱を聴いてみましょう。

 

 

 

そんなリンドロスの歌唱がこちら

 

この歌唱なら世界中の、それこそフィンランドやデンマークより遥かに高いギャラが貰えたであろう米国の劇場なんかで歌いまくっていてもおかしくなかったと思うのですが、
彼はほぼフィンランドとデンマークで歌っていたそうなのですね。

 

 

 

そして、そんな彼が1990年に行ったマスタークラスの様子がこちら

 

残念ながら言葉は全くわかりませんが、何をやろうとしているかは結構わかるもので、中々興味深い映像ではありますが、本人はお手本を見せて生徒に真似をさせる。というスタイルではないので、あまり面白い映像ではないかもしれません。
それでも生徒のレベルが無茶苦茶高いことには驚かされます。

 

7分第に、O mio babbinoの最後の歌詞「pieta」の、「ta」で喉が上がって平べったくなり、鼻声にになっています。
ここで、微妙にリンドロスが生徒の下顎を軽く下に下げるように触ります。
更にその前の”e”が横に開き過ぎるので、これも俗に言う曖昧母音、発音記号で言う”ə”にさせています。

この”ə”の発音の特徴について見てみると興味深いことが分かります。
例えばコチラの記事より特徴を挙げると

●唇を自然に開いた状態

●リラックスした状態で自然に出る音

●口の中をリラックスさせた状態で音を出すと自然とこの音になる

つまり、”e”母音が平べったくなったり、浅くなったりする原因として、唇に余計な力が入っていることが多いですから、解決策として”e”を曖昧母音にさせるのは手っ取り早く効果的です。

ボエームのアリアを歌っているテノールには、技術的な面より、場面の想像力とか表現的なことを伝えており、続くバスの生徒は大変素晴らしいですね。
全然一流劇場で歌ってても不思議じゃないレベルの歌唱をしてると思います。

 

 

 

次に、デンマークの声楽教育機関です。

Royal Danish Conservatory(The Royal Danish Academy of Music)で教えている講師を聴いてみましょう。

まず、

ソプラノ:ANNE MARGRETHE DAHLという方のレッスン風景がありました。

 

 

 

 

 

 

ANNE MARGRETHE DAHLの歌っている映像はこちらしかありませんでしたが、普通に上手いです!

 

 

 

 

メゾソプラノ:HELENE GJERRIS

最初はシャンソン歌手っぽい雰囲気に聴こえなくもないのですが、
癖のない綺麗な低音で、良い意味で現代の歌手には中々いないタイプの声です。

 

 

 

テノール;JENS KROGSGAARD JENSEN

こちらも中々良いテノールです。
一本調子な歌唱ではありますが、声には癖がなくて高音も詰まった感じはしません。

 

ただ、残念なことに、どのような方が、どのような曲を歌っているかの説明が一切ないので、

 

 

そしてバリトンには

BO SKOVHUSがいます!

 

 

 

 

もう一人バスバリトン Jens Søndergaard

 

 

 

こうしてデンマークの歌手を聴いてみると、
まず力任せに声を張り上げる歌手がおらず、強烈なヴィブラートが掛かっている歌手もいない。
確かに圧倒的な声を持っている歌手は、いないかもしれませんが、
言葉の扱いも総じて丁寧で、本当に悪い癖のない歌手が多いことに驚きました。

こりゃ確かに良い歌手が育ちますよね!
若い時に変なクセをつけず、その人が持っている素直な声を伸ばしていくというのがとても大事なのだけど、それが一番難しい。

歌っている歌手のレパートリーを見ても、ドイツ語、イタリア語、英語など多様で、近現代の作品も随分取り上げてるような感じなので、デンマークは個々に合ったレパートリーを追求していって、それに合った歌唱を見に付けられる環境が整っているように思いました。

 

世界中で活躍する歌手を沢山排出することは勿論素晴らしいことですが、
こうやって、高い質の演奏家が国内で育つシステムは日本も参考にすべきだなと思いました。

その為には、リンドロスみたいな突き抜けた人が日本の声楽界に降臨して、言い方は悪いかもしれませんが、協力な派閥を形成することが重要なのかもしれません・・・。

 

 

 

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